中東緊迫で原油100ドル目前、世界市場に警戒広がる

米ニューヨーク原油市場で指標のWTI先物価格が急伸し、1バレル97ドル台と約100ドル目前まで上昇する局面となりました。 中東での軍事衝突が継続し、ホルムズ海峡の事実上の封鎖やタンカー攻撃が相次いでいることが背景にあります。 原油供給不安の高まりを受けて国際エネルギー機関(IEA)は、戦争が国際石油市場で「史上最大の供給混乱」を引き起こしていると警告し、加盟国は協調備蓄放出で価格抑制を図ろうとしています。

米国株式市場でも原油高とインフレ再燃への警戒から景気先行き不安が強まり、ダウ工業株30種平均は大幅安となりました。 投資家のリスク回避姿勢が強まるなか、景気敏感株や消費関連株が売られ、エネルギー高騰が実体経済に波及しつつあることが意識されています。 一方、原油価格は、イラン攻撃や備蓄放出期待、米政府の対応などを材料に短期間で急騰と急落を繰り返す「乱高下」の状態が続いており、市場の不安定さも鮮明になっています。

中東情勢を巡っては、イランが原油輸送の要衝ホルムズ海峡を事実上封鎖し、ペルシャ湾沿岸のエネルギー施設やタンカーへの攻撃を強めています。 12日には産油国イラク南部バスラの港で原油タンカー2隻が攻撃され炎上し、同国は石油ターミナルの操業を停止しました。 これらの映像や写真が拡散したことが、市場心理を一段と冷やし、原油高に拍車をかけた面もあります。

IEAは12日公表の月報で、中東での戦争が世界の石油供給に大きな混乱をもたらしていると指摘し、加盟32カ国が協調して備蓄原油の放出に踏み切る姿勢を示しました。 合意発表後、一時的にWTI価格が80ドル台前半まで下落したものの、ホルムズ海峡の封鎖や攻撃拡大が続く中で供給懸念は根強く、市場は先行きの見通しを描けない状況です。 各国政府や中銀は、エネルギー高騰とインフレへの対応を迫られており、金融政策や景気対策の運営にも影響が広がりつつあります。

米政権の対応と戦争長期化への懸念

米政権はエネルギー価格高騰が国内物価と家計を圧迫することを警戒し、複数の抑制策を検討しています。 トランプ大統領は、自国が世界最大の産油国として原油高で一定の利益を得るとの認識を示しつつも、イランの核兵器保有阻止を最優先課題と位置づけ、対イラン強硬姿勢を崩していません。 一方で、戦争の長期化が11月の中間選挙を控える政権にとって政治的リスクとなるとの見方もあり、早期終結を模索する思惑との間で難しい綱渡りが続いています。

エネルギー価格対策としては、各国と協調した戦略石油備蓄の大規模放出に加え、米国内の港湾間輸送に米国建造船舶の使用を義務づける「ジョーンズ法」適用の一時停止が検討されています。 同法を30日間除外し、外国船舶の活用で燃料輸送コストを抑えることで、ガソリンなどエネルギー価格の上昇圧力を和らげる狙いがあります。 ただ、専門家からはガソリン小売価格に与える効果は限定的との指摘も出ており、抜本的な価格抑制策にはなりにくいとの見方が強いです。

市場では、中東での軍事衝突が数週間から数カ月続くとのシナリオが取り沙汰されており、戦争の「長期化」が最大の焦点になっています。 米世論はイランへの地上侵攻には慎重で、イラン政府側も内政問題を抱えるなか、双方にとって長期戦は政治的な「大きな賭け」になるとの分析も出ています。 一部の証券会社は、戦闘が足元の数週間で収束すれば春以降に原油価格は正常化に向かうとの見方を示しますが、現状では明確な出口戦略は見えず、原油と金融市場の不安定な状況が続く可能性が高いです。

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