合成麻薬フェンタニルを「大量破壊兵器」指定 トランプ氏が大統領令

合成麻薬フェンタニルを「大量破壊兵器」指定 トランプ氏が大統領令―米

トランプ米大統領は15日、米国で深刻な社会問題となっている合成麻薬「フェンタニル」とその原料となる前駆体物質を「大量破壊兵器(WMD)」に指定する大統領令に署名しました。ホワイトハウスで記者団に対し「この物質がもたらす被害は、いかなる爆弾も及ばない」と述べ、米国民を保護するための決断だと説明しました。

今回の指定により、米国政府は麻薬密輸組織に対して、従来の法執行機関による取り締まりを超えた、軍事的な手段を含む強力な権限の行使が可能になるとみられます。トランプ氏は署名の際、「米国の敵はフェンタニルを流入させ、米国人を殺害している」と強い言葉で非難しました。

フェンタニルはヘロインの50倍、モルヒネの100倍もの強力な作用を持つとされるオピオイド系の合成麻薬で、微量でも致死量に達する危険性があります。米国では若年層を中心に過剰摂取による死亡事故が相次いでおり、平均寿命の低下を招くほどの国家的危機として認識されています。

トランプ政権は今回の指定に先立ち、10月末に中国との間で重要な合意を発表。中国政府によるフェンタニル原料の流出防止策強化を条件に、米国は中国からの輸入品に対するフェンタニル関連の追加関税を20%から10%へ引き下げています。中国側も米国への報復関税を停止することで応じました。

一方、メキシコのシェインバウム大統領は16日、今回の「大量破壊兵器」指定を批判しました。「薬物の一つを大量破壊兵器に指定するというアプローチにとどまらず、薬物使用の原因に対処する必要がある」と述べ、危機の根本原因に焦点を当てるべきだと主張しています。

フェンタニルの原料は主に中国からメキシコに輸出され、現地の麻薬カルテルが加工して米国に密輸するルートで流入しています。メキシコは米国から対策強化の圧力を受けている状況です。

「麻薬戦争」が軍事作戦へ拡大する懸念

今回の大量破壊兵器指定は、米軍の行動範囲を劇的に拡大させる可能性があります。すでに米軍は「麻薬密輸船」とみなした船舶に対して、カリブ海などで攻撃を繰り返しており、攻撃による死者も出ています。WMD指定はこれら軍事行動にさらなる法的正当性を与えることになりそうです。

トランプ氏は以前より、麻薬カルテルを「テロ組織」に指定し、ベネズエラへの地上攻撃の可能性も示唆してきました。今回の決定が他国の主権侵害や武力衝突に発展するリスクも指摘されています。

ただし、従来の定義との乖離を疑問視する声もあります。米連邦捜査局(FBI)によると、大量破壊兵器の定義は「爆発物などの破壊装置、有毒な化学物質による死傷を目的とした兵器、生物剤を含む兵器、危険な放射線を放出する兵器」です。

伝統的に核・生物・化学兵器に用いられてきたこの定義を麻薬にまで拡張した今回の措置は、国際社会における「麻薬戦争」のあり方を根本から変える転換点となる可能性があります。

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