子育て中のみなさん、気づかないうちに「過保護」や「過干渉」になっていませんか?
わが子のためと信じてやっていることが、場合によっては「過保護」「過干渉」となり、お子さんに悪影響を及ぼすことがあります。
そこで今回は、「過保護」や「過干渉」が子育てに及ぼす影響について、また、「過保護」や「過干渉」にならないようにするにはどうしたらよいのかについて解説します。
ぜひ参考にして、ご自身の子育てを振り返ってみてください。
「過保護」と「過干渉」とは何か
文部科学省では、約7割の親が家庭の教育力が低下していると実感していると報告されています。
その理由の1位とされる「過保護」と「過干渉」とはどのような状態でしょうか。
また、この2つはどう違うのでしょうか。
順位 | 理由 | 割合 |
1 | 子どもに対して、 過保護や甘やかせすぎ、 過干渉な親の増加 | 66.7% |
2 | テレビや映画、雑誌などが 子どもに及ぼしている 悪い影響 | 50.5% |
3 | 子どもに対するしつけや 教育の仕方がわからない 親の増加 | 47.1% |
4 | 子どもに対するしつけや 教育に無関心な親の増加 | 44.4% |
5 | 学校や塾など 外部の教育機関に対する しつけや教育の依存 | 44.2% |
6 | 父親の存在感の低下 | 35.8% |
7 | 子どもに対する しつけや教育に 自信を持てない親の増加 | 34.8% |
「過保護」とは
過保護とは、子どもかわいさのあまり、要望をなんでも叶えてしまったり、嫌がることをかわりにやってしまったりすることを指します。
子どもを「甘えさせる」のは、本来決して悪いことではありません。
抱っこをせがむ幼い子どもを受け入れてやったり、泣いている子どもを抱きとめて、なでてやったりすることは、子どもの心を安心感で満たし、将来の自立を促すために大切なことです。
しかし、例えば、何かを欲しがったときに何でもすぐ買い与えたり、嫌がる宿題を代わりにやってやったりすることなどは「過保護」です。
このようなことを続けていると、子どもが自分の力で困難に立ち向かう力を育むことができません。
何歳になっても自立できない、精神的にひ弱でわがままな子どもになってしまう恐れがあります。
「過干渉」とは
過干渉とは、親の考えを一方的に押しつけて子どもの自己決定能力を奪い、コントロールしようとすることを指します。
例えば、子どもが望んでいないのに、勉強や遊びのスケジュールを管理して自由な時間を制限したり、友達との交流や進路の選択を自由にさせなかったりすることなどが挙げられます。
自分で適切な判断ができない幼い子どもに対しては、やろうとしていることを親が止めたり、注意したりすることは必要です。
しかし、成長とともに子どもが自分で判断できるようになったことにまで、親が介入するのは「過干渉」です。
後述しますが、過干渉の弊害は過保護以上に深刻ですので、十分な注意が必要です。
親が「過保護」「過干渉」になる原因
過保護になる原因
親が過保護になる原因の一つとして、親自身が過保護に育てられていることが挙げられます。
自分にとってはそれが「普通」になっているため、気づきにくいことが多いようです。
また、夫婦関係のストレスなどのために、親自身に不安や不満が蓄積し、子どもの世話を焼くことで自分の存在意義を見出そうとするケースもあります。
過干渉になる原因
親が過干渉になる原因は、子どもの将来に対する過度な期待や不安、親の高すぎる自尊心、世間的な評価を気にしすぎていることなどが挙げられます。
また、子どもが成長するにつれて自立心や自己決定能力を発揮することにより、親としての存在感が薄れることに不安を感じて過干渉になる親もいます。
いずれも、子どもを「自分の一部」ととらえ、思い通りにコントロールすることで、親自身が安心や満足を得ようとしている状態だと言えます。
「過保護」「過干渉」が子どもに及ぼす影響
親が「過保護」だと子どもはどうなる?
過保護に育てられた子どもは、自己中心的で忍耐力がなく、大変なこと、面倒なことは人にやってもらうのが当たり前になってしまいます。
そのため、学校生活や社会生活に適応できず、周囲との関係がうまく結べずに苦労することになりがちです。
また、物事を自分でやり遂げた経験に乏しいため、自分に自信が持てなくなる子どももいます。
親が「過干渉」だと子どもはどうなる?
過干渉な親は子どもの自己決定権を奪うため、子どもは自己肯定感を持てなくなります。
常に自分の意見や感情を否定されて親にコントロールされることで、他人の顔色ばかりうかがうようになり、自分が何をしたいのかさえ分からなくなってしまうこともあります。
このような状態が長期化すると、子どもは無気力になり、ひきこもりのような社会不適応や、うつなどにつながることもあり、大変問題です。
「過保護」「過干渉」に陥らないようにするためには
お伝えしてきたように、過保護・過干渉な親が子どもに与える影響は深刻です。
このような状況に陥らないためにはどうすればよいでしょうか?
自分の行動パターンを客観視する
まずは親としての自分の行動パターンを見直してみましょう。
可能であれば夫婦で話し合ったり、信頼できる友人の意見を求めたりすることも、自己を客観視するのに役立ちます。
過保護・過干渉な行動に気づいたら、自分が子どもにどのような影響を与えているかを考え、意識して行動を改めます。
子どもが自分で考え、判断し、行動することを尊重して見守るよう心がけ、過度な先回りや手出し口出しをしないよう注意しましょう。
自分の人生を充実させる
親の心が満たされていないと、子どもの世話をすることで、それを埋めようとして過度な介入をしてしまいがちです。
親自身が趣味や仕事、社会活動などを楽しんで、自分の人生を充実させていることが、子どもをよりよく育てる上で大切な条件の一つだと心得ましょう。
子育てに完璧を求めない
過保護・過干渉な親の多くは、子育てにおいて完璧なパフォーマンスを発揮しなければならないというプレッシャーを感じています。
しかし、大切なのは、子どもが安心感を抱き、自信を持って成長できる環境をつくることであり、親が完璧であることではありません。
過保護や過干渉の傾向を知ってより良い子育てを
過保護や過干渉が子育てに及ぼす影響と、対処法についてお伝えしました。
今回の記事を参考にして、親としてのご自身のありがたをぜひ振り返ってみてください。
過保護や過干渉の弊害を知り、自分にその傾向があると気づくことができれば、お子さんとの接し方は確実に変わるはずです。
参考文献:
1.文部科学省.中央教育審議会 生涯学習分科会(第37回). 「家庭・地域の教育力の向上に関する特別委員会」審議状況について
2.牧野カツコ.日本の子育て支援と課題 牧野カツコ・渡辺秀樹・舩橋惠子・中野洋恵(編)国際比較にみる世界の家族と子育て.ミネルヴァ書房,東京,182-194.2010
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4.中尾達馬:質問紙法.北川恵,工藤晋平編著,アタッチメントに基づく評価と支援 , 誠信書房,東京,117-134,2017
5.金政祐司:青年・成人期の愛着スタイルの世代間伝達―愛着は繰り返されるのか―.心理学研究,78,398-406,2007