
全身の筋肉が徐々に衰える難病「デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)」の小児患者を対象とした遺伝子治療薬「エレビジス」が、2026年2月20日から公的医療保険の対象となりました。薬価は1患者あたり3億497万2042円で、国内最高額の設定です。
厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)が2月13日に薬価収載を了承。これまで国内最高額だった脊髄性筋萎縮症(SMA)治療薬「ゾルゲンスマ」(1億6707万7222円)を大幅に上回る価格となりました。
エレビジスの投与対象は、3歳以上8歳未満で歩行可能なDMD患者です。抗AAVrh74抗体が陰性であるなどの免疫学的条件も付されており、1回の点滴静注で治療が完結する「一度きりの遺伝子治療」として導入されます。
日本小児神経学会が実施した施設認定では、2026年2月17日時点で全国13施設が認定済み。投与できる医療機関が限られるため、居住地域によっては受診までに時間を要するケースも懸念されています。
DMDは成長とともに筋力が低下し、多くの患者が若年期に歩行能力を失い、心機能や呼吸機能も低下する進行性の筋疾患です。
エレビジスは、不可逆的な筋障害が生じる前にジストロフィンの欠損を補うよう設計された再生医療等製品で、DMDに対する国内初の本格的な遺伝子治療として期待されています。しかし年齢や病状の進行によって投与対象外となるケースもあり、患者団体からは投与体制の早期整備を求める声が上がっています。
患者の自己負担は高額療養費制度により大幅に抑えられますが、1回約3億円という薬価が医療保険財政に与える影響や、「社会としてどこまで負担すべきか」という議論は避けられない課題です。
薬価3億円が示す遺伝子治療時代の制度的課題
エレビジスはサレプタ・セラピューティクス社が創製し、ロシュ社と共同開発した製品で、中外製薬が国内で販売。DMD向けの遺伝子治療薬で、短縮型ジストロフィンをアデノ随伴ウイルスに搭載し、骨格筋、呼吸筋、心筋への伝達を目指しています。
条件および期限付き承認として、国内での安全性・有効性データを収集しながら使用される形となっています。ピーク時の年間投与患者数は37人、その後は年間約20人、市場規模は約113億円になる見通しです。
ゾルゲンスマなど先行する遺伝子治療薬と同様に、「1回の投与で長期的な効果が期待される」点を重視した薬価算定が行われており、超高額薬の保険適用が続くなか、難病患者へのアクセス確保と公的保険の持続性をどう両立させるかは引き続き制度上の課題となっています。

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