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「ちがい」を組織の力に!ヘラルボニーが創設したダイバーシティを探求する拠点とは?

知的障害のある作家のアート作品のデータをライセンス化し、ファッション商品や空間をプロデュースする株式会社ヘラルボニー。2025年のカンヌライオンズで賞を受賞したクリエイティブカンパニーは、創業7周年を迎えるにあたり、「HERALBONY ACADEMY(ヘラルボニー アカデミー)」を創設しました。
ヘラルボニーは「“ちがい”を力に変える」をテーマとした研修プログラムを企業に提供しています。その事業を強化し、ダイバーシティの社会への実装を加速させることを目的にした拠点が「HERALBONY ACADEMY」です。
新拠点の設立に伴い、2025年8月20日にトークイベントが開催されました。本イベントは2部構成で進行。第1部では「“ちがい”が力になる組織とは?~人材戦略とDE&Iの交差点~」というテーマでパネルディスカッションが行われ、第2部ではオリジナルの体験型カードゲーム「PEACE」を用いたワークショップが実施されました。本記事では第1部の内容についてレポートします。
「ちがい」を前提にコミュニケーション方法を変える

パネルディスカッションの登壇者は4名です。ヘラルボニーを起業した松田 崇弥氏、統括ディレクターを務める神 紀子氏、経営コンサルティングファーム・MIMIGURIで組織開発を専門にしている臼井 隆志氏、36歳で視力を失ったブラインドコミュニケーターの石井 健介氏。なごやかな雰囲気のなかで快活なトークが繰り広げられました。
印象深かったのは、視覚障害のある石井さんとのコミュニケーション方法。「ヘラルボニーではslackコミュニケーションの際、文章の後ろにメンションをつける」で統一しているのだそう。その理由が説明されます。
石井さんは、「スクリーンリーダー」と呼ばれるソフトウェアを使用して仕事に取り組んでいます。スクリーンリーダーは、パソコンやスマートフォンの画面上に映し出される文字を音声で読み上げるソフトのことです。対象となる文章を冒頭から順番に読み上げるスクリーンリーダーは、読み上げるスピードが速いため、投稿の文頭にメンションがあると投稿の内容を聞き逃すこともあるといいます。
ヘラルボニーでは複数のチームでプロジェクトが同時に進行するため、1日に読むスラックの文章量も増えます。その負担を軽減し、業務に集中するための工夫が必要でした。石井氏が「メンションを文末につけてくれませんか」と要望を出すとすぐさま全社的に共有。コミュニケーションのルールが定められたとのことでした。
文頭にメンションをつけることに違和感を覚えたことがなかったため、「目の見えている人とコミュニケーションすることを前提としてしまっている」と気づき、ハッとさせられました。

イベントの中盤では、ヘラルボニーで手話通訳者として働く社員の話題に移ります。その社員の方が面接を受けたときのことを振り返りました。
「最終面接で崇弥さんに言われた言葉が心に残っています。『ヘラルボニーには聴覚障害のある社員がいます。わたしを含めて会社にはそうでない社員も多いです。お互いの”ちがい”を力にするためには、コミュニケーションの橋渡しをする手話通訳者の力が必要です』とおっしゃっていて、感銘を受けました」
組織開発に携わってきた臼井氏からは、企業のダイバーシティの取り組みについて意見が述べられました。
「ダイバーシティの意識を育むには『無意識のバイアスを指摘するだけでは効果が薄い』と言われています。自分ごと化して“体感する”ことに意味があります」
終盤では、松田 崇弥氏から障害の見え方を「変える」ことへの熱い想いが告げられました。
「障害のある作家と契約するとき、親御さんは『息子のこんな落書きに価値を見出してくれてありがとうございます』とおっしゃるんです。親御さんからは落書きにも見えるものを、美術や芸術に精通したキュレーターが作品に50万円や100万円といった価格をつけます。そうすると親御さんも、息子さんの絵を家に飾るんです。作品に対する見え方が変わってきたということですよね。作家も作品も、そのままで素晴らしいので、結局、“とらえ方”が重要だと思うんです」
「ちがいをおもしろい」と捉えることが社会の障害受容につながる

トークイベント終了後、「HERALBONY ACADEMY」で統括ディレクターを務める神 紀子氏に話を聞きました。
「ダイバーシティの研修は2年前から提供しています。ある研修が終わったときのことです。発達障害のある方に話しかけられました。その方は『障害に対する受け止め方が変わった』とおっしゃていて。おそらく『発達障害だから後ろめたさを感じる』ということから一歩抜け出せた瞬間だと思います。自分から告げるのは勇気がいることですよね。『このことを言っても安心な人だ』と思っていただけたことがとてもうれしかったです」
そして、「発達障害」という言葉に対する考え方について述べました。
「発達障害に対しての捉え方は当事者によって異なります。オープンにする人もいれば、受け入れるのに苦労する人もいる。その人の置かれている環境や発達障害の特性、性格が関係して起こることなんですよね。だからそのことを理解できる社会にしていきたいです。障害のある人とそうではない人がわかれるのではなく、一緒に生きていけるといいですよね」
次に、ヘラルボニーが掲げる「ファンクルージョン」という言葉の解釈を聞いてみました。
「ファンクルージョンとは、『FUN(面白がる)』と『Inclusion(包摂)』をかけあわせた造語です。『この人をもっと知りたい』と思ったときに、ちがいを乗り越えられる考え方だと思っています。80億人がお互い、『ここが一緒だね』『ここが違うね、面白いね』と思えたらいいですよね」
ちがいを「おもしろい」と捉えて、自分と異なることについて理解しようとすること。HERALBONY ACADEMY創設によりヘラルボニーは新たな一歩を踏み出しました。異彩を放つ作家たちが描く極彩色を中心としたアートのように、夢と現実とが次第に織り交ざる様相は、HERALBONY ACADEMYも偉大なアートの一環のようにも思えます。




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