独働記#3 AIに仕事を奪われる? フリーランスライターの“今そこにある危機”

PCに向かって泣いてしまう赤ちゃん

「独働記(どくどうき)」は、就職せずフリーランスとして働きはじめ、十数年を経た筆者が、“ひとりで働くこと”の光と影を見つめなおす、連載コラムです。

SNSには映らないリアル、自由の代償、不安と向き合う日々──すいもあまいも噛みしめてきた体験をもとに、現代の「働き方」の本質に迫ります。

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2022年末に登場したChatGPTは、世界のあらゆる業界に大きな変革を生んだ。執筆を生業にする私のもとにも「AIに仕事を奪われるのでは?」「仕事の量、変わっていませんか?」「これから何を武器にするべきなのかわかりません」といった質問が幾度も寄せられた。

フリーランスとして十数年活動してきた今、私にも決して軽視できない厳しい現実が迫ってきた。案件単価の下落、AI生成による大量のコンテンツの生産と消費、そして「人に頼む必要があるのか?」という根本的な疑問──。

これは遠い未来の話ではなく、すでに私たちの足元を揺らしている、「今そこにある危機」なのだ。

<目次>

AIの進化と、始まった静かな淘汰

当初はあべこべで人間味のなかったAIの文章は、アップデートと各社のAI競争のさなかにどんどんと質を向上させてきた。特にWeb上の顔の見えない記事やSEOライティングなどの構造化しやすい文章は、我々人間の独占領域ではなくなった。ある程度の条件付けと適切な情報を与えれば、AIがすぐさま形にしてくる。

ライターの仕事において、人間が介在できる仕事は減るか限定的になりつつある。AIが書いた記事を人間が“一応の”校正チェックをする。そうなのだ、文章表現についてはほぼ申し分ないところまできているのだ。

AIは人間よりも速く、安く、質もまぁまぁ良く、文句を言わない。私にもある程度ルーティン・パターン化された仕事があったが、やはりAIに取って代わられていった。業務が限定的になり単価が下がるだけならまだしも、いきなり丸々取り上げられてしまったケースもある。

過渡期ではあるが淘汰は始まっている。

「中新さん、私はこれからどうしたら?」の相談に、私も一緒に頭を抱える日が増えている。

「書くだけ」では生き残れない時代へ

進化を続けるAIだが、それでもまだ代替されない業務もある。「対面でのインタビュー」や「遠方に赴いての撮影」、本記事のように「顔出しや実体験ありきの記事の執筆」などがそうだ。人間と人間のコミュニケーションがなければ生み出せないもの、自分の目と足でなければ得られない一次情報の獲得、誰が伝えるのかという意味付けである。

AIがいくら凄かろうとAIには人格や自己意識がない(少なくとも今は)。人間の指示がなければ動作しない道具でしかない。自分にしかできない仕事をどうつくるか。感情、経験、視点。特に“苦しんだこと”は大きな価値を持つのではないか。人の心を真に打つのは、人の心であると私はまだ信じている。

これからの時代、ライターは自身の職能を再定義やスキルの複線化を志すと良いかもしれない。「書く」力、「伝える」力というのは、何事においても根幹を成している。書くだけではなく、編集やディレクター、広報などの役割を果たし、届けるべき情報の適切な舵取りや戦略の立案などをするのも良いだろう。

私のように、もがきながらも生きている様を誰かに届け、「私はこうなるまい」とささやかな糧としてもらうのも手だろう。

怖さを直視し、武器を手にする

フリーランス歴が十年を超える私には、私以上に経験も実績も豊富なフリーランスが大勢いる。しかし、彼らの多くもAIの影響からは無縁ではなく、仕事を減らす人や立ち回りを大きく変える人もいる。

ただ、AIを敵視する人は少ない。多くがAIなどの技術の進歩は止めようがないとわかっている。あくまでも道具であり、それがどのような力を発揮するかはまだ人間の手に委ねられていると知っている。もちろん、苦々しく思っている人もいる。だが、悩んだ分だけその人がより良いものを生み出していることも、私はちゃんと見ている。

かくいう私も、そのうちのひとりだ。焦り、戸惑い、自己否定に近い感情すら抱いた。だが、試行錯誤の末に気づいたのは、AIが何を奪うかではなく、自分が何を活かせるかを問い直すことの大切さだということ。

その熱意がある限り、我々人間はAIの怖さも、そして素晴らしさも直視することができる。いたずらに恐怖するのではなく、その先に自らの内面とも向き合い、乗りこなせるようになることの方がはるかに前向きだ。

自分の強みや独自性は何なのか、これから他にできることはないのか。そのためのブレーンストーミングをAIとやってみるのも良いだろう。AI相手なら恥じらう必要も遠慮する必要もない、いくらでも正直な考えと意見をぶちまけ、使い倒してやればいい。

“AI前提社会”の仕事人生存戦略

いまやAIの進化は、「使う/使わない」の選択肢ではなくなってきた。むしろ、「AIの活用を前提とした業務」が急増している。クライアントから「AIでたたき台をつくってあります」と渡される案件、逆に「AI活用を前提とした納品スピード」を求められる案件も、確実に増えてきた。

つまり、“AIが使える”かどうかではなく、“AIを前提とした働き方ができる”かが問われ始めているのだ。実際、記事構成や要約、インタビューの文字起こし、アイデア出しなど、人間の負担を減らしながら質を高める活用例も多い。

AIを拒み続けるよりも、まず触れてみること。使い倒すくらいの感覚で、ツールを“自分の思考の延長”として取り込めるかどうかが、これからのライター……、いや、すべての仕事人の生存戦略となる。

AI活用が前提となる業務が広がり、社会の仕組みや価値観そのものが書き換えられつつある今、求められているのは“人間にしかできない”領域の明確化と、そこに踏み込む覚悟だ。

中新大地コピーライター

投稿者プロフィール

2014年より広報やブランディングに携わる。
新卒フリーランスという特異な経歴から、講演やメディア掲載経験も多数。
「選ぶ」の裏にある「選ばない」選択肢を増やすべく、多様な生き方と働き方を発信する。

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