「ジェネリックにしますか?」と薬局で聞かれたことがあるかもしれません。
ジェネリック医薬品とは「後発医薬品」のことです。
本来医薬品は研究開発して臨床研究が行われた「先発医薬品」と、成分は同じでありながら特許出願から20年以上経過したことにより、同成分で他の会社が作る事ができる「後発医薬品」に分けられます。
日本では、同一成分でありながら安価に製造できるということで、医療費の高騰を抑制し、医療保険制度を守るため、後発医薬品の使用割合は79.24%(全国平均/2021年9月期)、薬剤費の構成割合では1.6兆円(16.0%)の規模にまでなっています。
実際、2023年4月現在では、処方箋に医師が「変更不可」の指示をしない限りは患者の同意の上で、薬剤師がジェネリック医薬品に変更できるようなルールにまでなってきています。
しかし、ジェネリック医薬品になるとメーカーもさまざまあり、見た目も大幅に変わることがあります。
すると、「今までの薬と違うけど、効果や安全性は一緒なの?」とご不安に思われる方もいるのも当然でしょう。
実際、ジェネリック医薬品とは何か。本当にジェネリック医薬品は効果や安全性に関して先発医薬品と同一なのでしょうか?
ジェネリック医薬品とは?
ジェネリック医薬品(後発医薬品)を厳密にいうと、「先発医薬品と同一の有効成分を同一量含む同一剤形の製剤で、用法用量も等しい医薬品」と定義されています。
特許の存続期間は一般的に出願から20年です。
その間、特許権者(通常は先発医薬品を研究開発した製造販売業者)が独占的に製造販売できる権利を有します。
しかし、特許期間の満了によって、国民の共有財産となるため、ジェネリック医薬品を製造販売できるようになります。
最初に売り出された薬が先発医薬品、別の製薬会社から後で売り出されるようになったものが後発医薬品といわれるというわけです。
一般的に研究開発に要する費用が低く抑えられることから、薬価が低く設定されています。
さらに、先発医薬品を改良して、味、大きさや剤型が工夫されることもあります。
ここではジェネリック医薬品の著しい成長を表にまとめました。
2009年 | 2011年 | 2013年 | 2015年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | |
後発品薬価収載品目数 | 8,312 | 8,176 | 9,339 | 9,716 | 9,877 | 10,065 | 10,934 | 11,207 | 11,170 |
後発品割合(数量ベース) | 35.8% | 39.9% | 46.9% | 56.2% | 65.8% | 72.6% | 76.7% | 78.3% | 79.0% |
では、実際ジェネリック医薬品はどのように作られるのでしょうか。
ジェネリック医薬品が作られるまで
ジェネリック医薬品といっても「同一成分だからよい」という安易なものではありません。
さまざまな試験を経てやっと承認されます。
例えば、
- 有効成分の純度や量が先発医薬品と同じであるか確認する試験
- 新薬と同じように体内で溶けるか確認する試験
- 新薬と同じ速さで同じ量の有効成分が体内に吸収されるか確認する試験
- 長期に保存しても問題ないか確認する試験
などです。
これらの試験を受けて、全ての試験をパスした医薬品だけが「後発医薬品」として承認されます。
ジェネリック医薬品は、新薬と異なる添加剤を使用する場合がありますが、医薬品に使用する添加剤はもともと前例があり、安全性が確認されている添加剤が使用されていますので、「添加剤が違うから心配」というわけではありません。
ジェネリック医薬品の誤差は許容されない?
では、ジェネリック医薬品の効果はまったく「先発医薬品」と同じなのでしょうか。
結論からいうと、「同一でない場合もある」というのが正しいです。
例えば、後発品が製造販売承認を得る際の条件は、「その薬の体内で吸収されたり、分解されたり、目的の効果を出す過程が先発品と80-125%同じであるということ(生物学的同等性試験)」とされています。
つまり20-25%の誤差が許容されることになりますね。
「20-25%も誤差があって大丈夫なのか?」と思いますよね。
実際には、多少血中濃度に誤差があっても問題がない薬が非常に多いです。
なぜかというと、有効でかつ安全な濃度の範囲が広いためです。
しかし、中には有効でかつ安全な濃度域が狭いタイプの薬があります。
例えば、一部のてんかん治療薬、免疫を抑制する薬、不整脈の薬などです。このような薬については、患者さんの肝腎機能や薬の飲み合わせなどで変動するために、診療の際に採血で薬の血中濃度を確認し効果と副作用を評価される場合があります。
その中で、日本小児神経学会・日本てんかん学会は抗てんかん薬のジェネリック医薬品への変更に関して以下のように注意喚起しています。
「てんかん発作治療における多くの抗てんかん薬は治療域が狭く、少量の変化で発作の再発や副作用が懸念される。もし先発医薬品と後発医薬品との間に治療的な差があれば、長く発作の抑制されている患者で急にこれらを入れ替えると、思わぬ発作の再発や副作用を発来することがありうる」
つまり、例えばてんかんの治療薬のような厳密な血中濃度を求められる場合は、先発医薬品からジェネリック医薬品への切替えの際には注意が必要で、複数の薬を一度に切り替えるといったことは避けた方が良いかもしれません。
ただし、治療をはじめるときからジェネリック医薬品を使用すれば問題はありませんし、発作が抑制されていない場合にも問題は少ないでしょう。
ジェネリック医薬品の品質管理は安心できるのか?
では、ジェネリック医薬品の品質管理は本当に「安心・安全」と言えるものなのでしょうか。
「ほとんどの場合『安心・安全』といえるが、例外は存在する」というのがおおむね正しい認識でしょう。
例えば、近年ジェネリック医薬品の問題が話題となった事件として「爪水虫の治療薬の薬物混入事件」があげられます。
同事件は、ジェネリック医薬品メーカーが製造した爪水虫の治療薬に睡眠導入剤の成分が混入されており、意識障害などの健康被害は150件を超え、死亡例も出ています。厚労省が認めた製造の手順やダブルチェック、品質検査が行われていなかったことで、ジェネリック医薬品の信用を落とす事態となりました。
前述の事例は定められた工程を遵守していないメーカー側の問題事例ですが、実際にメーカーがころころと変わったりすると患者さんも不安を感じると思います。
ここではジェネリック医薬品に関する問題点を表にまとめました。
報道で聞いたことがあるかもしれませんが、これら問題は社会問題とまでなっています。
品質管理不備 | 複数の後発品メーカーにおいて、製造管理・品質管理の不備による法違反が発覚し、行政処分が実施されている。原因として、過度の出荷優先の姿勢が指摘されているものがあるとされている。 |
供給不安 | 後発品の全品目のうち、約4割が出荷停止、限定出荷となっている。 |
低い採算性 | 原価率が8割を超えている後発品が約3割存在する。 |
そのような中で、先発医薬品メーカーとほとんど同等の条件で製造される「オーソライズドジェネリック(AG;Authorized Generic)」が注目されはじめています。
オーソライズドジェネリックとは通常、先発医薬品メーカーから許諾を得て後発品メーカーが製造した、先発医薬品と原薬、添加物や製造方法などが同一の医薬品のことをいいます。
包装も先発医薬品のデザインが踏襲される場合が多く、抵抗感が少ないかもしれません。
通常のジェネリック医薬品でも問題になることは少ないと思いますが、ジェネリック医薬品に不安を覚える方はぜひ「オーソライズドジェネリックをお願いします」と聞いてみてください。
ジェネリック医薬品についてよく知っている薬剤師さんでしたら、薬局できちんと対応してくれることでしょう。
ジェネリック医薬品についてのまとめ
ジェネリック医薬品は一概に危険ということではありません。
ですが、一部慎重に切替えた方が良い場合や、まれに添加剤に過敏な反応を示してしまう方もいらっしゃると思います。
自分の服用している薬が後発薬に切り替わって問題ないのか、製造メーカーについてなど、気になる方は主治医や薬局へ確認してみてくださいね。
参考文献:
1.厚生労働省. 後発医薬品産業の現状等について
2.厚生労働省. 医療費に関するデータの見える化について
3.厚生労働省. 保険者別の後発医薬品の使用割合(令和3年9月診療分)を公表します
4.日本小児神経学会、日本てんかん学会の提言
5.てんかん情報センター ホームページ
6.日本ジェネリック製薬協会 ホームページ
7.ミクスOnline「GE薬協 小林化工のイトラコナゾールに睡眠薬混入による死亡例でコメント」
8.厚生労働省.ジェネリック医薬品への疑問に答えます。ジェネリック医薬品Q&A