
国土交通省は残価設定型住宅ローンの普及を本格的に後押しする方針を打ち出しました。この新しいタイプの住宅ローンは、住宅を将来売却することを前提に毎月の返済額を大幅に抑える仕組みで、マイホーム購入のハードルが上がり続ける中、若年層や子育て世帯の住宅取得を支援することが狙いです。
残価設定型住宅ローンは、自動車ローンなどで広く利用される「残クレ」と呼ばれる手法を住宅購入に応用したものです。将来の売却想定額である「残価」を設定し、この金額を除いた分のみを借り主が分割で返済します。借り主の死亡時や住み替え時に金融機関が住宅を売却して残価を回収し、借り主が残価分を支払えば完済して住宅を手元に残すことも可能です。
国交省は2025年度補正予算案に住宅金融支援機構への出資金14.5億円を計上しました。機構が金融機関向けに保険を提供することで、家屋の老朽化などによって数十年後の住宅価値が残価を下回った場合でも、金融機関の損失を補償する仕組みを整えます。これにより金融機関がこの新しいローンを提供しやすくし、早ければ2025年度内にも取り扱いが始まる見込みです。
残価設定型住宅ローンは、返済期間を70歳までと定め、以降は残価への利息のみを支払う形になります。対象となる住宅は、良好な状態で長期間住み続けられる性能を備えた長期優良住宅に限られる案があり、所有者には定期的な維持管理も求められます。詳しい要件は今後詰められる予定です。
国交省がこの制度の普及を推進する背景には、住宅価格の著しい高騰と借入金額の増加があります。住宅生産団体連合会の調査によると、住宅取得時の借入金平均は2000年度の2629万円から2023年度には5859万円と2倍超に増加しました。借入金の年収倍率も2000年度の2.9倍から2023年度は5.1倍まで上昇しており、住宅ローンの負担が重くなっている実態が浮き彫りになっています。
50年ローンなどで返済額を抑える動きもありますが、退職時期を考えると年数の長期化には限界があります。国交省は建築費や人件費の高騰が続く状況において、残価設定型によって支払額を抑えられることへのニーズがあると判断しています。退職後もローン返済が続き、自宅を売却して資金を調達する例も増えている中、残価設定型は高齢期の負担を減らし「ついのすみか」を追われる事態を防ぐ効果も期待されています。
一般社団法人の移住・住みかえ支援機構(JTI)などが既に残価設定型住宅ローンの提供を始めています。大和ハウス工業といった住宅メーカーが提供する戸建て住宅を対象に、ローン開始から20~25年で返済額を大幅に減らすことができる仕組みです。耐久性や耐震性の査定が必要で、JTIは約3000件の査定実績があります。国交省は新たな制度と既存の仕組みを組み合わせることも検討しており、借り主の利便性を高めながら金融機関も貸しやすくなる環境を整える方針です。
また国交省は、固定金利型住宅ローン「フラット35」の子育て世帯向け金利優遇を変動金利からの借り換えにも適用する措置も導入します。2025年度補正予算案には1億円を盛り込んでおり、子育て世帯や若年夫婦世帯の住宅取得を幅広く支援する構えです。
残価設定型住宅ローンが普及するには、中古住宅の流通円滑化が欠かせません。自動車の残クレでは人気車種ほど中古価格も高くなると見込まれ、残価が高めに設定されることで支払額を大幅に減らせます。住宅でも同様に、中古住宅市場が成熟し、適正な価値評価がなされることが制度の成否を握る鍵となります。国交省は中古住宅流通の促進にも力を入れており、2025年度補正予算案には空き家の品質検査や補修を支援する費用17億5200万円を計上しています。
住宅ローンの新たな選択肢として期待される効果と課題
残価設定型住宅ローンは、従来の仕組みとは異なる特徴を持つため、利用者には慎重な判断が求められます。この制度では、機構の保険によって残価を下回った場合の金融機関の損失を補償する仕組みを整備することで、金融機関が安心して融資できる環境を作ります。
一方で、この仕組みは高齢者向けのリバースモーゲージとは異なり、借り主の年齢を問わず20代や30代からの活用を想定している点が大きな特徴です。機構は既に高齢者向けに自宅を担保に資金を貸し、死亡後に売却するリバースモーゲージを民間金融機関と提供していますが、残価設定型はより幅広い世代の住宅取得を支援する新しい選択肢として位置づけられています。
住宅価格の高騰が続く中、残価設定型住宅ローンは支払額を抑えながらマイホームを手に入れる手段として注目されます。国交省は制度の詳細を今後詰める方針で、早期の制度開始に向けた準備を進めています。長期優良住宅の普及促進と合わせて、良質な住宅ストックの形成と円滑な流通を目指す取り組みが加速しそうです。








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