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今回は、以下の論文を紹介します。
はじめに
米国の子どもたちのメンタルヘルスは、国家的な緊急事態です。
成人期までに精神障害の基準を満たす子どもは、全体で最大40%にも上がっているためです。この数値は近年加速し増加しており、このまま放置しておけば半数を超える未来も訪れるかもしれません。
今回の2007年から2013年の間に生まれた子どもを対象としたコホート研究では、住宅の緑地への曝露と、幼児期および中期の症状の内在化(不安や抑うつなど)および外在化(攻撃性やルール違反など)との関連を調べています。森林、公園、裏庭、その他の緑地は、子どもたちに感情的および生理的な資源を回復する機会を提供し、リスクテイク、身体活動、遊びを通じて規制能力を構築。さらに、熱や大気汚染などの環境ストレス要因による害を減らしています。
これまでの報告では、緑地が少ない環境で育った青年と成人は、緑地が多い環境で育った青年と成人よりも、精神障害のリスクが最大55%高くなることが分かっています。しかし、子どもの早期に出現する内在化および外在化の症状を調べた研究は、あまりありません。ただし、オーストラリアとヨーロッパ諸国の研究では、緑地と子どもの内在化症状、うつ病の診断、および成人期への内在化障害との間に強い関連性が報告されています。
さて、緑地への曝露は、子どもの内在化や外在化と関連しているのでしょうか?
方法
2007年から2013年の間に生まれた、全米41州の2,103人(50.5%の1,061人が男の子)の子どもを対象としたこのコホート研究は、幼少期(2〜5歳)および中期(6〜11歳)に関して行動チェックリスト(CBCL;Child Behavior Check List:子どもの情緒と行動の問題を評価)を用いて、衛星画像を用いた緑化指数であるNDVI(Normalized Difference Vegetation Index)で評価しました。
小児期初期の評価を、1,469人が平均年齢4.2歳時に、小児期中期の評価を1,173人が平均年齢7.8歳時に行っています。
結果
住宅の緑地への露出が多いほど、幼少期の内在化症状が少なくなっていましたが、中期には関連していないという結果が出ました。
結論・考察
緑地への取り組みが、全米の子どもの幼少期不安や抑うつ症状のリスクを軽減するのに、役立つ可能性を示唆していると捉えて良いでしょう。
幼児期は、養育環境の影響に敏感な時期です。
家の周りの自然は、前向きな感情、ストレスの軽減、および感情資源の回復のためのユニークな機会を提供する可能性がありますし、自然環境の保護と拡大は幼児にとって、広範な利益をもたらす可能性があります。
すなわち、幼児期の内在化症状は、長期にわたる深刻な発達過程をたどる可能性があるため、幼児期の緑地の保護的役割は長期的な影響を与える可能性があるといえます。
さて、児童精神科医から。
今回の論文を踏まえて、我が子のために緑の多い住環境を検討してみてはいかがでしょうか?