米国防総省、AI指揮統制「メイブン」を正式計画に格上げへ 戦場での意思決定高速化狙う

米国防総省、AI指揮統制「メイブン」を正式計画に格上げへ 戦場での意思決定高速化狙う

米国防総省が、データ分析企業パランティア・テクノロジーズの人工知能(AI)指揮統制システム「メイブン・スマート・システム(Maven Smart System)」を、国防予算に恒常的に組み込む正式な調達枠組み「プログラム・オブ・レコード(PoR)」として採用する方針を明らかにしました。 ファインバーグ国防副長官が各軍司令官らに宛てた書簡で示したもので、戦場でのセンサー情報と攻撃手段を結びつけるAI中核システムとして位置付け、意思決定の迅速化とAI活用の本格的な制度化を図るねらいです。

メイブン・スマート・システムは、人工衛星や無人機(ドローン)、レーダーなど150以上の情報源から集まる膨大な戦場データを一元的に統合し、AIで敵の車両や弾薬庫などの標的を自動検知するソフトウェアとされています。 戦況をデジタル地図上で可視化し、標的の識別から兵器システムへの連携まで支援する「デジタル作戦指揮プラットフォーム」として既に米軍の各統合軍で実戦運用されており、イラン関連作戦などでも活用されたと報じられています。 システムには対話型AIとしてアンソロピックの「Claude」が統合されていることも伝えられており、作戦計画や情報要約などで人間の分析を補完しているとみられます。

PoRに格上げされることで、同システムには長期的かつ安定した予算措置が講じられ、開発・改良や全軍への配備が計画的に進めやすくなります。 国防総省は、メイブン関連の契約管理を米陸軍に一元化し、各地域司令部やネットワークへのアクセス拡大を迅速に進める方針です。 一方で、AIが戦場で標的選定や攻撃プロセスに深く関与することには倫理面の議論も根強く、民間AI企業と軍事利用をめぐる関係をどう線引きするかが国際的にも問われつつあります。 PoR指定は厳格な試験・評価基準や性能に関する責任体制の構築も伴うとされ、米軍が「AIを戦略の礎」に据える姿勢を鮮明にするなか、その透明性とガバナンスの在り方が重要な焦点になりそうです。

AI軍事利用が映す米軍の新段階と課題

メイブンのPoR格上げは、米軍のAI戦略が「試験運用」段階から、全軍規模の基幹システムとして本格実装フェーズに入ったことを象徴する動きです。 ロイターなどによれば、メイブンは既に米軍の主要なAI運用システムと位置付けられており、開戦初動24時間で約1000目標を攻撃した対イラン作戦でも中核的な役割を担ったとされます。 PoR化により、陸・海・空・宇宙・海兵隊といった各軍種への展開が効率化され、AIを前提とした新たな作戦ドクトリンや訓練体系の構築が加速するとの見方も出ています。

一方で、AIが戦場データの解釈や標的選定に深く関与することは、誤認識やバイアスが重大な被害につながるリスクを内包します。 日本メディアでも、パランティア製システムの実戦投入やウクライナ戦争でのAI活用を踏まえ、「防衛テック」を巡る米国優位と倫理問題の両面から議論が高まりつつあると指摘されています。 今回の決定は、同盟国が自国の防衛政策や装備計画にAIをどう組み込むかを考える上でも避けて通れない事例となり、日本でも安全保障とAI規制の議論をどう接続していくかが問われる局面に入っていると言えます。

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