独働記#2 まだまだ足りぬフリーランスの協働、ひとり孤独に働くことのメンタルコスト

砂浜に座るデザイナー

「独働記(どくどうき)」は、就職せずフリーランスとして働きはじめ、十数年を経た筆者が、“ひとりで働くこと”の光と影を見つめなおす、連載コラムです。

SNSには映らないリアル、自由の代償、不安と向き合う日々──すいもあまいも噛みしめてきた体験をもとに、現代の「働き方」の本質に迫ります。

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自分の決めた仕事を、自分の好きな時間に、好きな場所で行うフリーランス。会社員と比べると、働き方のスタイルは柔軟にカスタマイズ可能であり、「ひとりで働くこと」の魅力は大きいと感じる人は多い。

しかし、ひとりで働く故の孤独や不安があるのも事実。フリーランス歴十数年の私も、駆け出しの頃はフリーランスの魅力に取りつかれつつも、やがて鬱屈とした気分に蝕まれた経験がある。

ひとりで働くことは、本当に我々にとって人生を豊かにしてくれるのだろうか。フリーランスの働き方とメンタルコストを最適化する手立てはないのだろうか。

<目次>

「ひとりで働く自由」が生む静かな不安

私たちの「働く」は、多くの先人が積み上げてきた知恵と経験によって支えられてきた。その強固な地盤は会社であればなおさらで、組織のなかで業務を円滑に進行させる術も、そのスキル・キャリアアップの道筋も、先を走るロールモデルの存在が、会社員の一挙手一投足の答えらしいものを見せてくれている。

一方でフリーランスは、自分のでいうOJTが存在しないばかりか、スキルアップしようがしまいが、収入が増えようが減ろうが「自己責任」だからだ。フリーランスになろうと思った動機やバックボーンもさまざまで、訳アリな人も少なくない。故に誰かにそこで生まれる悩みを共有したくても難しい実情がある。

個人のパフォーマンスが会社という集団に還元される会社員は、新人のたどたどしい仕事ぶりやミスも、周囲が尻拭いをしてくれるが、フリーランスは違う。思うように仕事が獲得できない、稼げない。

挙句の果てには、会社員やアルバイトとして働くよりも悪い条件で、時間も精神もすり減らしながら働かざるを得なくなる。しかも、その出口は見えない。そしてひとり、鬱屈した仄暗い世界に沈んでいく……。かつての私だ。

瞬間風速的に高い売り上げが出たとしても安定感がない。誰かから手法を学んだでもなく、肌感覚でこなしてしまっているため再現性がない。フリーランスとして自由に働き、輝いているように思える自分と、社会人としてあまりに稚拙な自分との間を、激しく乱高下するうちに吐くような思いをした。まさにジェットコースターだ。誰かに、誰かに助けてほしかった。

仕組みは生まれるも、いまだ「個の負担」大きく

一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会が実施した「フリーランス白書 2019」によれば、「フリーランスや副業をするといった新しい働き方を日本で選択しやすくするためには、何が必要だと思いますか?」の問いに対し、869名中46.5%の人が「フリーランス同士のネットワーキング・協働ができる仕組み」と回答した。これは45.9%の人が回答した「労災保険」をわずかに上回る(*1)。

※最多は63.6%の「出産・育児・介護などの セーフティネット(休暇や所得補填)」だった

この協働に関する数字は、「フリーランス白書2025」にて18.1%の人が改善傾向にあると回答している。しかし、2024年のフリーランス新法施行による影響を受けたであろう、「企業に対する、契約時の取引条件明示の義務付け」「企業おける、フリーランスに対する偏見や誤解の是正」(ともに29.1%)に比べると、まだひとり苦闘しているフリーランスが少なからず存在することがうかがえる(*2)。

フリーランスは、自分のキャリアを自由に描くことのできる真っ白なキャンバスを持っている。しかし、真っ白であるが故に何から手を付ければいいのかわからない。道具の使い方さえおぼつかないが、まずは簡単にデッサンから入りたい。しかし、そのためのモデルやほかの人が描いた絵を見てみたいとも考える。

皆、ひとりではわからないことや不安だらけなのだ。自分のより良い人生のために仕事や想いを同じくする存在を、知らず知らずのうちに求めている。

私の周囲にいる結果を出しているフリーランスには、本当の意味でひとり孤独に仕事をしている人はいない。皆、クライアント以外に何らかのつながりを持っている。同じフリーランスあるいは同じ職種のなかで業界の最新情報を共有したり、一緒にチームで仕事をしたり、時には仕事を離れてプライベートを一緒に楽しむ人もいる。

会社員同様にフリーランスも、充実した人間関係やメンタルの適切な管理の先に、持続的なキャリアがあるように思える。

孤独とうまく付き合うために、フリーランスのコミュニティ参加とその効能

近年、社会人向けコミュニティが急増している。フリーランスも例外ではなく、SNSの出会いをきっかけとした個人の自主的なものから、仕事を斡旋するクラウドソーシングサービスが母体となったもの、自治体が主導する起業イベントや講座に端を発するものなど、その形はさまざまだ。

そこでは前項で述べたような学びや交流が行われており、コミュニティでの活動をきっかけにキャリアのブレイクスルーを果たすフリーランスもいる。フリーランスの集まりを熾烈な争いの場とみる人もいるかもしれないが、和気あいあいとした相互扶助の関係にあるフリーランスも実はかなり多く存在する。

無論、コミュニティの色はさまざまなので、合う合わないはあるし、集まる人たちのレベル感にもムラはある。しかし、そこはフリーランスの良い所。自由に入ってもいいし、抜けたってかまわないのだ。

コミュニティに求めるものもそれぞれだ。悩みを共有することでメンタルを安定させる人もいれば、コミュニティ内で仕事を積極的にこなし収入を得ることでメンタルを保つ人もいる。後進のフリーランスや副業的に働きたい人に対して、自身の経験やノウハウを語ることで充実感と自身のキャリアとノウハウを整理・体系化し、より高みを目指す人もいる。

孤独を受け入れ、整える術を知る

会社員もそうだが、フリーランスのいちばんの資本は心身の健康だ。自分の代わりや収入の保障がない以上、常にハイパフォーマンスを発揮できる状態に自分を保つ必要がある。

フリーランスに対して、組織やクライアントワークに依存しない孤高の存在としての憧れを抱く人は少なくない。事実、十年選手となった私に対しても、そうした憧れから教えを求めてくれる人は今でもいる。だが、その実情はすでに述べた通りだ。

孤独に働いていた頃の私は、メンタルも仕事のパフォーマンスも、明らかにすぐれてはいなかった。オンラインのコミュニティや地元での交流イベントに参加してから、内側に秘めていた鬱屈とした気持ちを解消することができたし、フリーランスとしての自身の立ち位置やスキルレベルを客観視することもできた。冒頭の自己責任の呪縛による孤独から完全に解き放たれはしないが、その向き合い方を整えることはできるようになってきた。

もっとも、コミュニティに入ることだけが、メンタルヘルスをマネジメントする手段ではない。やはり、きちんとした食事と睡眠、適切な運動も必要不可欠だろう。

厚生労働省が運営するポータルサイト「こころの耳」では、フリーランスに向けたメンタルヘルスケアに役立つ情報発信を行っている。長く充実したキャリアのためにも、ぜひご参考いただきたい。

厚生労働省『こころの耳 フリーランスの方のメンタルヘルスケア』https://kokoro.mhlw.go.jp/freelance/?utm_source=chatgpt.com

【出典・参考】

(*1)一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会『フリーランス白書 2019』https://blog.freelance-jp.org/wp-content/uploads/2019/03/freelancehakusho2019_suvey20190306.pdf

(*2)一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会『フリーランス白書 2025』https://blog.freelance-jp.org/wp-content/uploads/2025/04/FreelanceSurvey2025.pdf

中新大地コピーライター

投稿者プロフィール

2014年より広報やブランディングに携わる。
新卒フリーランスという特異な経歴から、講演やメディア掲載経験も多数。
「選ぶ」の裏にある「選ばない」選択肢を増やすべく、多様な生き方と働き方を発信する。

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