神秘主義者の夢

「ヘラルボニー」

一度その名称を覚えてしまえば、何度もあえて口にしたくなるような独特の中毒性を帯びた言葉です。

障害のある作家が描くアートのもたらすインパクトは強く、どことなくやみつきになります。「ヘラルボニー」という名称とアール・ブリュットはその点で共通しているかもしれません。

2025年5月29日(木)、三井住友銀行東館1Fアース・ガーデン(住所:東京都千代田区丸の内1-3-2)にて、報道陣向けに「HERALBONY Art Prize 2025 Exhibition Presented by 東京建物|Brillia」先行展覧会が行われました。当日はグランプリ受賞作家、エヴリン・ポスティック氏もフランスより来日しています。

本記事では、記者会見の様子や、代表取締役である松田崇弥氏・松田文登氏への取材の結果などをレポートします。

<目次>

情熱的に語る松田崇弥氏・松田文登氏とグランプリ受賞作家

グランプリ受賞作家のエヴリン・ポスティック氏

松田崇弥氏・松田文登氏には4歳離れた兄がいます。知的障害を伴う自閉症である兄。「兄を幸せにしたい」「障害に対する社会のイメージを変えたい」そういった思いがヘラルボニーの原点にはあります。

「作家の幸せをヒアリングさせてもらって、それを受けて本気で応援していく会社。原画の形で伝えていく場合もあるでしょうし、企業とのコラボ、展示会、ファッションといったこともあるでしょう。いろんな形で作家の生き方そのものを肯定して、圧倒的に応援していきたい」

実際に2024年度の受賞作家たちは、タイ訪問や数々の企業とコラボするなど、すでにアーティストとしてのキャリアをスタートさせています。今年度の応募作品数は2,650作品。応募者数もアーティストの国籍も昨年度より大幅に増加・多様化しました。

グランプリ受賞作家のエヴリン・ポスティック氏が壇上に招かれました。日本へのオマージュとして、濃い緑の着物生地を用いた洋服を身にまとい、その透明感のある美しい瞳に、思わず息を呑みます。はにかむように微笑みながら、ゆったりとしたフランス語が口をついて出ると、感動的な雰囲気に会場が包まれました。

今回応募した理由について問われると、「ヘラルボニーからの『応募しませんか』というお誘いメールをいただいたのがきっかけです」と率直に答え、会場からは笑いが起こりました。

「いろいろとヘラルボニーのことを調べて、頑張って応募しましたが、このような賞をいただけるとは夢にも思っていませんでした。本当に本当に嬉しくて、とても幸せです。今でも信じられません」と、喜びを語りました。

挑戦してみたいことについて問われると、ポスティック氏は「制作を続けていきたいです。グランプリをいただいて、勇気をもらえました。日本の美しい風景を心に、引き続きフランスのリヨンで制作を続けます」と語りました。

審査員によるクロストークでは、クラウス・メッヘライン氏(ドイツ)による言葉が印象的でした。

「忘れてはならないことは、アートとは『なにかを表現したい、なにかを発表したい』という個人のニーズが出発点です。その生み出されたものに呼応するオーディエンスを紹介していく。世界全体でうねりを生み出していく。それがキュレーターの役目だと考えています」

松田氏両名から障害のある人へメッセージ

ヘラルボニー・アート・プライズ2025展覧会の作品

松田崇弥氏・松田文登氏にご都合を調整いただき、個別にお話を伺う機会もいただけました。

――アートプライズ2025展覧会によって、障害のある人にどういったメッセージを送りたいですか

障害のある人だけというわけでもないですが、僕たちはプラットフォーマーになりたいと思っています。障害があると、実力があったとしても実力どおりに評価されないことって多いと感じています。アートプライズでは素晴らしい審査員の方々が、素敵だと思った作品をちゃんと評価している。この展覧会を起点に、実力が実力どおりに評価されるフェアな土壌をつくっていきたい(崇弥氏)

――アートプライズ2025展覧会で鑑賞することによって、「自分もなにかつくってみたい」と思う人も多いと思います。なにかアドバイスはありますか

アドバイスなんておこがましい、とんでもないです。強いて言うなら、この展覧会では本能から湧き出るような、心の内側からの発露が感じられる作品たちが数多くあると思うので。たとえば「自分はどういう発露ができるだろう」とか、「自分が本当に魂を込めて描くとしたら、それはどんなものなんだろう」とか創造性を膨らませることでしょうか(崇弥氏)

想像もしていなかった自分に出会えるというのもひとつあると思います。当初は兄の幸せを願って会社をスタートさせています。兄の幸せをつくりたいと願って、結果として社会の障害のある人たちの幸せをつくっていけたらいいなと。展覧会にきてくれた方、あなたがその一人なのかもしれない(文登氏)

ヘラルボニー・アート・プライズ2025展覧会は2025年5月31日(土)より6月14日(土)まで、三井住友銀行東館1階アース・ガーデンにて開催しています。(会期中無休、入場無料)

延岡佑里子パラレルワーカー

投稿者プロフィール

会社員、行政書士、ライターのパラレルワーカー。ASD当事者。働くことが大好きです。
趣味は歴史、ボカロ、英語学習です。

この著者の最新の記事

関連記事

コメントは利用できません。

最近のおすすめ記事

  1. 首相官
    半導体メモリー大手のキオクシアと米サンディスクのトップが8月27日に首相官邸を訪問し、高市早苗首相に…
  2. 利益14%減のココイチ、消える外国人材
    外食業界が人手不足に苦しんでいます。飲食業界では、慢性的な人手不足と人件費高騰もあり、外国人労働者を…
  3. ロシアの侵攻から4年が経過したウクライナの国旗
    ロシアのプーチン政権によるウクライナ侵攻は、2026年2月24日で開始から丸4年。犠牲者の数は増え続…

おすすめ記事

  1. 受刑者の食事に関するインタビューで給食の様子について話す宮城刑務所の管理栄養士さん

    2024-10-30

    受刑者は何を食べている?宮城刑務所の管理栄養士に聞く給食の様子

    刑務所の食事というと「ムショ飯」や「クサい飯」といった言葉があるため、良くないイメージを持つ方もいる…
  2. 第38回月形矯正展(2025年)

    2025-10-27

    月形刑務所で年に一度のイベント「月形矯正展」施設見学やヒーローショーなど見どころが満載!

    「月形矯正展」は年に一度、北海道にある月形刑務所が主催のイベントで、2025年で38回目。毎年、さま…
  3. ひょうご矯正展 神戸刑務所の 地域共生の想い

    2025-12-24

    ひょうご矯正展が伝える、神戸刑務所の地域共生の想い

    「ひょうご矯正展」は年に1回、神戸刑務所が主催するイベントです。2025年で45回目を迎え、矯正行政…

2026年度矯正展まとめ

2026年度 矯正展まとめ

【結果】コンテスト

【結果発表】ライティングコンテスト企画2025年9-10月(大阪・関西万博 第4回)

アーカイブ

ページ上部へ戻る