
バイオ新興企業のオリヅルセラピューティクス(神奈川県藤沢市)が、iPS細胞からつくった膵島細胞シートを用いる1型糖尿病の治療で、日米を中心とした国際共同治験の準備を進めています。 同社は武田薬品工業や京都大学イノベーションキャピタル、三菱UFJ銀行などの出資を受けて2021年に設立され、武田薬品と京都大学の研究成果を引き継ぎ、iPS細胞を活用した医薬品開発を進めてきました。 2027年度にも日本と米国で治験を始め、糖尿病患者のインスリン投与回数を減らせるかなどを検証し、実用化を目指す方針です。
1型糖尿病は自己免疫反応によって膵臓のβ細胞が破壊され、体内でほとんどインスリンが作れなくなる病気で、多くの患者が1日数回のインスリン注射などに依存しています。 根治的な治療法として膵臓移植や膵島移植が保険診療として行われていますが、日本を含め世界的にドナー(臓器提供者)が不足しており、希望しても移植を受けられない患者が多いのが現状です。 日本国内の1型糖尿病患者は10万人規模とされ、世界では1000万人に迫るとされることから、新しい治療法へのニーズは高まっています。
オリヅル社が開発する「OZTx-410」は、健康なドナー由来のiPS細胞を分化させて得た膵島細胞(iPICs)をシート状にした製品で、腹部皮下に移植して長期的なインスリン分泌を狙うものです。 京都大学医学部附属病院は、重症1型糖尿病患者を対象にOZTx-410を使った医師主導治験を開始しており、1例目の手術ではインスリンを出す細胞のシートを患者の腹部に移植し、経過は良好と報告されています。 この治験では今後も症例を重ね、最大5年間の経過観察を行う計画で、安全性やインスリン投与量の変化などを評価します。
iPS膵島移植で世界が競争 国内外の動向と展望
海外では、米バーテックス・ファーマシューティカルズが幹細胞から分化させた膵島細胞を移植する治療法「VX-880(Zimislecel)」の治験を進めており、投与された患者の多くでインスリンが分泌され、インスリン注射が不要になった症例も報告されています。 こうした成果から、幹細胞由来膵島細胞移植は1型糖尿病治療の新たな柱になり得るとして注目されています。 一方で、移植後の長期的な安全性や、免疫抑制剤がどの程度必要になるかなど、解決すべき課題も残っています。
iPS細胞を用いる手法は、受精卵を用いる再生医療と比べて倫理的なハードルが低く、同じ性質の細胞を大量生産しやすいことから、ドナー不足の解消や安定供給につながる利点があります。 日本では、他疾患向けのiPS細胞由来製品が条件付きで承認されるなど環境整備が進んでおり、オリヅル社はこうした追い風を受けて、国内外で使える糖尿病治療薬としての承認取得を視野に入れています。 京都大学の治験で安全性と有効性のデータが蓄積されれば、1型糖尿病患者がインスリン注射から解放される未来像が現実味を帯びてくる可能性があり、再生医療と糖尿病治療の両面で議論が一段と活発になりそうです。

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