物価高の中で高水準の賃上げ広がる 2026年春季労使交渉、大企業で満額・過去最高相次ぐ

賃上げ後の給与明細と1万円札

2026年春季労使交渉は18日、大企業の集中回答日を迎え、物価高と人材確保を背景に、主要企業で高水準の賃上げ回答が相次いだ状況です。 自動車や電機など主要製造業の労組でつくる金属労協によると、午後0時30分時点で回答があった49組合のベースアップ(ベア)回答額の平均は1万5450円と、比較可能な2014年以降で最高となりました。 金属労協は今春闘で、ベア「月1万2000円以上」を統一要求として掲げており、多くの企業がこの水準を大きく上回る回答を示した形です。

自動車業界では、トヨタ自動車が労働組合の賃上げ・一時金要求に6年連続で満額回答しました。 賃上げ額は職種・等級に応じて最大月2万1580円、年間一時金は基準内賃金の7.3カ月分で、ボーナスは過去最高だった前年を0.3カ月分下回る水準とされています。 一方で、賃上げと賞与の双方で満額としたことで、「人への投資」を重視する姿勢を改めて示した格好です。 自動車総連の集計では、大手12労組のベアと定期昇給を合わせた平均回答額は1万9333円と、1993年以降で最高となり、集計対象の大手12労組すべてが満額以上の回答となりました。

電機や重工など製造業でも高水準の回答が広がりました。電機連合によると、三菱電機やパナソニックホールディングス(HD)など大手12社の回答が出そろい、このうち6社が満額回答となり、前年の倍に増えました。 日立製作所とNEC、パナソニックHD、三菱電機などはベア相当1万8000円で満額回答し、賃上げ率はいずれも6%台半ばに達しています。 IHIや川崎重工業、住友重機械工業、三菱重工業もベア1万6000円前後で4年連続の満額回答とし、賃上げ率は5〜7%程度を確保しました。

一方、鉄鋼や化学の一部では要求を下回る回答も見られました。日本製鉄はベア要求1万5000円に対し1万円とし、JFEスチールもベア7000円と、要求1万5000円を大きく下回りました。 三菱ケミカルグループも、組合が求めていた4%(平均1万6260円)に対して3.4%(同1万3821円)と回答しましたが、一時金の加算で従業員の士気向上を図るとしています。 それでも賃上げ率自体は5%台半ばと、近年の高い水準は維持されています。

流通・サービス分野でも賃上げの動きが広がっています。流通や外食などの労組が加盟するUAゼンセン本部では、「満額」と書き込まれたホワイトボードが相次ぎ、イオン系のマックスバリュ関東はベアと定昇を合わせて平均月額1万6495円(5.04%)で妥結したほか、アサヒビールもベア9000円・賃上げ率5%で4年連続の満額回答としました。 サントリーホールディングス(HD)はベアを一律月1万1000円、賃上げ率約6%とし、4年連続のベア実施で待遇改善を進めています。​

こうした大企業の動きは、中堅・中小企業への波及も期待されています。経団連の筒井義信会長は、集中回答日の結果について「人への投資が企業と社会の成長と分配の好循環につながる確かな手ごたえがある」と評価しつつ、ガソリン価格の上昇などコスト増が中小企業の賃金交渉に与える影響に懸念も示しました。 日本商工会議所の小林健会頭も「不安定要素が多い中での賃上げが今年の特色だ」と述べ、「実質賃金を上げるには賃上げが不可欠」として、中小企業にも賃上げの「底力」を求めています。​

中小・非製造業への波及と実質賃金回復が焦点に

2026年春闘では、労働組合側の要求水準も高く、連合は「賃上げ分3%以上+定昇相当分を含めて5%以上」を目安とし、中小労組については「6%以上・1万8000円以上」を掲げていました。 金属労協や電機連合もそれぞれベア1万2000円以上、1万8000円以上と過去最高水準の統一要求を掲げており、今春の回答は総じてこれに沿った結果になっていると言えます。

一方で、足元ではエネルギー価格や食料品を中心に物価高が続き、実質賃金はなおマイナス基調が残っていると指摘されています。 賃上げ率が5〜7%の高水準でも、物価上昇をどこまで上回れるかが問われており、今後の家計の実質所得の改善につながるかは、春闘の成果が中小企業や非正規労働者にどれだけ波及するかにかかっています。

経団連や日商は、大企業の決着から2〜3カ月遅れて本格化する中小企業の交渉を念頭に「賃上げの流れを途切れさせないことが重要」と強調しますが、原材料費やエネルギーコストの転嫁が進まない中小企業ほど賃上げ余力は乏しいのが現実です。 こうした中で、政府・日銀による賃金と物価をにらんだ政策運営も焦点となっており、市場では日銀による次回利上げ時期として「4月」予想が多いとの見方も出ています。

2024年、2025年と続いた高水準の賃上げに続き、2026年春闘も「高い相場」が維持される公算が強まる中、実質賃金を持続的なプラスに転じさせ、家計と企業の双方が成長の果実を実感できるかどうかが、今後の日本経済の構造転換を占う試金石となりそうです。

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