中低所得者の負担軽減へ 高市首相、給付付き税額控除の制度設計に向け「国民会議」1月中に設置表明

中低所得者の負担軽減へ 高市首相、給付付き税額控除の制度設計に向け「国民会議」1月中に設置表明

高市早苗首相は2026年1月5日、三重県伊勢市で行った年頭記者会見において、税と社会保障の一体改革について議論する超党派の「国民会議」を1月中に立ち上げると表明しました。この会議では、中低所得者に税控除と給付を同時に実施する「給付付き税額控除」の制度設計が主要テーマとなります。

給付付き税額控除とは、所得税額から一定額を控除し、控除額が税額を上回って引き切れない場合には、その差額を現金給付として支給する二段構えの仕組みです。例えば、税額控除が5万円で実際の所得税が3万円だった場合、残りの2万円が現金で給付されることになります。この制度により、元々所得税がかかっていない低所得者層にも支援が届くため、税・社会保障制度における逆進性の緩和が期待されています。

高市首相は会見で「税・社会保険料負担で苦しむ中低所得者の負担を軽減し、所得に応じて手取りが増えるようにする」と意欲を示し、「与野党の垣根を越え、有識者の英知を集めて議論し、結論を得ていきたい」と述べました。立憲民主党の野田佳彦代表も同日、「政府と与野党で共同運営する会議体が望ましい。議論するテーマの順番も含めて整理されたなら、参加したい」との考えを示し、与野党を超えた協力体制が整いつつあります。

この制度設計の議論は、2025年9月19日に自民党・公明党・立憲民主党の3党党首会談で新たな協議体設置に合意したことが発端となっており、11月27日には自民党、日本維新の会、立憲民主党、公明党の4党政調会長が会談し、実務者レベルでの協議開始を確認していました。木原稔官房長官も2025年12月24日の記者会見で「税と社会保険料の負担で困難な状況にある中低所得者を重点的に支援するためにも、早急に制度化が求められる」と発言し、政府全体として制度導入に前向きな姿勢を示しています。

給付付き税額控除の導入は、与野党間で幅広く支持されています。立憲民主党は消費税の逆進性を緩和し低所得層の生活を支えるという観点から、国民民主党は働き控えを緩和するという観点から、それぞれこの制度を支持してきました。制度設計次第では、働いて所得が増えるほど給付額や税控除額が増える仕組みにすることで、勤労意欲を高め経済の供給力を高めることも可能になるとされています。

日本で議論されている給付付き税額控除のモデルの一つとされているのが、1975年に米国で導入された勤労所得税額控除(EITC)です。勤労所得の増加に応じて税額控除を与え、税額から控除し切れない額については給付を行うこの制度は、2021年にはコロナ禍の影響もあり、受給数が3,100万件、総額は約7兆円以上に達し、失業や収入減に苦しむ層を即座に支えました。

一方で、課題も指摘されています。給付付き税額控除の導入には、収入や資産の正確な把握が不可欠であり、行政の事務負担増加や既存の所得控除制度との調整が必要となります。また、財源確保も重要な論点であり、医療保険制度の見直しや超富裕層へのミニマムタックスの拡充などが選択肢として挙げられています。

高市首相は1月11日放送のNHK「日曜討論」においても、給付付き税額控除の制度設計を急ぐ考えを改めて示しました。また、1月9日の政府与党連絡会議では「給付付き税額控除の制度設計を含めた社会保障と税の一体改革について、スピード感を持って検討を進めていきたい」と述べ、23日召集予定の通常国会での議論加速を目指す姿勢を明確にしています。

年末に実施された各種物価高対策や、2026年度与党税制改正大綱に盛り込まれた178万円までの「年収の壁」引き上げなどは、物価高への短期的な対応策ですが、給付付き税額控除はより抜本的な対策として位置づけられています。今後、国民会議での議論を通じて、中低所得者の生活を実質的に支える制度設計が進められることが期待されます。

制度設計の鍵は財源確保と事務負担

給付付き税額控除の実現に向けた最大の課題は、財源確保と行政の事務負担です。野村総合研究所のエコノミストは「財源確保が難しくなるような制度設計を避けることが重要」と指摘しており、医療保険制度の見直しや超富裕層への課税強化などが財源候補として挙げられています。

また、制度導入により、数多く存在する所得控除制度の簡素化が伴う可能性もあります。現行の複雑な控除制度は行政の事務負担を高め、働く意欲を削ぐなどの課題があるため、給付付き税額控除の導入を機に、税・社会保障制度全体の抜本的な見直しが求められています。

制度設計においては、税控除や給付額を調整することで、特定の所得水準に達すると手取りが減る「年収の壁」を解消することが可能となります。さらに、一定の所得水準までは働いて所得が増えるほど給付額や税控除額が増える仕組みにすることで、勤労意欲を高め、日本経済の供給力を強化することも検討されるべきとされています。

国民会議では、立憲民主党が提案する「先に現金を一律給付し、その後所得に応じて課税で調整する方式」など、複数の制度設計案が議論される見通しです。1月中の国民会議設置により、2026年夏頃までに中間整理を行い、その後具体案をまとめる方針が示されています。中低所得者の生活を守るとともに、働く意欲を高める新たな税・社会保障制度の構築が、今後の日本の財政政策における重要な転換点となります。

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