
イラン戦争の長期化で液化天然ガス(LNG)価格が高騰し、日本の電力市場に波紋が広がっています。日本卸電力取引所(JEPX)のスポット価格は3年ぶりの高値水準となり、市場連動型の電気料金プランを利用する家庭や企業では、今後の電気料金上昇への警戒感が強まっています。
3月31日受け渡し分の卸電力スポット価格(日平均)は、1キロワット時あたり23.15円と、2023年1月以来の高値を付けました。前週から約3割上昇しており、中東情勢の悪化によるLNG調達コストの上昇が主因とされています。 3月中旬以降、アジア向けLNGスポット価格が騰勢を強めるなか、日本卸電力市場でも20円台の価格帯が散見される状況となっており、売り入札価格の底上げが指摘されています。
供給面の要因も価格を押し上げています。4月から定期検査に入る発電所が複数あり、東京エリアのガス火力発電では発電容量が約4ギガワット減少する見通しです。 こうした中、ホルムズ海峡の実質封鎖やカタール周辺の軍事的緊張で、中東産LNGの供給停滞懸念が強まり、日本と欧州の電力先物価格も前週末比2割高となるなど、国際的な電力価格の上昇圧力も強まっています。
日本の発電構成は火力発電が約7割を占め、その主燃料がLNGと石炭です。 すでに石炭価格も2024年10月以来の高値水準に達しており、複数燃料でコスト増が重なっています。 家庭向け電気料金は、数カ月前の燃料価格を反映する仕組みのため、3月の燃料高は電力需要が高まる夏場(6~11月)の電気料金に反映される見通しで、政府の負担軽減策がなければ家計への影響が避けられないとの見方も出ています。
石炭火力の稼働率引き上げでLNG節約 脱炭素との両立が課題に
政府はLNGの使用量を抑えるため、2026年度に限り石炭火力発電の稼働率を引き上げる方針を打ち出しました。 経済産業省は3月27日、これまで原則稼働率50%以下としていた「非効率」石炭火力に対する稼働制限を一時的に解除し、中東情勢の緊迫化に対応する緊急措置として、安定供給を最優先する姿勢を示しました。 高市早苗首相も同日、石炭火力の稼働抑制措置を2026年度は適用しない方針を明らかにし、年間約50万トンのLNG消費削減につなげる考えを示しています。
石炭は中東依存度が比較的低く、供給リスクがLNGや原油に比べて小さいことから、短期的なエネルギー安全保障の観点では有効な選択肢とされています。 一方で、石炭火力はLNGに比べて二酸化炭素排出量が多く、政府がエネルギー基本計画で掲げてきた「非効率石炭火力のフェードアウト」との整合性が問われる形となっています。
中東の紛争により、LNGの出荷停滞と価格高騰が続くなか、アジアの電力会社はコストを抑えつつ供給を確保するため石炭火力への回帰を強めており、日本もその例外ではありません。 専門家の間では、エネルギー安全保障と脱炭素目標の両立をどう図るかが今後の政策の焦点になるとの指摘が出ています。 卸電力価格の高止まりが続けば、小売電気事業者の経営や新電力の調達コストにも影響が及び、最終的には家庭・企業の負担増として跳ね返る可能性が高い状況です。












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