横須賀矯正展とは?刑務所内のブルースティックの生産工場も見学できる
横須賀矯正展とは?
横須賀矯正展は年に一度、横須賀刑務支所により開催されるイベントで、今回で31回目を迎えます。
このイベントでは、横須賀刑務支所で製作されたブルースティックなど、刑務所内の作業により生産された高品質な製品を、手頃な価格で提供しています。さらに、地域住民に矯正行政の取り組みを紹介し、理解を促進することを目的としています。
横須賀矯正展の目的
横須賀矯正展は、法務省が推進する「社会を明るくする運動」の重要な一役を担い、受刑者や少年の更生と社会復帰を支援する矯正行政の重要性を伝えています。
横須賀矯正展では、日々の刑務作業や改善指導の様子を通して、受刑者の改善更生への取り組みを紹介します。また、地域社会における出所者の受け入れ促進と再犯防止の重要性を訴え、矯正行政への理解を深めることを目指しています。
横須賀矯正展はどんな内容?
横須賀矯正展は、横須賀刑務支所にて開催されます。刑務所という普段は接する機会の少ない場所での開催は、地域住民の方々に矯正行政への理解を深める良い機会となっています。
横須賀矯正展は、横須賀刑務支所だけでなく、町内会や地域に根差した企業や団体も出店する等の協力があって成り立っていて、地域コミュニティとの連携を強化しています。
<横須賀矯正展の内容>
- 施設見学
- 矯正行政に関するパネル広報
- 刑務所作業製品の販売
- ちびっこ刑務官写真撮影
- キッチンカーや飲食店ブース
- ステージイベント
では、第31回「横須賀矯正展」の詳細について紹介します。
2023年(令和5年)横須賀矯正展の様子
新型コロナウイルスの影響を受けて、4年ぶりに開催された横須賀矯正展。横須賀刑務支所の入口前には、開場する30分以上前から来場者が行列をつくっていました。
2023年(令和5年度)の横須賀矯正展の来場者は、約1,500人でした。この日は横須賀周辺で「よこすかみこしパレード」が開催されていたり、横須賀市初となる、海上をメインとした防災訓練を含む総合防災訓練が浦賀駅付近で開催されていました。これらの大規模なイベントと重なるなか、横須賀矯正展への高い関心がうかがえる多数の来場がありました。
大人気!横須賀刑務支所のブルースティック!
横須賀刑務支所で製造される『ブルースティック』は、衣服のシミ、黄ばみ、汚れを効果的に除去すると同時に、抜群の除菌効果を持つ洗濯用固形石けんとして知られています。ブルースティックの販売ブースは、目を引くディスプレイで訪れた人々の注目を集めていました。
ブルースティックを購入する目的で横須賀矯正展へ来られる方も多いとのことで、びっしりと準備されています。
開場と共にほとんどの人はブルースティックの販売ブースへ向かい、あっという間に行列ができました。ブルースティックは一番売れている刑務所作業製品で、どこの矯正展に行っても人気の製品です。
ブルースティックの販売ブースは、賑やかなバーゲンセールのような雰囲気で、多くの来場者が購入していました。すべての来場者に公平に提供するため、購入上限が設けられていました。
長年にわたり全国で売上数量1位を誇るブルースティックへの注目が、最近さらに高まっています。特にメディアの報道と新型コロナウイルスの影響で生じた品薄状態により、その希少価値が高まっています。
ブルースティックがそれだけ求められるほどの価値があるという捉え方もできる一方、転売などで本当に求めている方に適正な価格で渡っていないことは残念な状況とも言えます。
安くて質の良い刑務所作業製品
多くの人々が刑務所作業製品のコストパフォーマンスの高さを認識していますが、矯正展に初めて訪れた来場者も、これら製品の手頃な価格と優れた品質に驚きの声を上げています。
特に、横須賀刑務支所を所管する横浜刑務所で製造されるパスタなどの乾麺は、とても高い評価を受けています。このパスタの販売ブースには、開場後間もなく長蛇の列ができていました。
開場からわずか1時間あまりで、360個すべてが完売しました。横浜矯正展や他の矯正展でもこのパスタは販売されますが、その人気ゆえにすぐに売り切れてしまうそうです。
他にもデザインが独特で人気のマル獄シリーズや、乾燥しいたけ、家具類なども展示・販売されています。
久里浜少年院で製作された陶器は、その所在地にちなんで『長瀬焼』と呼ばれています。少年たちを指導していた専門家も、販売ブースにいらっしゃいました。展示されていた似顔絵は、少年たちによって描かれた作品です。
また、矯正展には刑務所作業製品の値下げコーナーが設けられていました。ここに展示された製品は、生産終了したものや、滋賀刑務所のように廃庁となった施設の現品限りのものです。これら希少な製品が半額以下の価格で提供されていたため、多くの来場者が購入していました。
横須賀矯正展でもキャッシュレス対応のレジがありました。時代の変化と共に、決済方法を幅広く持つことで刑務所作業製品を手に取る年齢層も幅広くなっています。
地域住民で盛り上がるステージイベント
ステージでは地域の学生や団体による吹奏楽やフラダンス、チアダンス、合唱などが行われていました。お子さんが出演されることをきっかけに矯正展に初めて来場する親御さんの姿も多く見られました。
横須賀矯正展が開催された日は開場直前まで雨がぱらついていましたが、開場時間から綺麗に晴れてステージイベントは問題なく進行しました。なお、ステージに出演された方々には、横須賀矯正展を共に盛り上げたとして横須賀刑務支所長から感謝状が授与されました。
地域住民や地域に根差したお店の出店ブース
横須賀矯正展では、町内会など地域コミュニティに属するブースや、地域に根差した店舗(コンビニやMAZDAなど)が出店していました。出店のきっかけは多岐にわたり、地域との絆を深める思い、展示会への期待、長年にわたる関係性など、それぞれの理由がありました。
町内会の方々が、参加者と触れ合う姿が地元住民同士のコミュニケーションにもなっていてとても微笑ましいシーンでした。
横須賀刑務支所から声を掛けてもらい、10年くらい前から出店されている和菓子屋さんもあり、地域の方々との協力あって横須賀矯正展が開催されていることを感じ取ることができます。
農福連携という出所者の雇用の一端を担うブースも出ていました。車メーカーのMAZDAが車をずらりと並べていたり、コンビニのファミリーマートも飲食物の販売をしていることも目を引きました。
ちびっこに人気の刑務官体験やスカリン登場も!
ちびっこも楽しめるようにと子供サイズの刑務官の服や帽子を着ることのできるコーナーがありました。お子さん連れの家族が、横須賀刑務支所の門前で記念撮影をしていました。
横須賀市のキャラクター『スカリン』も横須賀矯正展へ登場。可愛らしい姿に子供の人気を集めていて、お子さんを連れた家族が記念撮影をしていました。
普段は入れない刑務所内へ!
刑務所の中を見ることができる施設見学は横須賀矯正展でも非常に人気で、受付には常に人が並んでいました。施設見学が始まると同時に、大きな鉄の門が開いて刑務官と共に入っていきます。刑務所内では刑務官先導の元、要所要所で施設について説明してくれるので受刑者の生活やブルースティックの工場などについて知ることができます。
刑務所内の見学にはもちろんルールがあります。録音、撮影の禁止はじめ刑務官の指示に従うことが大事です。施設見学という貴重な機会は参加する皆さんのモラルで成り立っています。
ブルースティックの包装フィルムは、不良品のチェックも兼ねてすべて手作業で巻いています。3本1組のパックにラップ包装する作業もすべて手作業で行っています。
横須賀刑務支所のブルースティック製造工場は、国際規格ISO 9001の認証を取得しています。日本全国の刑事施設の中でこの認証を取得しているのは、現時点で横須賀刑務支所のみです。
2003年にISO 9001の認証を取得してから、3年ごとの更新審査と毎年の維持審査を経て認証を維持しています。認証を維持することは大変ですが、品質マネジメントシステムに基づく製造は、社会的な評価を高めています。
工場内には、「心をこめた作業で人に喜ばれる商品を作ろう」という標語が掲げられ、高品質な商品づくりへの意識がうかがえます。
イラストからもわかるように、受刑者の部屋には和室のほかに洋室もあります。理由として外国人も収容されているため、外国の生活習慣に配慮した部屋も準備しているとのこと。また、外国人だけでなく日本人でも足腰が悪い高齢者なども洋室に収容することがあるそうです。
横須賀刑務支所などの矯正に関する取り組みについて
横須賀刑務支所の歴史や刑務所内で行われている取組に関して、パネルで学ぶことができるコーナーがありました。パネルには、横須賀刑務支所で行われている刑務作業や改善指導、再犯率に関するデータや原因と対策など、具体的な取り組みが細かく記載されていました。
横須賀刑務支所では、施設見学に参加された方を対象にアンケートを実施しています。このアンケートでは、過去に施設見学の経験があるかどうかや、刑務所や刑務官の役割についての知識があるかどうかを尋ねています。矯正展の目的である矯正行政に対する理解が深まっているかを図るためであり、横須賀刑務支所はアンケートを通じて、その成果を把握しています。
横須賀矯正展を通じて地域の方々に伝えたいこと
横須賀矯正展を通じて地域の方々に伝えたいことは、出所者を地域社会で受け入れていただくために、矯正行政への理解を深め、出所者の再犯防止に貢献することです。横須賀矯正展は、刑務所作業製品の販売、飲食店ブース、ステージイベントなど文化祭的な要素を含むイベントです。このイベントに興味を持っていただき、参加者が矯正行政の役割、日々の刑務作業の重要性を理解し、受刑者や少年の改善更生および社会復帰を支援することが目的です。
初めて来た方も2回目以上来ている方もいて、来場者の声はさまざまでした。
「ブルースティックとパスタを購入しに来ました」
「チラシやイベント情報で知って、初めて横須賀矯正展に来ました」
「(刑務所作業)製品を購入したあとのお金がどのように使われるか知りたい」
実際、刑務所作業製品の販売を行っている公益財団法人矯正協会によると、刑務所作業製品が購入された売上は、新たな作業材料の調達資金等に充てられるほか、犯罪被害者支援のために使われているそうです。製品を購入される方々のお金が関連する運営の一部を担っています。
横須賀刑務支所・次長の紅野さんには、横須賀矯正展を通じてのメッセージをいただきました。
「4年ぶりに横須賀矯正展の開催ができ、無事に終えることができてよかったです。地域の企業や住民の方々が、さまざまな形で協力してくださり、矯正展をきっかけに受刑者の改善更生への取り組みに興味を持っていただく方々が増えれば何よりです。受刑者の人たちには安全に作業をしてもらい、勤労意欲を高め、就労に必要な技術を身につけてもらっています。そして、社会に戻ったときに勤労に対して正しい習慣を持って好ましい生活ができるように指導しています。イベントに参加することで、刑務所がどんなことをしているか理解を深めていただければ嬉しいです」
横須賀刑務支所とは?
横須賀刑務支所は、法務省矯正局の東京矯正管区に属する刑務所です。以前は横須賀刑務所でしたが、2007年4月に横浜刑務所管下の刑務支所へ移行しました。
収容定員は257名で、約100人を収容しています(2023年10月29時点)。内10人ほどが在日米軍関係の被収容者です。
ブルースティックは、平成2年に開発されました。ブルースティック工場は元々横浜刑務所内にありましたが、平成9年に横須賀刑務支所へ移設しました。
当所は、東京から80km、横浜から40kmの圏内にあり、神奈川県南東部の三浦半島の東岸部千代ヶ崎に位置し、東周は東京湾口、眼前に房総半島を臨み、また、北隣には幕末にペリー提督率いる黒船来航で有名な浦賀港を控え、黒潮が海岸線を洗う自然に恵まれた土地にあります。主として犯罪傾向の進んでいない男子受刑者及びいわゆる「日米地位協定」に規定される外国人受刑者を収容する施設です。
(引用:https://www.moj.go.jp/kyousei1/kyousei05_00082.html)
初犯の受刑者と、在日米軍の地位を有する受刑者を収容しています。アメリカ人をはじめとする外国人がいるため、英語の通訳が必要になってきます。民間の通訳人の協力も得て成り立っています。
横須賀刑務支所の基本情報
JR久里浜駅、京急久里浜駅、京急浦賀駅からバスで15分ほどの場所に横須賀刑務支所は存在します。潮風が若干感じられるくらい、海のそばに位置する刑務所は珍しいかもしれません。
横須賀刑務支所では、ブルースティック3本組、ブルースティック液体版、ブルースティック液体版詰替用などを製作しています。
所在地
〒239-0826 神奈川県横須賀市長瀬3-12-3
交通手段
●JR横須賀線「久里浜駅」下車車10分
●京浜急行「京急久里浜駅」下車京急バス千代ヶ崎経由浦賀駅行き「法務省官舎前」下車すぐ
TEL 046(842)4983
FAX 046(842)4984
横須賀刑務支所
https://www.moj.go.jp/kyousei1/kyousei05_00082.html
【告知】2023年度(令和5年度)第63回全国矯正展について
2023年(令和5年)の全国矯正展は大幅な見直しを行い、会場を昭和47年より使用している科学技術館から東京国際フォーラムに変更するとともに、開催時期を例年の6月頃から12月に移行したうえで実施予定です。
【開催日時】
2023年(令和5年)12月9日(土)10:00〜16:30
2023年(令和5年)12月10日(日)9:30〜15:00
【開催場所】
東京国際フォーラム(ホールE)
東京都千代田区丸の内三丁目5番1号
こちらも横須賀矯正展同様、矯正行政の取り組みを一般市民に伝える貴重なイベントです。ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
第63回全国矯正展についての詳細はこちら↓
https://www.moj.go.jp/kyousei1/kyousei05_00033.html