JR東日本、Suicaにコード決済導入へ 2026年秋に上限30万円で「Suica経済圏」拡大目指す

JR東日本は2026年秋をめどに、交通系ICサービス「Suica」にコード決済機能を導入すると発表しました。これは昨年12月に公表した中長期戦略「Suica Renaissance」の第2弾となる取り組みです。
現在、Suicaの電子マネーはチャージ上限額が2万円に設定されていますが、新たに導入されるコード決済では、残高ベースで最大30万円までチャージが可能になります。QRコードとバーコードによる決済方式を採用し、クレジットカードや銀行口座を通じてチャージすれば、残高が満額ある場合は一度の決済で30万円までの支払いができるようになります。
喜勢陽一社長は11日の定例記者会見で導入の理由について、「ルミネやニュウマンで買い物をするには2万円では足りず、お客様にご不便をおかけしている」と説明しました。JR東日本は、駅ビルでのやや高額なディナーや洋服、バッグなどの買い物を楽しむには2万円では心もとないと判断し、コード決済の導入に踏み切りました。
コード決済を採用した背景には、コストと時間の問題がありました。Suicaを含む交通系電子マネーの利用可能店舗数は9月末時点で約220万店に上り、電子マネーの上限を引き上げるには取扱店舗に設置された決済端末を改修する必要があり、数十億円の費用が発生する可能性がありました。一方、コード決済は既にPayPayや楽天ペイなどが導入済みで、経済産業省によると2024年のコード決済の決済額は約13兆5000億円と、電子マネーの約6兆2000億円の2倍を超えています。
新たなコード決済では、既存の電子マネーは上限2万円のまま残し、少額の決済や改札での利用を継続します。一方でコード決済は高額の買い物用とし、利用シーンに応じた使い分けを見込んでいます。また、JR東日本グループのクレジットカード「ビューカード」とひも付ければ、事前チャージなしで後払い方式を選べるようになり、この場合はビューカードの利用限度額が上限となります。
さらに、家族や友人間を想定した送金機能も設けるほか、加盟店や地域限定のクーポン発行機能も追加し、販促ツールとしての活用も見込んでいます。地方の自治体や商店街などと連携し、給付金の受け取りや地域限定の商品券を付与するといった機能も備える予定です。
モバイルSuicaの発行数は2025年3月時点で3422万となり、過去5年で3倍に増えました。Suicaを含む交通系電子マネーの月間利用件数は2024年7月に3億件を超えています。
コード決済市場で後発のSuica、PayPay対抗へ独自サービス展開
JR東日本がコード決済市場に参入する背景には、「Suica経済圏」の拡大という狙いがあります。Suicaの利用シーンを広げることで、グループ会社との事業上の相乗効果を生み出し、グループ全体でさらなる成長につなげようとしています。
しかし、先行するライバルの壁は高いのが現状です。PayPayは2025年9月時点で7100万人の登録ユーザーを抱え、国内コード決済市場では約3分の2のシェアを占めています。楽天ペイやd払いは通信やネット通販とも連携しており、共通ポイントで利用者を囲い込んでいます。
後発のSuicaには、こうした競合とは異なるサービスが欠かせません。喜勢社長は「Suicaは鉄道に乗れるということが他の決済手段との一番の違いだ」と強調しており、鉄道と結びつけたサービスを検討しています。例えば、コード決済を使ってルミネで一定額以上の買い物をすれば、帰りの鉄道のグリーン券を提供するといったサービスが考えられます。
また、喜勢社長は「他の決済手段に鉄道利用は開放しない」とも強調しました。首都圏在住者にSuicaを含む交通系ICカードを持たざるを得ない状況を維持することで、Suicaの価値を高め、クレジットカードに対抗していく戦略を示したといえます。
いずれも鉄道を通じて地域との結びつきが強いJR東日本ならではのサービスといえ、こうしたサービスで競合との違いを打ち出せるかどうかが、同社の将来を占うことになります。
なお、2001年のSuica開始時からイメージキャラクターを務めてきた「Suicaのペンギン」は、2026年度末をもって卒業し、新たなイメージキャラクターへバトンタッチすることも発表されました。












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