
石油元売り大手の出光興産が、2030年までに国内製油所の石油精製能力を大幅に削減し、一部製油所を閉鎖する方針を撤回する見通しとなりました。 これまで同社は、2022年に策定した中期経営計画で、2030年までに石油精製能力をおおむね2割、日量ベースで約30万バレル削減する方針を掲げ、国内製油所の集約と閉鎖を進める構えを示していました。
しかし、電気自動車(EV)の普及が想定を下回り、国内のガソリン需要が当面堅調に推移すると判断したことから、6カ所ある国内製油所体制を維持する方向にかじを切ることになります。
関係者によりますと、出光興産は2030年までに日量30万バレルの削減を目標としていた石油精製能力の縮小計画を見直し、目標そのものを撤回する方針を固めました。 対象となっていたのは、北海道製油所や千葉事業所、愛知事業所などを含む国内拠点で、これまで「一段の閉鎖」を前提にした再編が想定されていましたが、今回の方針転換により、少なくとも2030年までは6拠点体制を維持する方向で最終調整が進められています。 詳細は、3月に公表予定の新たな中期経営計画に盛り込まれる見通しで、これまでの脱炭素戦略と収益確保のバランスをどう再構築するかが焦点です。
同社はこれまで、再生可能エネルギーや次世代燃料への投資を軸に、化石燃料事業の比率を段階的に引き下げる方針を示していましたが、市場側の受け止めや需要動向にずれが生じていることも浮き彫りになっています。 幹部からは、「市場が脱炭素の変化を十分に受け入れ切れておらず、浸透を待たざるを得ない」との見解も示されており、海外で見られるEV政策修正の流れや、化石燃料への一時的な「回帰」が国内の経営判断にも影響しているとの見方が広がっています。
今回の方針転換は、エネルギー安全保障の観点から一定の供給能力を維持する狙いがある一方で、日本企業の脱炭素移行が「現実路線」へと軌道修正されつつある象徴的な動きといえます。
脱炭素戦略の揺らぎと今後の課題
出光興産の製油所閉鎖方針の撤回は、国内の脱炭素政策と企業戦略の双方に課題を投げかけています。 もともと同社は、石油精製能力の2割削減や日量30万バレル減という数値目標を掲げることで、国内需要の減少と国際的な脱炭素の潮流に合わせた構造転換を進める考えでしたが、EVの普及鈍化やガソリン需要の底堅さに直面し、短期的な供給力と収益を優先する判断に傾きました。
一方で、政府が掲げる2050年カーボンニュートラル目標や、産業界に求められる排出削減ペースを踏まえると、製油所の集約や設備更新を先送りすることは、中長期的な投資負担の増大や国際競争力の低下にもつながりかねません。 一部の専門家は、石油需要の減少スピードを見極めつつ、製油所を再生可能エネルギーや合成燃料の生産拠点へと転換する必要性を指摘しており、今回の「撤回」はあくまで一時的な修正にとどまるべきだとの声もあります。
3月に示される新中期経営計画では、6拠点体制を維持しながらも、どのようなロードマップで脱炭素投資と事業ポートフォリオの転換を進めるのか、具体的な工程表が問われることになります。












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