
ソニーグループは、人工知能(AI)が作曲した音楽データを分析し、学習や生成の過程で利用された既存楽曲を特定する技術を開発しました。AIが出力した1曲ごとに、どのアーティストの楽曲がどの程度影響しているかを数値として示せるのが特徴で、「ビートルズの曲が3割、クイーンの曲が1割といった具合に貢献度を算出できる」としています。これにより、これまでブラックボックスとされてきた「生成AIがどの作品をどれだけ学習しているのか」という点を可視化し、著作権者側が無断利用の有無や程度を検証しやすくなるとされています。
音楽業界では、AI企業が大規模な学習のために既存楽曲を無断で利用しているのではないかとの懸念が高まっており、2024年にはソニーミュージックやユニバーサルミュージックなど大手レコード会社が、米SunoやUdioを相手取り音楽生成AIの訓練データとしての無断使用を訴える訴訟を起こしています。またソニーミュージックグループは2025年、「AI学習の拒否宣言」を発表し、自社管理コンテンツの無断学習利用に強く異議を唱えていました。こうした状況のなかで、ソニーグループが学習データ特定技術を打ち出したことは、AI時代の権利処理や収益配分の新たなインフラとして注目されています。
ソニーはこれまでも、研究機関ソニーコンピュータサイエンス研究所による「Flow Machines」など、AIを活用した作曲支援技術を手がけてきました。今回はクリエイターを守るための「防御側」の技術という性格が強く、同社はAI技術の利活用と著作権保護の両立を掲げています。今後は音楽配信プラットフォームやレコード会社との連携を通じて、生成AI楽曲の由来を表示したり、権利者への対価分配を自動化する仕組みへの応用も想定されています。
クリエイター保護とAI活用の両立へ、広がる波紋
ソニーグループの新技術は、AI時代の音楽ビジネスのルール作りに影響を与える可能性があります。学習元の楽曲や貢献度を特定できれば、レコード会社や音楽出版社はAI企業と包括ライセンス契約を結びやすくなり、生成AIサービス側も「どの楽曲カタログをどの程度利用したか」を前提にビジネスモデルを設計できます。一方で、どこまでの類似や影響を「利用」とみなすかという線引きは依然として難しく、技術的な検出結果を法的な著作権侵害認定とどう結びつけるかが課題として残ります。
日本国内では、AI生成音楽に著作権を認めるためには人間の創作的関与が必要だとされており、プロンプトの工夫や編集作業の度合いが判断材料になると専門家は指摘しています。他方で、大量の既存楽曲を学習させる段階の権利処理や、既存曲との類似性が高い生成物の扱いについては、実務上のガイドラインが固まり切っていません。そのなかで、ソニーグループの技術は、AI開発企業に対し「どの作品をどのように学習に使ったか」を開示・説明することを迫る交渉材料となり、クリエイター側が対価や利用条件を話し合う出発点を提供するものとみられています。
音楽とAIをめぐっては、今後も国際的な規制議論や訴訟が続くと見込まれており、日本でも業界団体や政府によるルール作りが求められます。ソニーグループの取り組みは、AIを「創造の味方」にしながら、著作者の権利をどう守るのかという、音楽ビジネス全体の試金石となりそうです。










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