京大、老化細胞を選択的に除去する候補薬をマウスで確認 加齢性疾患治療へ一歩前進

京大、老化細胞を選択的に除去する候補薬をマウスで確認 加齢性疾患治療へ一歩前進

年齢とともに体内に蓄積し、慢性的な炎症や臓器機能低下の要因とされる「老化細胞(セネセント細胞)」を選択的に除去する新たな手法を、京都大学の研究チームがマウス実験で示しました。

老化細胞は、運動機能や認知機能の低下、生活習慣病の発症リスク上昇など、加齢に伴うさまざまな不調と関連するとされています。「加齢そのもの」を治療標的とする戦略として、世界的に注目を集めている分野です。

近藤祥司・京都大学大学院医学研究科准教授(老年医学)らの研究グループは、老化細胞の生存を支えるエネルギー代謝の仕組みに着目。解糖系酵素PGAMとシグナル伝達キナーゼChk1が老化細胞内で異常に強く結合し、この結合が解糖系代謝を亢進させ、老化細胞の生存能が高まることを突き止めました。若い正常細胞では同様の結合亢進は見られません。

この結合を阻害すると、老化細胞のみに選択的な細胞死(アポトーシス)が誘導されることも確認されました。阻害薬の候補として報告されているのが、既存薬「ナトリン3b」です。老化細胞だけを狙い撃ちにするセノリシス(老化細胞除去療法)の新たな候補薬として期待が高まっています。

研究チームは生後20カ月の高齢マウスに対し、ナトリン3bを3カ月間・週1回の頻度で投与。その結果、肝臓や腎臓といった特定の内臓機能指標が改善し、筋力の低下も抑えられるなど、加齢に伴う機能低下の一部が回復しました。投与期間中に重篤な副作用は見られず、安全性の面でも一定の手応えが得られています。

研究成果は2025年12月15日、国際学術誌「Signal Transduction and Targeted Therapy」にオンライン掲載されました。

難治性の肺線維症でも効果 生存率が劇的に改善

今回の手法は、国の指定難病である「特発性肺線維症」を模したマウスモデルでも、高い有効性を示しました。特発性肺線維症は、肺が線維化して硬くなり、十分な酸素を取り込めなくなる進行性の疾患です。現在の薬物療法では病気の進行抑制が主で、根本的な治癒は困難とされています。

研究チームが肺線維症マウスにナトリン3bを投与したところ、非投与群の1カ月後の生存率が約50%にとどまったのに対し、投与群は100%の生存率を維持。肺組織では老化細胞の蓄積が抑えられ、線維化の程度や炎症の軽減も確認されました。

現時点の成果はすべてマウスを用いた前臨床段階のものであり、ヒトへの応用には安全性・投与量・長期投与の影響など多くの課題が残ります。研究チームは今後、他の加齢性疾患やフレイルへの応用可能性も見据えながら、詳細なメカニズムの解析と臨床応用に向けた準備を進める方針です。

関連記事

コメントは利用できません。

最近のおすすめ記事

  1. 日本の人口減少
    総務省が5月29日発表の2025年に行われた国勢調査の速報値にて、2025年10月1日時点での日本の…
  2. 三菱UFJ銀行、「PPAP」原則廃止へ メール添付の運用を全面見直し
    三菱UFJ銀行が、長年慣行となってきたパスワード付きZIPファイルのメール送信、いわゆる「PPAP」…
  3. 製造業30社が国産AIに結集へ ソフトバンク主導でフィジカルAI、米中に対抗
    ソフトバンクが主導する国産AIの基盤モデル開発プロジェクトに、旭化成や富士通、安川電機など国内製造業…

おすすめ記事

  1. 茶畑で作業する受刑者たち

    2025-10-17

    「働く喜びを知った」受刑者が語る。塀のない鹿児島刑務所の茶畑で芽生える更生への希望

    塀のない刑務所「鹿児島刑務所農場区」。開放的な環境で、受刑者たちは社会復帰を目指し、良質な茶葉の生産…
  2. 第48回府中刑務所文化祭が2023年11月3日に開催された府中刑務所

    2023-12-9

    プリズンツアーが大人気!来場者1.5万人の府中刑務所文化祭とは?

    「府中刑務所文化祭」は年に一度(2023年は11月3日)、府中刑務所により開催される今回で48回目の…
  3. 旧・中央裁判司署の入り口

    2025-12-31

    写真で見る旧・中央裁判司署 Central Magistracy「大館(Tai Kwun)」

    旧・中央裁判司署は、「大館(Tai Kwun)」に存在する歴史的裁判所建築。当時の法廷の様子が見られ…

2025年度矯正展まとめ

2024年に開催された全国矯正展の様子

【結果】コンテスト

【結果発表】ライティングコンテスト企画2025年9-10月(大阪・関西万博 第4回)

アーカイブ

ページ上部へ戻る