
米起業家イーロン・マスク氏が率いる民間宇宙企業スペースXが、これまで最優先としてきた火星探査計画をいったん先送りし、月探査への対応を前面に押し出す方針に転じました。 米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の報道を引用する日本の通信社系記事によると、スペースXは投資家向け説明で、米航空宇宙局(NASA)の月探査計画を優先し、火星への飛行は当面見送る考えを示したとされています。 関係者によれば、同社は自社の大型宇宙船「スターシップ」を用い、2027年3月までに無人での月面着陸を実現する具体的な目標も掲げているということです。
スペースXはこれまで、火星に自給自足可能な都市を建設する長期構想を掲げ、そのための重要ステップとしてスターシップの試験飛行や軌道打ち上げを重ねてきました。 マスク氏は「月は通過点にすぎない」といった趣旨の発言を行い、火星到達を急ぐ姿勢を示してきましたが、技術的課題や開発スケジュールの遅れに加え、NASAの月探査計画への対応が重くのしかかっていたとみられます。 NASAはアポロ計画以来となる有人月面探査「アルテミス計画」を進めており、その着陸船(有人月着陸機)にスペースXのスターシップ派生機を選定しています。
アルテミス計画では、無人飛行のアルテミスIがすでに実施され、今後は有人で月周回を行うアルテミスIIと、有人月面着陸を目指すアルテミスIIIが控えています。 しかし、各ミッションは技術検証や安全性評価の観点から度々延期されており、NASAは昨年、アルテミスIIの打ち上げを2026年4月、アルテミスIIIを2027年半ばに先送りする新たなスケジュールを公表しました。 スペースXにとっては、NASAと連携した月面着陸の実現が、将来的な火星有人探査へとつながる重要な橋渡しと位置付けられており、限られた開発リソースを月探査に集中させる判断に至った形です。
月面都市構想と今後の見通し
マスク氏は最近、日本の大手メディアのインタビューや海外記者会見の報道を通じて、月面に「自力発展都市」を建設する構想を強調し、その延長線上に火星移住を見据える考えを示しています。 ロイター日本語版によると、同氏は月面に資源採掘や発電インフラを整え、将来の深宇宙探査の拠点とするビジョンを語っており、WSJ報道で伝えられた2027年3月までの無人月面着陸目標も、その第一歩と位置付けられています。
一方で、スターシップ計画は大型ロケットの再使用技術や高精度の着陸制御など、依然として克服すべき課題が多く、打ち上げ試験も成功と失敗を繰り返しているのが現状です。 京都新聞電子版など国内メディアは、NASA側でもアルテミス計画の打ち上げ準備に向けたロケット移送作業や試験が続いており、国際的な月面基地構想や資源開発競争の行方に注目が集まっていると伝えています。 火星計画そのものが中止されたわけではなく、まずは月面での技術実証と持続的な活動基盤の構築に軸足を移すことで、長期的な有人火星探査の実現可能性を高めようとする戦略転換と言えそうです。












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