ENEOSホールディングス(HD)が、横浜市で合成燃料の製造実証プラントを9月に稼働開始しました。この燃料は、再生可能エネルギー由来の水素とCO2から生成され、CO2排出量を大幅に抑制できる点が特徴です。
合成ガソリンや合成軽油、合成再生航空燃料(SAF)などが含まれ、液体燃料であるため、既存の石油製品のサプライチェーンをそのまま活用できるメリットも注目されています。
実証プラントでは、水の電気分解装置とCO2回収機器を設置。水素とCO2から混合ガスを生成し、「FT合成」という製法で合成粗油を製造します。これを精製することで、さまざまな石油製品を生み出すことが可能となります。
ENEOSの宮田知秀社長は完成式典で、「空気中のCO2で航空機や車を動かす、そんな夢のような技術が手の届くところまで来ている」と、この技術への期待を示しました。製造された合成燃料は、2025年の大阪・関西万博の関連車両で使用される予定です。
ENEOSは今後、設備の性能向上と大規模かつ効率的な生産方法の確立を目指します。宮田知秀社長は、「コストをどうしたら下げられるのか、徹底的に追求したい」と語りました。
ENEOSHD、1日あたり300バレルの本格実証を27〜28年度に開始
ENEOSHDは、2027〜28年度に1日あたり300バレルの合成燃料の本格的な実証を開始する計画を発表しました。さらに、2040年までには同1万バレルでの商業生産を目指すとしています。
大沼安志バイオ・合成燃料事業課長は、「まずは船舶燃料としての需要を開拓する。日本国内では合成ガソリンの普及を加速する規制がない。自発的な取り組みとして自動車メーカーと広げたい」とコメントしています。
グリーン水素の製造に必要な再生可能エネルギーの高さがネックであり、早坂和章・サステナブル技術研究所長は「合成燃料の製造技術自体より、原料コストを下げるのが難しい」と述べました。
国内では大規模な再生可能エネルギーの適地が限られているため、海外で安価に製造したグリーン水素を輸入することが本命となります。ENEOSは、まず用途を広げて流通量を増やし、規模の経済を働かせてコストを抑える考えです。
5月にはENEOSをはじめ、出光興産、トヨタ自動車、三菱重工業が合成燃料の導入に向けて協力することを発表しました。エネルギー会社は、脱炭素への移行において、既存のインフラをなるべく活用することを重視しています。