29日、欧米の長期金利下落の影響を受け、東京外国為替市場にて円がいくらか買い戻されました。これは、28日にイギリスの中央銀行が国債を一時的に買い入れることを発表したことをきっかけに、欧米各国の国債が購入され、欧米の長期金利が下落した影響を受けたことで、日米の金利差拡大への警戒感が和らいだことによるものです。
警戒感が和らいだことで円がいくらか買い戻される展開になりましたが、円を売ってドルを買うという動きも出ているので、午前の円相場は「1ドル=144円台前半」を推移しています。
市場関係者によると「アメリカの長期金利の上昇がいったん下落に転じて円の買い戻しが入る一方、長期的には日米の金利差が拡大すると見る投資家も多く、売り注文も出ている」とのことです。
「1ドル=360円」という時代もあった
現在、「1ドル=144円前後」を推移している円相場ですが、「1ドル=360円」というとんでもない時代もありました。戦後の日本は現在とは違い、「1ドル=360円」という異常な円相場で長らく固定されていました。
終戦当時、アメリカから経済調査団が日本に訪れ、日本の経済力を分析した後にアメリカとの経済力を比較。そこでは「1ドル=320〜340円が妥当」という評価でしたが、日本になるべく早く経済復興してもらうという目的のもと、円相場は「1ドル=360円」となりました。
この異常なまでの円安は「固定相場制」というルールがあった以上、現在のように毎日相場が変動することはありません。しかし、1973年2月にようやく完全な「変動相場制」に移行し、円の価値が少しずつ変化していきました。
円安のメリット・デメリット
円安と円高には、それぞれメリット・デメリットがあります。円安と円高は表裏一体なので、円安のメリット・デメリットだけを解説します。
円安の主なメリットは、輸出企業が海外で稼いだ場合に外資をより円に変換できるという点です。輸出企業の売上が増えることで、結果的に業績も好影響を受けます。
一方、円安のデメリットは海外の商品やサービスを購入する際、日本円をこれまで以上に支払うという点です。資源や食材の値段も上がってしまうため、「給料は上がらないのに物価だけ上がった」という状況が起こります。
現在の日本は円安の傾向が強いため、海外から輸入した商品やサービスが軒並み値上がりしています。もしかしたら今後さらに円安が進み、値上げの流れが加速するかもしれません。今後の円相場の動向に注目しましょう。