リーゼント刑事を突き動かす未解決事件への執念。26年目の逮捕劇と今でも追う逃亡犯

リーゼント刑事を突き動かす 未解決事件への執念 26年目の逮捕劇と 今でも追う逃亡犯

おはようさん。リーゼント刑事こと秋山です。

新年、あけましておめでとうございます。新しい一年が始まりました。朝の冷たい空気を吸い込みながら、ふと昔の現場の匂いを思い出すことがあります。

私はもう現役刑事ではありませんが、長く刑事をやっていたせいか、事件の話題になるとどうしても心がしゃんとするものです。年が明けても、事件のニュースを目にすると「これは何か裏がありそうだな」などと、頭の中ではつい「現場モード」が起動してしまいます。

<目次>

愛知県警の粘り強い捜査で、26年前の未解決事件を解決

捜査をする警察官の後ろ姿

2025年を振り返ると、社会を揺るがす出来事が多く、現職のころとは比べものにならないほどのスピードで世の中が動いていたように感じます。事件の内容も、昔のように「人間関係とお金」だけで片付けられるものだけでなく、技術や情報、時には「正義の解釈」そのものが関係していたように思います。世の中が便利になった分、トラブルも進化している…そんな皮肉な現実が透けて見える一年でした。

今年もまた、世の中は新しい一年を迎えました。事件が起きない年など存在しませんが、願わくば少しでも穏やかで、「人が人を傷つけるより、笑い合える場面が増える」年になってほしいものです。そんなありふれた願いを思いながら、この筆を取っております。

2025年は忘れられない出来事がありました。1999年11月に起きた「名古屋市西区主婦殺害事件」が解決に至ったのです。26年の長い年月を経て、2025年10月31日の夕方、被害者である夫の高羽悟さんの同級生だった安福久美子容疑者(69歳)が逮捕されました。

1999年11月13日、夫の高羽悟さんが仕事で出かけていた土曜日の日中、自宅にいた妻の奈美子さん(当時32歳)が息子の航平さん(当時2歳)の目の前で、首などを複数回刺されて殺害された事件です。

奇妙な巡り合わせなのか、引き寄せられたのか、私は安福容疑者が逮捕される約2カ月前の2025年9月2日、私が出演しているABEMAの「ABEMA的ニュースショー」の取材班と一緒に現場を訪れました。妻の奈美子さんが殺害された現場マンションを、夫の悟さんは手放すことなく、累計2,200万円を超える金額の家賃を払い続けておられました。

私は、逮捕の背景には「夫の悟さんの執念と、愛知県県警の地道な捜査」があったと実感しました。現場に出向いた際、「ひょっとしたら近々に犯人が逮捕されるかな」と即座に思いました。

なぜその時そう思ったかというと、2010年に時効が撤廃になり、そこから全国警察に重要未解決事件の再捜査班が出来ました。夫の悟さんも「最近になって愛知県警の本部捜査一課の班長が、小さいことでもどんどん聞いてくるようになった」と話しており、ある程度絞っていっているのではないかとそこで感じました。

今回の逮捕の決めては、現場に遺留された犯人の血液でした。今回の事件は5,000人の対象者を捜査し、その中で唾液のDNA提出拒否者を裏付け捜査をしながら犯人を絞っていきました。

当初、安福容疑者はDNA型鑑定試料の任意提出を拒否していました。しかしながら最近になって提出に応じ、2025年10月30日午後、西警察署に1人で出頭し、現場に残されていた血痕とDNA型が一致したため、逮捕されました。昨年8月以降、愛知県警から複数回事情聴取を受けていたことから捕まることを覚悟したのだと思います。

約26年前の痛ましい事件の解決へ導いてくれた愛知県警には、心から感謝とねぎらいの意を表します。もちろん早期解決が望ましいのですが、今回の犯人逮捕は、警察官としての専門性と人間性を両立させた冷静な判断と地道な捜査、丁寧な対応は、今後の事件解決の参考になる本当に素晴らしい行動だったと思います。

「おい小池!」日本一有名な指名手配犯を追い続けた11年

手錠

私が現役時代に、最も力を入れて捜査にあたったと言っても過言ではない事件が、2001年に発生した「徳島・淡路父子放火殺人事件」です。

2001年4月20日午後2時過ぎ、徳島市吉野本町4丁目の県営住宅で火災が発生。焼け跡からは松田優さん(当時66歳)の遺体が発見され、松田さんは頭を鈍器で殴られ、首を絞められていました。

その10時間後、今度は50㎞離れた兵庫県五色町(現在の洲本市)の雑草火災の現場から、同じ手口で殺害された松田浩史さん(当時38歳)の遺体が見つかり、驚いたことに2人の被害者は親子でした。

父子は殺害された後、証拠隠滅のために燃やされたことが捜査で判明し、さらに4冊の貯金通帳が奪われたこともわかりました。それにより、松田さん親子とパチンコを通じた知人である小池俊一(当時44歳)を殺人放火で指名手配しました。

この頃私は、この事件の犯人逮捕への呼びかけのため、多数のテレビに出演しておりました。みなさんには『おい小池!』で聞き覚えがあるかと思います。当時「日本一有名な指名手配犯」と呼ばれていました。

しなしながら、小池容疑者は2012年10月19日、岡山県岡山市北区にある当時同居していた女性のマンションのトイレで倒れているのを発見され、逮捕に至ることはできませんでした。徳島県警は被害者死亡のまま書類送検。

約11年、必死に捜査してきました。ほんまに自分の手で逮捕したかった。容疑者逮捕と容疑者死亡では天と地の差があります。遺族の方も「10年以上捜査してくれた警察の苦労はわかるが、生きて捕まらず複雑な気持ちだ。法で裁いてほしかった」と言葉を残されており、私たちの手で解決すべき事件であり、結果が出せなかった悔しさは今でも残っております。

その悔しさから、いま現在も私は現役を退いても、日本国民が安全で安心できる社会になるよう少しでも貢献したく、未解決事件には特に力を注いでおります。

別府ひき逃げ殺人事件・八田與一容疑者の捜査に注力

警察へ電話するスマートフォン

今、私が一番力を注いでいるのが『大分別府ひき逃げ殺人事件』です。2022年6月29日、大分県別府市の県道で、八田與一容疑者が運転する軽乗用車が、制限速度を大幅に超えるスピードで停車中のバイクに追突し、大学生2人を死傷させた事件です。

事件発生後、八田容疑者は、現場に車を乗り捨てて裸足で逃走しました。この行動や八田容疑者の性格から、私は「絶対に八田與一は生きている!」と過去の捜査経験から確信しています。

当初は道路交通法違反(ひき逃げ)の容疑で捜査されていましたが、被害者遺族の訴えや、約8万人の署名を受け、2025年6月には殺人と殺人未遂の容疑が追加されました。これによりこの事件の時効はなくなりました。

今も遺族の方と毎日のように連絡を取り合い、遺族の会「別府を願う会」、私のホームページ(https://www.ri-zento-deka.com/)に毎日のように情報提供をいただいております。

濃厚な情報をいただいた際は、大分県警と連携し捜査に協力しているのですが、犯人逮捕にいたっておりません。八田容疑者は警察庁が指定している「重要指名手配犯」です。この事件に関しては捜査特別報奨金300万円と、遺族の会から懸賞金として500万円がつけられております。

私はどこに行く時でも、遺族の会が作成した八田容疑者を探す手がかりとなる名刺サイズのカードを必ず持参し、出会う方々に協力を願い配っております。そのカードをこちらにも添付します。

『大分別府ひき逃げ殺人事件』八田與一容疑者の懸賞金
『大分別府ひき逃げ殺人事件』八田與一容疑者の画像

QRコードから音声も聴けるので、是非みなさんのお近くに八田與一らしき人がいましたら情報提供よろしくお願いします。

最後に、事件は年月とともに記憶から薄れていきます。しかし奪われた命の重さや、遺われた人の苦しみが消えることはありません。未解決事件に向き合い続けることは、真実を未来へつなぐためでもあります。

〜未解決事件のご遺族のみなさまへ〜
長い年月、答えの出ない現実と向き合い続けてこられたみなさまの歩みは、決して当たり前の行動ではありません。苦しみの中でも真実を求め続ける姿勢に心から敬意を表します。どうか希望を手放さず、これからも前を向いて歩んでください。

秋山博康犯罪コメンテーター

投稿者プロフィール

元徳島県警捜査一課警部。通称は「リーゼント刑事」
凶悪犯罪の最前線の所轄刑事課を中心に31年間刑事として捜査を担当。
「おい!小池」で有名な殺人指名手配小池事件に長らく携わり注目され、警察特番で「リーゼント刑事」との呼称で度々登場した。警察人生42年、2021年3月に定年退職し、現在は犯罪コメンテーターとしてメディア出演やYouTube配信、講演会活動など、精力的に活動中。

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