女性の生理 男性こそ知っておきたい生理の話

「女性の生理 男性こそ知っておきたい生理の話」ライター:秋谷進(東京西徳洲会病院小児医療センター)

生理は女性にとってなくてはならないものである反面、体調不良やメンタルの不調につながる厄介なものでもあります。
男女を問わず生理についての理解を深めることは、健康経営の面からみても非常に重要です。

このコラムでは、生理についての理解の重要性について詳しく解説します。

そもそも生理ってなんでしょう?簡単に説明すると…

生理とは、女性の身体に起こる周期的な変化のことです。

主に卵巣から分泌される女性ホルモンの作用により、1ヶ月に1回、子宮内膜が厚くなり、それが剥がれ落ちることで生じる出血や、排卵が起こることが特徴です。
この周期は、通常は28日前後で、月経周期と呼ばれます。女性は、思春期を迎えると生理が始まり、閉経を迎えると生理が終わります。
生理には、身体的な症状や心理的な変化があることも知られています。
毎月心身に不調を来す生理ですが、妊娠・出産に不可欠なものです。

生理はメンタルにも影響に影響するのはどうして?

月経周期は主に2種類のホルモンの影響下にあります。エストロゲンとプロゲステロンです。

エストロゲンは子宮内膜を厚くする、髪や肌にうるおいを保つ、気分を安定させる効果があります。
プロゲステロンは子宮内膜を厚い状態に保つホルモンです。

妊娠が成立した場合はプロゲステロンが高値のままとなり、子宮内膜が脱落しません。
妊娠しなかった場合はエストロゲン、プロゲステロンとも低下し子宮内膜の脱落=生理がおこります。

また、メンタル面では、プロゲステロンは眠気や不安を引き起こします。
このように、月経周期にはホルモンバランスのダイナミックな変化があります。
そのため、エストロゲンに対してプロゲステロン優位となる月経前や両ホルモンが急激に低下する月経期では、人により心身に不調を来すのです。

男性も生理について理解しておく必要がある

では、なぜ男性も女性の生理やメンタルヘルスについて理解しなければならないのでしょうか。

一つは健康経営的視点からの重要性があります。
健康経営とは、企業や組織が従業員の健康管理を重視する取り組みを行うことで、従業員の健康を維持・向上させ、生産性の向上や企業価値の向上などを狙う経営戦略のことです。

従業員の心身の健康が保たれることでやる気がアップし、結果として生産性の向上が期待されます。
労働者の諸活動による休業や生産性の低下を未然に防ぐメリットもあります。

厚生労働省は従業員の健康管理を経営的な視点で考え、健康の保持・増進につながる取り組みを戦略的に実践することを推奨しています。

昨今では女性の社会進出が進み、日本の全従業員の半数弱が女性です。
女性の生理に関連した労働損失は年間4,911億円と試算されています。
決して少なくない数字ですね。
健康経営的視点からも女性の特有の問題を理解し、働きやすい職場環境に整備することは重要と言えます。

では、実際に女性労働者が生理休暇をどれだけ利用しているのか?を以下の表にまとめました。

    女性労働者のうち
生理休暇を請求し
た者の割合
女性労働者がいる
事業所のうち生理
休暇の請求者がい
た事業所の割合
1997年度3.30%8.10%
2004年度1.60%5.50%
2015年度0.90%2.20%
2020年度0.90%3.30%
表1.生理休暇と女性労働者

また、経済的な理由で生理用品を購入できない女性すなわち「生理の貧困」が問題となっています。
生理用品の購入・入手に苦労したことが「よくある」「ときどきある」は回答者の8.1%でした。
これらは年代別に見ると30歳未満で世帯年収別にみると300万円未満の者に多くなっていました。
これも以下にまとめました。
生理用品に関して悩むことは女性の自尊心や自己評価を損ねることに他なりません。

生理用品を購入・入手できないときの対処法

  • 生理用品を交換する頻度や回数を減らす(長時間利用する等):50.0%
  • トイレットペーパーやティッシュペーパー等で代用する:43.0%
  • 家族や同居者に生理用品をゆずってもらう:39.8%
  • 友達に生理用品をゆずってもらう:33.2%

スコットランドで2022年8月15日に施行された「生理用品法」では、自治体や教育機関、公共交通機関などに対し、生理用品を必要とする人への無償提供を義務付けています。
これに関して、スコットランド自治政府は、「女性の平等と尊厳にとって重要なことだ」としています。
世界に先駆けた非常に評価に値する国策だと考えます。

生理について知っておいて欲しい3つのポイント

職場環境の整備は、個別性が高いため現場の状況や当事者の意向をもとに行うのが良いでしょう。
ここでは一般論として知って欲しい月経随伴症状についてのポイントを解説します。

1.生理は精神論では克服できない

先ほど解説した通り、生理に伴う心身の不調は、ホルモンバランスの変化に伴う生理現象です。
決して本人のやる気がない、体調管理を怠った結果ではないのです。
こうした体調不良を精神論で克服せよと突き放すべきではありません。

2.生理の負担は個人差が大きい

生理に伴う心身の不調の感じ方が人によって異なります。
また、年齢によってもホルモンの分泌量は変化するため、加齢とともに症状が変わってくる方もいます。
同じ女性でも求められる対応が異なる点に注意しましょう。

3.生理が重いとき、放っておくと良くない場合も…

生理が重くなる原因として、子宮筋腫や子宮内膜症といった病気が隠れている可能性があります。
これらは進行する病気であり、早期発見、早期治療が良いとされています。
生理現象だからと軽く考えず、症状が重い場合は早めに適切な医療機関に相談するのがよいでしょう。

まとめ

あらゆる職種で女性の従業員比率は上昇傾向です。
少なくない女性が生理の症状に悩まされている現状を踏まえると、企業としても適切な対応が求められます。
個々の違いを理解し人間関係を円滑にすることは、当事者だけでなく企業全体の利益に繋がると考えられます。

参考文献
1.厚生労働省.女性ホルモンとうまく付き合っていくには?~増える月経トラブルとその対処法を基礎から知ろう~ 
2.厚生労働省.健康経営優良法人制度
3.厚生労働省.「健康経営優良法人2023」認定法人が決定しました!
4.厚生労働省.健康経営における女性の健康の取り組みについて
5.厚生労働省. 働く女性と生理休暇について
6.厚生労働省. 「『生理の貧困』が女性の心身の健康等に及ぼす影響に関する調査」の結果を公表します
7.NHK. 「生理の貧困」を調査 学生の約2割“生理用品 買うのに苦労”
8.Scottish Government. Access to free sanitary products: BRIA

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