『横浜刑務所で作ったパスタ』で大行列!刑務所見学もできる横浜矯正展とは?
横浜矯正展とは?
「横浜矯正展」は年に一度、横浜刑務所、横浜少年鑑別所、公益財団法人矯正協会刑務作業協力事業部主催で開催されるイベントで、今回で51回目を迎えます。
横浜刑務所は『横浜刑務所で作ったパスタ』という刑務所作業製品が有名です。横浜矯正展では、刑務所の作業によって生産されたパスタなどの高品質な製品を手頃な価格で提供しています。また、地域住民に矯正行政の取り組みを紹介し、その理解を深めることを目指しています。
横浜矯正展の目的
横浜矯正展は、法務省が主唱する「社会を明るくする運動」の一役を担っています。
収容されている受刑者や少年の改善更生・社会復帰のため、矯正行政が果たしている役割や日々の改善指導、教育活動などを紹介しています。出所者などを地域で受け入れていたただくため、矯正行政に理解を深めてもらったり、出所者等の再犯防止につなげることを目的としています。
横浜矯正展はどんな内容?
第51回横浜矯正展は、横浜刑務所で開催されました。
<横浜矯正展の内容>
- 刑務所作業製品の展示・即売
- 農福連携での野菜販売
- 施設見学ツアー
- 横浜刑務所で作ったパスタの販売
- ちびっこ刑務官写真撮影
- 性格検査
- 模擬居室
- 矯正行政パネル展示
- ステージイベント
多種多様なイベントや出展だけでなく、「ひまわりフェスタ」というイベントも同時開催されていました。各所でさまざまな会場や催しがあり、1日を通じて楽しむことができます。
では、第51回「横浜矯正展」の詳細について紹介します。
2023年(令和5年度)の横浜矯正展の様子
横浜刑務所の入口前には、開場前から来場者がずらりと行列をつくっていました。行列の先頭にいた方は、施設見学や横浜刑務所で作ったパスタやブルースティックの購入を目的に朝7時頃から並んでいたそうです。
第51回横浜矯正展の来場者数は、なんと15,000人超でした。昨年の横浜矯正展の平均来場者数約5,000人を大幅に上回る数で、多くの人々の期待を示しています。
天候にも恵まれ、ひまわりフェスタとの同時開催も相まって来場者数が増えたことも考えられます。当日は、11月とは思えないほど気温が上昇するなか、会場はたくさんの人の熱気に包まれていました。
地元の学生たちによる吹奏楽の演奏が開会を飾り、楽しみにしていた来場客は意気揚々と入場しました。
大人気の横浜刑務所で作ったパスタ!
横浜矯正展を訪れた多くの来場者は『横浜刑務所で作ったパスタ』を購入することを目的にしていることが見受けられました。
平成10年10月に完成した横浜刑務所製麺工場(第4工場)では、「細うどん」や「中華麺」といった人気のある刑務所作業製品を数多く製造してきました。そして、令和4年4月からは新たに「パスタ麺」を開発し、令和5年4月に販売がスタート。販売開始直後から『横浜刑務所で作ったパスタ』はメディアを通じて情報が広がり、人気の商品となりました。
開場と同時に多くの人がパスタの販売コーナーへ向かいすぐに列ができました。午前中は200人以上が常に並んでいる状態が続く様子もありました。お一人様3個までという購入制限が設けられていたにもかかわらず、準備されていた3,500袋のパスタ(乾麺)は完売となりました。
横須賀刑務支所のブルースティックも大人気!
刑務所作業製品で人気を誇るブルースティック。ブルースティックは、服のシミや黄ばみ、汚れなど綺麗に落とせる驚異的な洗浄力と除菌効果を持つ洗濯用固形石けんです。どの矯正展でもブルースティックを目的に来られている方を多く見かけます。
ブルースティックの販売ブースは、まるでバーゲンセールのように人で賑わっており、3〜5組ほど手に商品を持って会計へ向かう光景が目立ちました。一度の会計に5組までという購入制限があったにもかかわらず、それでも準備されていた2,064本のブルースティックも完売となりました。
写真は開場してすぐ、パスタとブルースティックに並ぶ人々の行列です。予想以上の来場客と、パスタやブルースティックを求める人の多さが際立ちました。
リーズナブルで質の良い刑務所作業製品が目白押し
矯正展と言えば、刑務所作業製品の展示、販売を楽しみにしている方が多くいるほど注目を集めています。横浜刑務所だけでなく、他県の刑務所からもさまざまな製品が出品されています。
マル獄シリーズは函館少年刑務所で作られており、その印象的なデザインによって刑務所作業製品の中でも人気があり、横浜矯正展では販売ブースが大きく設けられていました。他のブースでは鞄や靴、陶器などさまざまな製品が展示・販売され、来場者たちは多彩な商品に興味津々でした。
地域の方々による販売ブースもあり、手頃な価格で購入できるため、買い物客で賑わっていました。特に市原刑務所のしいたけは有名で、開場前から行列ができ、わずか30分で完売となりました。
農福連携ブースでは野菜が販売され、主に地元の方々が野菜を購入しに訪れていました。農福連携は出所者の雇用にもつながる取り組みで、矯正展を通じて来場者の皆さんにもこの取り組みを知っていただきたいという思いがあります。
一部のブースでは、現金以外にもクレジットカードやコード決済、電子マネー、交通系ICでの決済が可能なレジも備えられていました。時代の流れに合わせ、決済方法も幅広く用意されていることで、刑務所側の買い物しやすさへの配慮が感じられます。
横浜矯正展では、刑務所作業製品の展示や販売ブースがさまざまなエリアに広がっています。どこへ行っても多くの人で賑わっている様子が見受けられました。
横浜刑務所で作ったパスタも食べられる飲食ブースの数々
『横浜刑務所で作ったパスタ』の乾麺だけでなく、ミートソースパスタとして調理されたものを食べられるブースも出店していました。実際に食べてみると、モチモチな食感の麺で食べ応えがあり、太めな平麺なのでソースもたっぷり絡みます。
やはりこちらもすぐに行列ができ、常に30人以上が並んでいる状態でした。800食分のパスタが用意されていましたが、昼過ぎには完売となりました。1食300円という手頃な価格も、多くの来場者にとって購入しやすいポイントだったようです。
横浜曙町の人気ラーメン店『麺屋M』が初出店。特別に横浜矯正展限定のラーメンが提供され、それを待ち望む来場者の行列は絶えませんでした。
横浜市更生保護女性連盟による出店や、海鮮串などの販売もありました。
神奈川県BBS会・相模原地区BBS会は、県内で更生保護活動を行っている組織で、横浜矯正展に餅付きで出店しました。物珍しさや餅つきのパフォーマンスが人気で、そのブースには絶えず列ができていました。
大豆や昆布、花などが販売されているブースもあり、買い物だけではなく地元の方の交流の場にもなっている様子も見受けられました。
町内会の飲食販売ブースでは、コロッケやポテトなどが手頃な価格で販売されていました。会計中には町内会のメンバーと来場者が楽しく会話し、素敵な笑顔や交流が生まれている様子も見受けられました。
子供も大人も楽しめる体験ブース
道ゆく人の注目を集めていたのは、模擬単独室の展示でした。横浜刑務所の実際の居室を再現したもので、訪れた人たちが受刑者の生活を垣間見ることができる展示です。
“ちびっこ刑務官”の写真撮影では、撮影した写真をその場で缶バッジにしてくれ、持ち帰ることができます。特にお子さん連れの家族に人気で、この体験を楽しんだ参加者は485人に上りました。
性格検査体験コーナーでは、実際に受刑者が受ける性格検査を簡易的に再現したものを体験できます。パソコンを利用して20問の設問に「はい」「いいえ」「どちらとも言えない」で回答することで自身の性格の特徴を診断できるもので、500人以上もの方がこの体験に参加しました。
地元の方々の出演で盛り上がるステージイベント
横浜矯正展の会場の一角に設営されたステージでは、地域の方々によるダンスや演奏、歌などが披露されていました。お子さんや知り合いが出演することをきっかけに、矯正展へ初めて足を運んだ方もいて、特別な機会に参加者たちは記念撮影を楽しんでいました。
ステージにはちびっこからご年配の方まで、さまざまな方が登壇し、イベントを盛り上げていました。
横浜刑務所内の見学ツアー
横浜矯正展の目玉のひとつである横浜刑務所の施設見学。施設見学するためには整理券を取得する必要があり、そのために朝早くから列に並ぶ方もいます。
グループごとに施設内へ入場して、刑務官が先導しながら施設内について説明をしてくれます。普段入ることのできない刑務所を通じて、ここで生活している受刑者の様子が目に浮かぶようでした。
施設見学には撮影・録音禁止などの注意事項があり、来場者の協力や理解の元に成り立っていることがわかります。施設内では刑務官の声に耳を傾けて、静かに見学している様子が印象的でした。
横浜刑務所内で実際に出されている食事メニューも展示されており、人気の献立は「ぜんざい」だそうです。理由は、甘いものは普段出さないから。刑務所に入所する前は甘いものをほとんど口にしなかった人でも、刑務所に入って甘いものを好きになる人もいるそうです。
開場して1時間少しで午前の部の受付が終了するほどの人気で、午後は争奪戦のようにさらに人が並びました。午前中はパスタやブルースティックなどの販売に人が分散していましたが、購入を終えた人が施設見学にも列を成したようです。結果として施設見学は、1日で合計800人を超える方が体験しました。
ひまわりフェスタの同時開催
2019年10月1日に区制50周年を迎えた港南区が「ひまわりフェスタ」というイベントを開催し、横浜矯正展もイベントのひとつとして紹介されていました。横浜刑務所周辺のさまざまな施設でイベントが行われており、各会場を行き来して来場者が楽しむ様子が見られました。
消防署前では「はたらくくるま大集合!」として子供の好きな車が勢揃い。
港南ふれあい公園では、「こうなん子どもゆめワールド」と称して、子供にフォーカスしたステージイベントや出店などがあり、お子さん連れの家族で賑わっていました。
ひまわりフェスタでは各会場を回るようなスタンプラリーが実施され、横浜矯正展を主催する横浜刑務所もそのスタンプラリーの場所のひとつでした。スタンプを集めたら景品と交換できるので、スタンプを楽しそうに集める子供の姿がたくさん見られました。
参考)ひまわりフェスタ
横浜刑務所での矯正に関する取り組みについて
横浜矯正展では、矯正広報活動の一環として広報パネルを展示しています。これらのパネルを通じて、来場者は刑務所内での活動について詳しく知ることができます。広報パネル前に立ち止まってゆっくり眺める来場者の姿も見受けられました。
横浜刑務所を含む矯正施設では、再犯防止を目指した推進計画が進められています。これは、出所者が再び刑務所に戻らないよう支援する取り組みです。再犯の主な原因は「住むところがない」ことと「就職先がない」ことの2つで、これらは一方だけでなく、両方が確保される必要があります。出所者を社会に受け入れるためには、地域住民の理解が不可欠です。
「社会を明るくする運動」も含めてこのような背景から、矯正広報に対する理解を深め、支援を促すために矯正展が開催されています。
横浜矯正展を通じて地域住民に伝えたいこと
地域の方々に出所者を受け入れていただくためには、矯正行政に理解を深めていただき、出所者等の再犯防止につなげることです。横浜矯正展が文化祭的な要素も含むイベントと認識されていることもあり、これを通じて地域の方々に興味を持ってもらうことが重要です。
横浜矯正展に参加していただくことで、刑務所作業製品の販売や飲食店ブース、ステージへの出演などの活動を通して、矯正行政が果たしている役割や日々の改善指導、教育活動などを知ってもらい、理解を深めていただくことが何より重要です。地域の理解があれば、出所者や少年たちが改善更生し、社会復帰するための支援がより円滑に進むことでしょう。
横浜刑務所とは?
横浜刑務所は、法務省矯正局の東京矯正管区に属する刑務所です。下部機関として、横須賀刑務支所・横浜拘置支所・小田原拘置支所・相模原拘置支所の4か所の支所を持ちます。
横浜刑務所の収容定員は1,225人で、2023年11月4日時点で830人が収容されています。収容されている内の134名が外国籍受刑者(二重国籍を含む)で、出身の国や地域数は28、使用する言語数は19に上ります。所内生活上必要な通訳・翻訳については、英語、中国語、ポルトガル語、ペルシャ語、スペイン語、ベトナム語に対応しています。
横浜刑務所の基本情報
所在地
〒233-8501 神奈川県横浜市港南区港南4-2-2
交通手段
●京浜急行上大岡駅徒歩15分
●市営地下鉄港南中央駅徒歩10分
TEL 045(842)0161
FAX 045(846)9162
横浜刑務所
https://www.moj.go.jp/kyousei1/kyousei05_00081.html
2023年度(令和5年度)第63回全国矯正展について
2023年(令和5年)の全国矯正展は大幅な見直しを行い、会場を昭和47年より使用している科学技術館から東京国際フォーラムに変更するとともに、開催時期を例年の6月頃から12月に移行したうえで実施されました。
【開催日時】
2023年(令和5年)12月9日(土)10:00〜16:30
2023年(令和5年)12月10日(日)9:30〜15:00
【開催場所】
東京国際フォーラム(ホールE)
東京都千代田区丸の内三丁目5番1号
こちらも矯正行政の取り組みを一般市民に伝える貴重なイベントです。
全国矯正展の様子も取材しました。後日公開しますので乞うご期待。
第63回全国矯正展についての詳細はこちら↓
https://www.moj.go.jp/kyousei1/kyousei05_00033.html