
日本銀行が2025年9月18日に発表した6月末時点の資金循環統計によりますと、個人が保有する金融資産残高は前年同期比1.0%増の2239兆円となり、過去最高を更新しました。この背景には、新しい少額投資非課税制度(NISA)の普及や株価上昇が寄与しており、日本の家計における資産構成に大きな変化が生じています。
家計金融資産の内訳を見ますと、「投資信託」が前年同期比9.0%増の140兆円、「株式等」が4.9%増の294兆円となり、それぞれ過去最高を記録しました。一方で、「現金・預金」は0.1%減の1126兆円となり、2006年12月末以来約18年半ぶりに前年比でマイナスに転じています。
特筆すべきは、家計金融資産全体に占める現金・預金の比率が50.3%まで低下したことです。日本の家計金融資産は長年「半分が円の現預金」という構図が象徴的に語られてきましたが、ついに50%割れが目前に迫っています。これは1997年以降の約20年間で最も低い水準であり、「貯蓄から投資へ」の流れが着実に進んでいることを示しています。
この変化の主な要因として、2024年から始まった新NISAの拡充が挙げられます。新NISAは年間360万円、生涯1800万円の非課税保有限度額を設け、家計の資産形成を後押ししています。2025年6月末時点でNISA口座数は約2696万口座に達しており、国民の約4人に1人がNISA口座を保有している計算になります。
投資行動の変化と今後の展望
日本経済新聞が読者約1900人を対象に実施したアンケート調査では、毎月の新規投資額は10万円台が中心で、20代から40代の約3割が3年前に比べ投資額を2倍以上に増やしたことが明らかになりました。特に30代から40代では月10万円から20万円を投資する人が多数派となっており、若年層を中心に投資への意欲が高まっています。
投資の目的としては、老後資金の形成が67%、インフレ対策が49%と、将来への備えとして投資を位置づける傾向が強まっています。日本銀行による資金循環統計をフロー(取引)ベースで見ると、現預金は2021年3月末を境に過去に経験のない勢いで落ち込んでおり、2025年6月末時点では前期比246億円減と18年半ぶりに資金流出に転じています。前回の流出は2005年のペイオフ全面解禁という特殊な制度変更が理由でしたが、今回はデフレからインフレへの構造転換が背景にあるため、一過性ではない変化と考えられています。
ただし、米国と比較すると、日本の家計金融資産に占める現金・預金の割合は依然として高く、日本が54.2%であるのに対し、米国は12.6%となっています。株式や投資信託の割合では、米国が55%を占めるのに対し、日本は18%程度にとどまっており、さらなる投資拡大の余地が残されています。
政府も「貯蓄から投資へ」の流れを加速させるため、資産運用立国実現プランを掲げ、2028年度末までに金融教育を受けたと認識している人の割合を20%に引き上げることを目標としています。マクロ経済統計で見ると、日本の家計全体では年率15兆円程度の余剰資金が生まれており、そのうち約10兆円が投資信託に向かっている状況です。
今後、家計金融資産における現預金比率の低下と投資信託や株式の比率上昇が継続すれば、日本経済の成長にもプラスの効果をもたらすことが期待されます。インフレ環境下では、現金や預金の実質価値が目減りするため、資産防衛の観点からも投資への関心は今後さらに高まると見られています。


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とは?あえて「集中しない」という選択肢」ライター:秋谷進(東京西徳洲会病院小児医療センター)-150x112.png)








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