
東京都品川区の東急目黒線・武蔵小山駅近くの住宅街で、立ち退きに応じない住民に圧力をかける目的で放火が指示された疑いの事件で、不動産会社社員の内藤寛己容疑者(31)ら6人が逮捕されました。 警視庁捜査1課は、再開発が進む「地価高騰エリア」で進められていた土地買収、いわゆる「地上げ」を背景にした組織的な嫌がらせとみて詳しい動機の解明を進めています。
捜査関係者によりますと、逮捕されたのはアパート管理会社社員の内藤容疑者のほか、いずれも20〜30代の男ら計6人で、いずれも容疑をおおむね認めているということです。 現場は武蔵小山駅から北東約200メートルに位置する品川区小山の住宅密集地で、再開発計画に伴い複数の土地を一体開発する構想が数年前から持ち上がっていました。
警視庁によると、内藤容疑者は2025年10月31日午前5時10分ごろ、知人の男らと共謀し、立ち退き要請に応じていなかった60代男性宅の外壁にガソリンをかけて火をつけようとした現住建造物等放火未遂の疑いが持たれています。 同年11月18日午前1時すぎには、別の共犯者らと共謀し、男性宅に隣接する空き家アパート1階の一室にガソリンをまいて火をつけ、壁面などを焼損させた非現住建造物等放火の疑いも持たれています。 いずれの火災でも住民にけがはありませんでしたが、住宅密集地での放火として近隣住民に大きな不安を与えました。
捜査1課は、内藤容疑者が電話などで具体的な犯行方法を指示し、他の5人が実行役として動いたとみています。 現場周辺の防犯カメラには、犯行直後に実行役とみられる人物らが車で逃走する様子が映っており、こうした映像解析などから関与が浮上したとされています。 また、実行役の一部が「報酬を受け取った」と供述していることも明らかになっており、警視庁は内藤容疑者が所属する不動産会社の家宅捜索に踏み切り、事件への組織的な関与の有無を調べています。
周辺では、マンション建設計画などを背景に、土地をまとめて取得する動きが進む一方、一部の住民は長年暮らしてきた地域からの転居に難色を示し、売却を拒んでいました。 捜査当局は、こうした抵抗する住民らを退去させるための嫌がらせとして放火が利用された疑いが強いとみて、地上げ交渉の経緯や会社側の意思決定プロセスについても捜査を進めています。
再開発と地価高騰が生んだ「令和の地上げ」リスク
武蔵小山周辺は、目黒駅から2駅というアクセスの良さに加え、タワーマンション建設などの再開発と昔ながらの商店街が共存するエリアとして人気が高まり、地価が急上昇してきた地域です。 地元の不動産会社によると、周辺の坪単価はおおむね400万〜500万円程度で、この10年で約2倍にまで上昇したとされ、「都内でもトップクラスの単価」との声も聞かれます。 実際に近隣では坪単価660万円で取引された事例も報告されており、駅近の一等地として投資マネーが集まっていました。
こうした地価高騰の中で、再開発事業者や不動産会社が土地を効率的に集約しようとする一方、長年住み続けてきた住民との利害が鋭く対立しやすい構図があります。 今回の事件では、立ち退き交渉に応じない一軒家の男性に対して心理的圧力をかける狙いで、近隣の空き家アパートが標的にされたとみられ、住民からは「地上げ屋によって放火されたのではないか」といったうわさも出ていたと報じられています。
高度経済成長期の「地上げ」を想起させる今回の事件は、地価上昇と再開発が同時進行する都市部で、住民の生活と開発事業との調整がいかに脆弱になりうるかを浮き彫りにした形です。 専門家からは、用地取得の現場で違法・不当な圧力が生じないよう、行政による監視体制の強化や、住民と事業者の交渉過程を透明化する仕組みづくりを急ぐべきだとの指摘も出ています。 警視庁は、不動産会社側の関与の全容解明とともに、同様の手口がほかの再開発案件でも生じていないかについても慎重に検証を進める方針です。












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