アルツハイマー型認知症の血液検査が身近に 富士レビオやロシュが承認申請

アルツハイマー型認知症の血液検査が身近に 富士レビオやロシュが承認申請

アルツハイマー型認知症を診断する血液検査が、より身近なものになりそうです。国内で先行するシスメックスに続き、H.U.グループホールディングス傘下の富士レビオが2025年11月に承認申請を行いました。早ければ2026年内にも製造・販売の認可が下りる見通しです。スイスのロシュ系のロシュ・ダイアグノスティックスも承認を目指しており、血液検査による認知症診断の選択肢が広がりつつあります。

大型の撮影装置などを使う従来の検査に比べて簡易・安価に診断できるため、病気の早期発見や進行防止につながると期待されています。​

高齢化が進む日本で認知症は重大な課題となっています。厚生労働省の研究班は、性別や年齢別における患者の比率が今後も一定と仮定した場合、認知症患者は2050年に2022年比で約3割増の587万人まで増えると推計しています。認知症の一歩手前にあたる軽度認知障害(MCI)も同1割増の631万人と見込まれています。

認知症は脳が萎縮して徐々に認知機能が失われるアルツハイマー型が全体の約7割を占めています。血液検査では認知症の原因物質となる「アミロイドβ」や「タウ」というたんぱく質の量や比率から、脳へのアミロイドの蓄積度合いを判定します。そのうえで、患者に合った治療薬の投与方針などを決めることができます。

現在、認知症の検査として推奨されている手法は2つあります。一つが陽電子放射断層撮影装置(PET)です。専用の大型機械で脳の画像を撮影して判定しますが、検査用の薬剤が患者の脳に回るまで時間がかかるほか、検査費用が10万円以上かかるケースもあります。

もう一つが脳や脊髄の周りに満たされている脳脊髄液を使う方法です。局所麻酔を打ち、腰椎に針を刺して採取しますが、特定の疾患を持つ患者には使えなかったり、感染症のリスクが生じたりします。価格はPETよりも安いですが、保険適用外の場合は数万円かかることがあります。​

これら2つの検査に代わる手法として血液検査が注目されています。患者の身体的負担を抑えられるほか、料金も比較的安価です。富士レビオの研究開発センター長を務める青柳克己常務は「現時点でも他の検査手法と同等か、それ以上の精度を保てている」と話しています。

血液検査の普及で早期発見に期待

国内の血液検査薬では2023年に販売を始めたシスメックスが先行しています。現在は保険適用外ですが、数千円から2万円程度で受けられます。検査は腕からの採血で10分ほどで済み、早ければ数日で結果が分かります。富士レビオなどの製品も同等のものになる見込みです。

富士レビオは2025年5月に米食品医薬品局(FDA)から、米国では初めて認知症の血液による診断補助薬としての承認を得た実績があります。米国で承認された検査薬を基に、日本国内での実用化を進めています。

血液検査は現時点では診断の補助的な役割にとどまりますが、提供するメーカーが増え、精度や有用性が広く認められれば、将来的に確定的な診断にも使われるとの見方が多くあります。人間ドックや健康診断などでも利用しやすくなり、認知症を早期発見できれば、生活習慣の改善や運動療法を通じた対応も可能になります。

米調査会社グランドビューリサーチは、アルツハイマー型を対象とした血液検査薬の世界市場が2033年には2024年比で約3倍の4億2931万ドル(約680億円)に達すると見込んでいます。検査薬が徐々に医師の間で認められ、北米を中心に販売が伸びると予想されています。

日本ではエーザイが治療薬「レカネマブ(製品名レケンビ)」で世界に先行しています。血液検査薬についても、日本での普及の度合いが世界の市場に影響する可能性があります。

関連記事

コメントは利用できません。

最近のおすすめ記事

  1. ソニー、テレビ事業分離へ 中国TCLとの合弁で構造改革加速
    ソニーグループが、テレビを中心とするホームエンタテインメント事業を分離し、中国テレビ大手TCLグルー…
  2. 水深6000メートルからレアアース泥採取に成功、国産化への前進
    海洋研究開発機構の地球深部探査船「ちきゅう」が、南鳥島(東京都)沖の水深約6000メートルの深海底か…
  3. フジHD、東宝が筆頭株主に浮上 旧村上系の全株売却で局面転換
    フジ・メディア・ホールディングス(フジHD)は2月6日、映画大手の東宝が同社の筆頭株主となる見通しを…

おすすめ記事

  1. 第48回府中刑務所文化祭が2023年11月3日に開催された府中刑務所

    2023-12-9

    プリズンツアーが大人気!来場者1.5万人の府中刑務所文化祭とは?

    「府中刑務所文化祭」は年に一度(2023年は11月3日)、府中刑務所により開催される今回で48回目の…
  2. 「【論文紹介】 無痛分娩と オキシトシンの 使用による 児の自閉症リスク上昇 との関連」ライター:秋谷進(東京西徳洲会病院小児医療センター)

    2024-10-27

    【論文紹介】無痛分娩(分娩時の硬膜外麻酔による鎮痛)とオキシトシン(陣痛促進剤)の使用による児の自閉症リスク上昇との関連

    今回は、分娩時の硬膜外麻酔による無痛分娩で生まれた子どもが自閉症スペクトラム障害(ASD:Autis…
  3. 2025-9-10

    Apple新型『iPhone 17』、SIMスロット廃止で薄型化実現 ユーザー対応に課題

    Apple社が9月10日に発表した最新スマートフォン『iPhone 17』シリーズにおいて、日本市場…

2025年度矯正展まとめ

2024年に開催された全国矯正展の様子

【結果】コンテスト

【結果発表】ライティングコンテスト企画2025年9-10月(大阪・関西万博 第4回)

アーカイブ

ページ上部へ戻る