世界的IT企業のAmazonが、2025年1月から従業員に原則として週5日の出社を求めると発表しました。新型コロナウイルスの感染拡大以降、在宅勤務の長期化に伴い企業文化の緩みが見られたことから、方針転換に踏み切ったようです。
Amazonのアンディ・ジャシーCEOは社内メモで、「過去5年を振り返り、オフィスで一緒に働くことの利点は大きいと確信している」と強調しています。新たなアイデアの創出には、出社が効果的だと説明しました。
コロナ禍では事務系社員の大半が在宅勤務となり、2023年5月には週3日出社を義務付けていました。米テック大手で週5日勤務に戻すのはAmazonが初めてとなります。
対象は事務系や技術系の社員で、体調不良時や出張中などを除き、原則出社が求められます。シアトルとアーリントンの米国本社では、フリーアドレス制の廃止も発表。固定席に戻すとのことです。
Amazonはコロナ下のネット通販特需で急成長し、従業員数は2019年末の79万8,000人から2022年3月末には162万2,000人へと倍増しています。しかし、組織の肥大化に伴い、士気の低下や中間管理職の増加などの弊害も表面化しました。
2022年秋以降、成長鈍化を受けて大規模な人員削減に着手。働き方改革にもメスを入れ始めた形です。米IT大手の動向は他社にも影響を及ぼすとみられ、今後のオフィス回帰の行方が注目されます。
Amazonの週5日出社、「企業文化」の維持・強化が狙い
Amazonが週5日の出社を義務付ける決定は、「企業文化」の維持・強化が狙いのようです。アンディ・ジャシーCEOは、同社の独自の文化が長年の成功を支えてきた重要な要素だと強調。在宅勤務の継続では、この文化の維持が難しいと判断しています。
働き方の変革と並行して、組織のフラット化も進める予定です。2025年3月末までに管理職に対する現場社員の割合を大幅に引き上げ、意思決定の迅速化を図ります。
アンディ・ジャシーCEOは、会議の複雑化や官僚主義的な手続きの弊害を指摘しています。「官僚主義についての目安箱」を設け、社員から直接改善案を募る方針も明らかにしました。
しかし、ここ数年は在宅勤務を前提に採用を進めてきたため、社員からの反発が予想されています。2023年には、週3日の出社方針に対してストライキも発生しています。
一方、シリコンバレーのIT企業では、「ハイブリッド勤務」が定着しつつあります。それでも経営者の間では、生産性向上のために出社が望ましいとの見方が広がっているようです。
テスラのイーロン・マスクCEOや、OpenAIのサム・アルトマンCEOは在宅勤務に否定的です。Googleのエリック・シュミット元CEOも、同社が働き方改革を業績向上より重視していると主張しています。