強盗殺人の罪に問われた袴田巌氏、やり直し裁判で無罪判決 静岡地裁が死刑覆す

1966年に静岡県清水市(現静岡市)で一家4人が殺害された事件で、強盗殺人などの罪に問われた袴田巌氏(はかまたいわお・88)は死刑が確定していましたが、9月26日、やり直しの裁判で静岡地裁は無罪を言い渡しました。

死刑囚の再審無罪は「島田事件」以来35年ぶり、戦後5例目です。2023年10月から2024年5月にかけて15回に及んだ再審公判では、「5点の衣類」の血痕が最大の争点となりました。

事件から約1年2ヶ月後、袴田巌氏が勤務していたみそ製造会社のタンクから5点の衣類が発見されました。確定判決ではこれを犯行着衣と断定しましたが、弁護側は「袴田さんの逮捕前にタンクに入れていれば、長期のみそ漬けで赤みは消えるはず」と主張。

捜査機関による証拠捏造の可能性を訴えていたものの、検察側は「タンク内の酸素濃度が低く、血痕の変色は遅い」と反論し、証拠捏造を「非現実的で実行不可能な空論」と一蹴していました。

袴田巌氏は当初から無罪を訴えていましたが、1968年9月、静岡地裁は死刑判決を下し、1980年12月に最高裁で確定しました。しかし、第2次再審請求審で2014年3月、静岡地裁が再審開始を決定し、袴田巌氏は釈放されています。

その後、東京高裁による再審開始取り消し決定や、最高裁による審理差し戻しを経て、2023年3月、東京高裁が捜査機関による証拠捏造の可能性に言及し、再審開始が確定していました。

今回の無罪判決は、58年に及ぶ袴田巌氏の苦闘に終止符を打つものです。冤罪の可能性が指摘され続けた事件の真相解明に、大きな一歩が踏み出されました。

ネット上では、「とんでもない話じゃないかな」「もうお金で解決できるものではない」「袴田さんが生きているうちに無罪判決が出て本当に良かった」などの意見が寄せられています。

國井恒志裁判長「袴田さんを犯人とは認められない」

判決言い渡しの際、國井恒志裁判長は「『5点の衣類』は事件から相当な期間がたった後、捜査機関によって加工され、タンクの中に隠されたものだ」と指摘しています。袴田巌氏の自白にも疑問を呈し、「袴田さんを犯人とは認められない」と無罪を言い渡しました。

判決後、國井恒志裁判長は袴田巌氏の姉であるひで子氏に対し、「ものすごく時間がかかっていて、裁判所として本当に申し訳なく思っています」と謝罪しました。「真の自由までもう少し時間がかかりますが、ひで子さんも末永く心身ともに健康であることを願います」と述べています。

開廷時、裁判長は弁護側と検察に「心から敬意を表するとともに改めてお礼申し上げます」と、短期間での判決言い渡しへの謝意を示しました。裁判長が「主文、被告人は無罪」と伝えると、傍聴席からは拍手が沸き起こりました。

関連記事

コメントは利用できません。

最近のおすすめ記事

  1. 家事支援ロボット「NEO」予約開始 2026年配送で約297万円
    ロボット開発企業の1Xが10月28日、家庭用ロボット「NEO Home Robot」の予約受付を開始…
  2. 岩国矯正展
    山口県の岩国刑務所で今年も矯正展が開催されました。37回目の開催となったイベントでは、刑務所作業製品…
  3. ニュースでは触れられない“少年審判”の現場。「結果」ではなく「過程」の重みもあること
    18歳未満だと死刑にしないといった規定がある少年法。その規定が理由で結論が変わっているという事案はま…

おすすめ記事

  1. 2023年11月4日(土)に第51回横浜矯正展が開催された横浜刑務所の入り口

    2023-12-29

    『横浜刑務所で作ったパスタ』で大行列!刑務所見学もできる横浜矯正展とは?

    横浜矯正展は、横浜刑務所、横浜少年鑑別所、公益財団法人矯正協会刑務作業協力事業部主催で2023年11…
  2. 横須賀刑務支所に建てられた第31回横須賀矯正展(2023年10月29日開催)の看板

    2023-12-8

    横須賀矯正展とは?刑務所内のブルースティックの生産工場も見学できる

    横須賀矯正展は年に一度、横須賀刑務支所により開催される刑務所イベントで、今回で31回目。横須賀刑務支…
  3. 2025-8-25

    FC2創業者の高橋理洋被告に執行猶予判決 弁護側は「日米の価値観の違い」主張し控訴へ

    動画投稿サイト「FC2」でわいせつ動画を配信した罪に問われていたFC2創業者の高橋理洋被告(51)に…

2025年度矯正展まとめ

2024年に開催された全国矯正展の様子

【終了】コンテスト

ライティングコンテスト企画2025年9-10月(大阪・関西万博 第4回)募集|東京報道新聞

【結果】コンテスト

【結果発表】ライティングコンテスト企画2025年7-8月(大阪・関西万博 第3回)

アーカイブ

ページ上部へ戻る