
2025年9月1日、お茶飲料大手の伊藤園(東証プライム:2593)が第1四半期決算を発表し、業界関係者の注目を集めています。同社の決算発表は毎年9月の第1営業日に実施されており、今期も茶葉価格の高騰や抹茶ブームの影響による業績への影響が焦点となっています。
伊藤園の2025年4月期通期決算では、売上高が4727億円と前期比4.1%増と増収を達成しましたが、原材料コスト上昇や競争激化の影響で営業利益は8.2%減の229億円となりました。主力の「お~いお茶」ブランドは堅調に推移し、新シリーズ「お~いお茶 PURE」も好調な滑り出しを見せています。同社は2026年4月期について、売上高4900億円、営業利益255億円と増収増益を見込んでいます。
茶葉業界を取り巻く環境は大きく変化しています。世界的な抹茶ブームの影響で、茶葉の需要が急増し、仕入価格やコストが上昇している状況です。2025年1-7月に発生した製茶業の倒産、休廃業・解散は累計11件で、前年の10件を上回り過去最多を更新する見通しとなっています。抹茶スイーツや抹茶ラテなどインバウンドをはじめとする国内外の抹茶ブームで、大手飲料メーカーの需要増加により、原料確保に伴う大量買い付けによって茶葉価格が急騰し、中小の製茶業者に悪影響を及ぼしています。
一方で、無糖飲料の好調が続く清涼飲料市場では、健康意識の向上や止渇需要の高まりを背景に無糖飲料の割合が年々高まっており、2026年の市場予測は5兆8601億円(2024年比4.8%増)と拡大が期待されています。茶系飲料においても、無糖茶飲料の成長が期待されており、伊藤園のような大手企業にとっては追い風となる要素もあります。
製茶業界では収益力の二極化が進んでいます。2024年度における製茶業の損益動向では、増益企業が51.2%と半数を超える一方で、減益や赤字の業績悪化の割合も4割超を占める状況です。自社で茶葉収穫から生産加工まで対応可能な製茶業者は抹茶や碾茶生産へのシフトで大幅な売上増となった一方、従来のリーフ茶生産に依存する企業は仕入価格上昇の影響を受けています。
今後の業界展望と課題
茶葉業界の今後については、抹茶ブームの持続性や消費者ニーズへの対応が大きな課題となっています。縮小が続く日本茶市場の中で、高級とされる抹茶市場への対応を各社が進めているものの、ブームがいつまで続くのかは見通せない状況です。ブランド力や変化する消費者ニーズに対応した商品開発力、加工技術力などで高付加価値な茶葉を生産できる企業とそうでない企業における格差の拡大が、製茶業界全体でより加速する可能性があります。
伊藤園は国内緑茶飲料市場でシェアNo.1を維持しており、主力ブランドの「お~いお茶」は40以上の国と地域で販売し、累計販売本数は450億本を突破しています。今回の決算発表では、こうした業界環境の変化に対する同社の戦略や業績への影響について詳細が明らかになることが期待されます。









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