Googleの検索帝国、生成AI台頭で岐路に立つ 直近22年間で初めて月間検索件数が減少

検索エンジンで長年世界のネット空間を牽引してきた米Googleが、歴史的な転換点を迎えています。生成AIの急速な台頭により、同社の基幹ビジネスが脅かされる事態が現実味を帯びてきました。

5月7日、米Appleの副社長が独占禁止訴訟の審理中に「iPhoneでGoogle以外のAI検索も追加する」と発言。さらに4月にはGoogle検索を搭載したブラウザ「サファリ」で、直近22年間で初めて月間検索件数が減少したことも明かしました。

この発言を受け、親会社アルファベットの株価は1日で約10%も下落しています。調査会社スタットカウンターによれば、Google検索の世界シェアは4月時点で89.7%と、直近ピークの93.1%から徐々に低下しています。

市場調査会社ガートナーは2026年には検索の25%がAIに置き換わると予測しており、この流れは加速すると見られています。

Googleも「Gemini」という対話型AIを開発していますが、ChatGPTを開発したOpenAIと比較すると開発速度や導入実績で遅れを取っているのが現状です。

Googleのスンダー・ピチャイCEOは「検索とAIはゼロサムではない」と主張しているものの、自社の収益基盤を守りながら新技術へ移行する難しい局面に立たされています。

Google、イノベーションの牽引役から守る側へ移行

かつて検索技術で革新を起こし、インターネット世界の覇者となったGoogleがいま「革新を守る側」へと立場を変えています。

1997年に開発し2000年から世界展開した同社の検索サービスは、最適な結果を表示する独自アルゴリズムで競合を圧倒し、四半世紀にわたり支配的地位を維持してきました。

しかし近年、同社はイノベーション停滞の課題に直面しています。2015年に持株会社制に移行し、「ムーンショット」と呼ばれる野心的プロジェクトで自動運転やライフサイエンス、気球インターネットなど多方面に投資しましたが、多くが採算に合わず縮小・撤退する結果となりました。

こうした状況で、米司法省は検索と広告の両分野で独占禁止法違反を訴え、一審でGoogleは敗訴。特に検索裁判では、Appleに年間200億ドルを支払ってiPhoneに標準搭載してもらう契約が問題視されました。

サンノゼ州立大学のアフメド・バナファ氏によれば、技術企業の分割論議にはパターンがあり、「市場支配が絶頂期に独占で訴えられ、実際には次の技術革新で旬を過ぎている時期に分割を求められる」と指摘しています。AT&TやMicrosoftも同様の道をたどりました。

Googleが「過去の企業」になりつつあるという見方も強まる中、自社変革への道はますます厳しさを増しています。

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