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- なぜ悲劇は繰り返されるのか。後を絶たないストーカー事件の残虐な実態をリーゼント刑事が語る

おはようさん。リーゼント刑事こと秋山です。
年が明けても、凄惨な事件のニュースが連日報道されています。事件の被害に遭われた方々、そしてそのご家族の心中を察するに余りあるものがあります。こんなにも、人の心の闇が、誰かの日常を、人生を、無残に引き裂いてしまうのかと、憤りを感じずにいられません。
「ストーカー」。この言葉を聴いて、皆さんはどのようなイメージを抱くでしょうか?
遠いどこかで起きている他人事…。あるいは、まるでドラマや映画の話のように、どこか非現実的なものだと感じているかもしれません。
しかし現実は、そんな生易しいものではありません。あなたのすぐ隣で、あなたの知っている誰かが、あるいはあなた自身が、いつ被害に遭ってもおかしくない、極めて身近で、そして深刻な犯罪なのです。
<目次>
「桶川ストーカー殺人事件」の凄惨な教訓

2000年に「ストーカー規制法」は成立しました。ストーカー規制法とは、身体等に対する危害の発生を防止し、国民の生活の安全と平穏を守ることを目的とした法律です。この法律では「つきまとい等」を始めとする8つの行為をあなたや、あなたの身近な人(配偶者・親族など)に対して繰り返し行うことを「ストーカー行為」として定めています。
ストーカー行為をした者は、1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金が科されます。また、警察からの禁止命令等に違反してつきまとい等をした者は、2年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金が科されます。
- つきまとい、待ち伏せ、押しかけ、うろつき
- 監視していると告げる
- 面会・交際などの要求
- 乱暴な言動
- 無言電話、連続した電話・ファクシミリ・電子メール・SNSメッセージ等
- 汚物などの送付
- 名誉を傷つける
- 最適差恥心の侵害
(参考著書:政府広報オンライン)
この規制法が出来るきっかけとなったのが、1999年10月26日に発生した「桶川ストーカー殺人事件」です。埼玉県桶川市のJR桶川駅前で、大学2年生の猪野詩織さん(当時21歳)が刃物で刺殺された事件です。
事件は、交際を断ったことで、つきまといや脅迫が始まったのがきっかけでした。元交際相手らが自宅に乗り込んできたり、詩織さんを中傷するビラを、自宅周辺や詩織さんが通う学校などに数百枚まかれ、さらには自宅に脅迫電話、飼い犬に毒入りの餌が与えられたりしていました。
詩織さんや家族はストーカー被害について繰り返し警察に相談していたにもかかわらず、被害相談を極めてずさんに扱っていたことが明らかになり、警察の不祥事としても注目され、警察から3人の懲戒免職者を含む15人の処分者を出しました。この事件の終末は、公にはされていませんが、懲戒免職された部下が上司の自宅を放火し、その部下はのちに刑務所で自殺しています。
この桶川ストーカー殺人事件が教訓にならず、その後においても同じようなストーカー殺人事件は多数発生しております。
2025年5月には、神奈川県川崎市において、「川崎ストーカー殺人事件」が発生しました。こちらも、元交際相手である白井秀征(当時28歳)からの暴力などについて警察に何度も相談していた岡崎彩咲陽(あさひ)さん(当時20歳)が、白井容疑者の自宅の床下収納スペースから、ボストンバックに入った状態で遺体が見つかった事件です。
遺体は白骨化し、顔が焼けた痕跡があり、損傷が激しい状態でした。捜査関係者によると、燃やされた痕跡も確認されています。5月3日に死体遺棄罪で逮捕され、その後ストーカー規制法違反と殺人の罪で再逮捕・起訴されました。
被害届は「絶対」ではない。ストーカー殺人を未然に防ぐ決断

私が現役時代の経験談もお話ししたいと思います。
私が徳島県警察本部捜査第一課補佐(重要事件担当現場指揮官)の時です。某警察署管内において、女性被害の殺人事件が発生しました。警察無線を受信して、直ちに現場へ急行しました。
事件現場は、アパートの玄関内で、血まみれの女性が殺害されていました。解剖の結果、身体の主要部である首部、胸部、腹部に10数箇所の刺創(刺し傷)があり失血死でした。犯人を逮捕して捜査した結果、その男と被害女性は、約1年間の不倫関係であり、男からの暴力で別れ話になり、事件が発生したものです。
被害女性は、最寄りの警察署にその男の暴力被害を相談していましたが、家族に知られたくないことから、被害届は提出していませんでした。しかし、尊い命を奪われてしまい、結局は被害者女性を守ることが出来ませんでした。いくら犯人を逮捕しても、被害女性は帰らぬ人となりました。
私はこの事件を機に、被害届の提出の有無に関係なく、事件を認知したときは、被害者の生命・身体の安全を最優先に保護措置を行ってきました。
その後、某警察署刑事課長のとき、女性が来署して、「元交際相手に車のフロントガラスとバックミラーが壊された!」という相談を受けました。その女性から詳しく話を聴いてみると、別れ話のもつれから何度も暴力も振るわれていました。しかし、世間体を気にして被害届をその女性も出しませんでした。
この時、私は、被害者が提出する被害届ではなく、私が被害者から聴取した被害内容の捜査報告書という書類をもとに捜査し、逮捕に至りました。逮捕後、男は「もし逮捕されていなかったら、ひょっとしたらあの女性を殺害していたかも知れない」と供述しました。
このコラムを読んでいる中に警察官の方がいたら伝えたい。
もしもストーカー被害で相談に来られた方が被害届を出さなくても、聴取した被害内容を確認、そして分析し、捜査・対応してもらいたい。警告・禁止命令・逮捕が出来るのは警察官だけです。迅速な対応が被害拡大や殺害を未然に防げるから。よろしくお願いします。
繰り返される悲劇。水戸・妊婦殺害事件から学ぶべきこと

残念なことについ最近もストーカー事件が起きました。2025年12月31日、大晦日に茨城県水戸市において、妊娠中のネイリストの小松本遥さん(31歳)が自宅マンションで首を刃物で刺され、頭部を鈍器で殴られ殺害されました。
年明けの2026年1月21日、発生から3週間後に元交際相手の大内拓実容疑者(28歳)が殺人容疑で逮捕されました。大内容疑者は小松本さんに対して、執拗なストーカー行為を働いていたとみられています。この事件は「ABEMA的ニュースショー」でも詳しく事件解説させてもらいました。
この事件の鍵となったのは「ぬいぐるみ」。事件の数日前、小松本さんの実家に置き配達のようにぬいぐるみが届いており、そのぬいぐるみに位置情報がわかる「発信機」が仕込まれていました。
このぬいぐるみが実家から小松本さんの手に渡ったことで、小松本さんのアパートを把握した可能性が高いとみられております。今回の事件は1人ではなく、2人の命を奪っています。お腹に子供がいた小松本さんが殺害された時のことを想像すると、胸が張り裂けそうです。
このように、ストーカー事件の多くは恋愛のもつれ。愛情が無視によって憎しみに変わり、さらに殺意へ発展するパターンが多く、それがエスカレートし殺害へ。そのせいで、ストーカーに遭われた被害者は誰にも相談も出来ず、一人で悩まれている方も多いのです。不安を感じたら迷わず警察や関係機関に是非相談してください。
(※警察相談専用窓口 #9110)緊急性がある場合は緊急ダイヤル「110番」へ。
改めて、後を絶たないストーカー事件の悲劇の大きさ、そして、その事件が被害者とそのご家族、そして遺された方々にどれほどの深い傷を残すかを、痛感しました。
事件によってかけがえのない命を失われた方々のご冥福、心よりお祈り申し上げます。そして今もなお、深い悲しみの中で日々を過ごされているご遺族の皆様のお気持ちを思うと、切ない胸の痛みを感じずにはいられません。
皆様が抱える、計り知れないか苦しみと悲しみに、ただ寄添うことしか出来ませんが、どうかこの悲しみを抱えながらも、少しでも穏やかな日々を取り戻せるよう、心から願っております。
また、過去の事件における警察の捜査のずさんさ、それによって被害が拡大してしまった、あるいは、より深い悲劇につながってしまったという事実に対して、私は強い憤りと、そして深い失望を感じております。
この場をお借りして、元警察官として、被害に遭われた皆様、そしてご遺族の皆様に、心からお詫び申し上げます。ストーカー被害の根絶に向けて、私に出来る事を微力ながらに続けていきたいと思います。皆様の安全と安心が、一日も早く守られる社会になることを、切に願って。




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