【医師の論文解説】朝ごはん抜きは成績に影響するか?朝食抜きと成績の関係

【医師の論文解説】 朝ごはん抜きは 成績に影響するか? 朝食抜きと成績の関係

私たちが普段何気なく食べている朝ごはんは、実は子どもの学力に関係しているのではないか?

以前からこのような疑問に対して、答えを出すための研究は行われてきました。しかし、これらの研究は研究が実施された地域、対象者の年齢、評価の方法が異なります。本当に、朝食を食べることが学業成績に影響するのかという問いについて、統一したひとつの答えをまとめることは、まだ完全にできているとはいえない状況です。

そこで、その問いに答えを出すために行われた研究があります。今回は、既存の複数の研究を統合して分析する「メタアナリシス」という手法を用いて、朝食を抜くことが学業の成績にどのような影響を与えるのかを調べた論文を紹介します。

論文

Takahiro Seura,Riko Nagai,Sara Yamazaki,et al.The Impact of Skipping Breakfast on Academic Performance in Youths: A Meta-Analysis of Observational Studies.J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo).2025;71(4):339-348.

北海道教育大学の瀬浦崇博氏らによる、基礎栄養学および応用栄養学のあらゆる側面に関する研究論文、速報、総説を掲載する学術誌である、Nutrition Research誌2025年9月号の報告です。

朝食には脳の働きを活性化させて集中力や記憶力を高める効果があるのか?

朝食を食べる人の割合は減少傾向で、世界的に朝食を抜く人は増えています。特に、子どもや若者に朝食を抜く人が多い傾向にあり、日本では中高生を中心に朝食欠食が問題視されています。

学校に通う青少年の約半数(41.3%)が朝食を抜いており、その主な理由は時間がないこと、朝に食欲がないこと、体重増加への懸念でした。しかし、朝食は1日のエネルギー補給だけでなく、脳の働きを活性化させて集中力や記憶力を高める効果があると考えられています。学校での授業は、朝から行われるため、朝の栄養摂取が不足すると、学業の成績に影響するのではないかと考えられてきました。

そこで、これまで色々な研究が行われてきたのですが、研究結果は必ずしも一貫しているわけではなく、「本当に朝食欠食が学業成績に影響するのか」について、明確な答えが出ていない状態でした。

この研究では、これまでに発表された複数の研究をまとめて分析することにより、子どもや若者の学業成績と朝食欠食の関係を解き明かすことを目標として実施されました。

3-18歳の朝食と学業成績との関連性について研究

研究チームは、過去に発表された研究を幅広く探すために、複数の学術データベースを検索しました。検索したデータベースには、医学論文のデータベースとして有名なPubmedなどを含みました。これらのデータベースで、“breakfast skipping” “academic performance” “students” “children”といったキーワードの組み合わせを使って、朝食の習慣と学力の関係を調べた研究を漏れのないように調べました。

調べた論文のなかから、今回の研究に組み入れる論文を選定しました。選定の条件は以下の通りです。

  1. 対象が子ども・青少年(おおむね3−18歳)
  2. 朝食の摂取習慣を評価していること
  3. 学業成績を何らかの客観的な指標で評価していること
  4. 観察研究であること
  5. 必要なデータが揃った研究であること

条件を満たした研究を合わせて、研究間のばらつきを評価して、解析を行いました。

「朝食を頻繁に抜く子どもや若者は、朝食を日常的に食べている若者と比較して学業成績が低くなる傾向が2倍ある」

学校に通う青少年の約半数(41.3%)が朝食を抜いており、その主な理由は時間がないこと、朝食欲がないこと、体重増加への懸念でした

統合解析の結果、「朝食を頻繁に抜く子どもや若者は、朝食を日常的に食べている若者と比較して学業成績が低くなる傾向がある」(OR=2.08(95%CI:1.82-2.37))。ということが示されました。それもわずかな差ではなく、明らかな有意差が出たのです。学業成績の評価報告が異なる研究を統合しても、同様の傾向が確認されており、朝食欠食と成績不振の関連は一貫して見られました。さらに、年齢や地域に関わらず似たような傾向が見られたことから、この関連は幅広い背景を持つ若者に共通した現象である可能性が高いと考えられます。

この研究をもって「朝食を食べないことが直接的に成績に影響する」とまでは断言できませんが、朝食を食べないことが成績不振に関連していることは、確かであると結論づけられました。

朝食を抜くことは単に生活リズムが乱れるというだけでなく、学習に必要な集中力や認知機能に影響を与える

今回の研究から、朝食を抜くことは単に生活リズムが乱れるというだけでなく、学習に必要な集中力や認知機能に影響を与え、それが学業成績に現れる可能性があることが示されました。

朝食を食べることで、血糖値が安定して脳が働くためのエネルギーを確保することができるため、集中力が上がることが考えられます。また、朝食を毎日食べることで、生活習慣が整いやすく、家庭環境そのものが、学習に良い影響を与えているという可能性も示唆されています。

この研究は、子どもや若者の成長に、朝食を食べる習慣が重要な役割を果たすということを改めて示しました。

【児童精神科医から】私たちの体には約25時間周期の体内時計が備わっており、これを24時間のリズムに毎日合わせる必要があります

これまでの報告で、朝食は日内時計をリセットするうえで、非常に重要な役割を担っていることが分かっています。私たちの体には、約25時間周期の体内時計が備わっており、これを24時間のリズムに毎日合わせる必要があります。この調整を「リセット」と呼び、主に朝の光と朝食によって行われます

今回の研究では、朝食を抜くことが、子どもや若者の学業成績に悪い影響を与えることを示唆しました。

もちろん成績を決める要因は食事だけでなく、家庭環境や睡眠などの様々な要素が絡んできます。しかし、毎日の習慣のなかで取り入れやすく、改善しやすいのが朝食を食べるという取り組みです。学業成績だけでなく、健康な生活を送るためにも朝食のあり方を考えてみましょう。

秋谷進医師

投稿者プロフィール

小児科医・児童精神科医・救命救急士
たちばな台クリニック小児科勤務

1992年、桐蔭学園高等学校卒業。1999年、金沢医科大学卒。
金沢医科大学研修医、国立小児病院小児神経科、獨協医科大学越谷病院小児科、児玉中央クリニック児童精神科、三愛会総合病院小児科、東京西徳洲会病院小児医療センターを経て現職。
専門は小児神経学、児童精神科学。

この著者の最新の記事

関連記事

コメントは利用できません。

最近のおすすめ記事

  1. USJ、隣接市有地の活用を大阪市と協議 2028年めどに敷地拡張へ
    大阪市は9月1日、テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」に隣接する市有地について…
  2. メタのSNS設計めぐる米州訴訟が審理入り 若年層への影響と安全対策が焦点
    米カリフォルニア州オークランドの連邦地裁で8月18日、米IT大手メタ・プラットフォームズが運営するフ…
  3. 興収100億円へ 初の「ちいかわ」劇場版、公開1ヶ月で到達
    アニメ映画「映画ちいかわ 人魚の島のひみつ」が、公開から30日間で興行収入100億円を突破しました。…

おすすめ記事

  1. 令和7年度関東ブロック再犯防止シンポジウム集合写真

    2026-4-8

    「令和7年度関東ブロック再犯防止シンポジウム」が開催。元非行少年や高齢受刑者を孤立から救う地域の役割とは

    2月14日、「令和7年度関東ブロック再犯防止シンポジウム」が、早稲田大学の国際会議場で開催。元当事者…
  2. 2023年9月2日~3日の2日間にわたって『第8回 防災フェア』が開催されたお台場

    2023-9-9

    防災準備はバッチリ?『第8回 防災フェア in お台場』から学ぼう

    2023年9月2日(土)、3日(日)の2日間、お台場にて『第8回 防災フェア』が開催。関東大震災が起…
  3. 法務省

    2025-11-24

    「街・夢・みらい-まなびでつながる更生保護シンポジウム」グランドフィナーレが開催。“まなび”が広げる共生の力

    全国5都市を巡って開催された「街・夢・みらい -まなびでつながる更生保護シンポジウム-」。自治体や企…

2026年度矯正展まとめ

2026年度 矯正展まとめ

【結果】コンテスト

【結果発表】ライティングコンテスト企画2025年9-10月(大阪・関西万博 第4回)

アーカイブ

ページ上部へ戻る