公取委、トラック「ただ働き」にメス 無償待機・荷役を独禁法違反に

公取委、トラック「ただ働き」にメス 無償待機・荷役を独禁法違反に

公正取引委員会は、運送事業者のトラック運転手が荷物の受け渡し時に無償で長時間待機させられたり、契約にない荷物の積み下ろし(荷役)を無償で行わされたりする慣行について、独占禁止法違反行為として明確に位置付ける方針です。

2026年6月にも独禁法に基づく「物流特殊指定」の告示を改正し、2027年春の施行を目指します。

対象となるのは、完成品メーカーなど荷物の受け手(着荷主)が、運送会社のドライバーに対し、事前の契約に含まれていない待機や荷役を事実上強制する行為で、違反が確認された場合には排除措置命令などの行政処分が科される可能性があります。

現在も、部品メーカーなどの荷主と運送事業者の取引については、独禁法や下請代金支払遅延等防止法(下請法)により、不当に無償で作業をさせることなどが規制されていますが、着荷主と運送会社の間には直接の契約関係がないケースが多く、規制の「空白」が指摘されてきました。

実際には、運送会社が時間通りに到着しても、荷受けスペースが空かないなどの理由で長時間の「荷待ち」を強いられたり、荷主との契約にない荷役作業まで担わされたりする例が横行しており、その時間に対する対価が支払われないことがトラックドライバーの長時間労働や処遇悪化の一因とされています。

公取委はこうした構造的な問題を踏まえ、着荷主が運送事業者に対し無償で荷待ちや荷役をさせる行為を「発荷主(荷主)の利益を不当に害する行為」として物流特殊指定に追加し、荷主と運送会社の契約にない業務を着荷主が実質的に要請した場合には、その費用を荷主から運送会社に支払わせる方向で制度設計を進めています。

2025年には、総合物流大手センコーが下請けの運送業者に対して無償で荷役や長時間待機をさせていたとして、公取委が下請法違反で初の勧告を行う方針を固めたことも明らかになっており、無償荷役・荷待ちへの監視強化が続いています。

政府や公取委は、2024年から続く「2024年問題」に伴うドライバー不足や労働時間規制の強化を背景に、物流現場の不公正な取引慣行の是正を急いでおり、今回の見直しもその一環と位置付けられています。

60日超の代金支払い禁止も 中小の資金繰り改善へ

公取委は、物流分野に限らず製造・設計・運送などの業務委託全般を対象に、成果物の受領日から60日を超える支払いサイトを設けることを禁止する新たな独禁法上の指針づくりも進めています。

2026年1月に施行された中小受託取引適正化法(取引適正化法)は、大企業から中小企業への委託取引について、支払いサイトの上限を受領日から60日以内とするなどのルールを設けましたが、公取委は今後、企業規模を問わずサプライチェーン全体で60日超の支払いを原則認めない方向で運用を強化します。

公取委などが2025年に実施した調査では、成果物の受け取りから支払いまでの期間が60日を超えるケースは完成品メーカーで約8%にとどまる一方、一次下請では約14%、二次下請では15%超にのぼるなど、川下にいくほど負担が重くなる構図が浮き彫りになっています。

支払いサイトの短縮や現金決済の拡大は、中小・小規模事業者の資金繰りの改善につながると期待されており、政府は事業者団体向けのガイドラインを通じて、取適法の対象外取引も含めた支払い条件の是正を呼びかけています。

公取委は、今回の物流特殊指定の改正と支払いサイト是正の取り組みを組み合わせることで、荷主や着荷主の「優越的地位」を背景とした不公正な取引慣行の是正を進める考えです。

運送業界からは、無償荷待ちや無償荷役に明確な歯止めがかかることへの期待が高まる一方で、着荷主側には荷受け体制の見直しやコスト負担の増加にどう対応するかが問われる局面となっています。

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