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子育てに関して調べると、必ず出てくるのが「アドラー心理学」。
最近、非常に注目されていて、子育てで調べるとアドラー心理学に関する書籍がたくさん出てきます。
しかし、一方で「アドラーって誰?」と、アドラー心理学の名前は知っているけど、詳しくはよくわからないという方も多いのではないでしょうか。
今回は、「アドラー心理学という単語は知っているけど、どう子育てに結びつくのかよくわからない」という人のために、アドラー心理学の基本的な部分と子育てとの関係性について解説していきます。
アドラー心理学を作った「アルフレッド・アドラー」
アルフレッド・アドラーは、1870年にウィーン郊外で生まれた医師であり精神分析家です。
彼の家族はユダヤ人の中産階級でした。
アドラーは、子どもの頃は病気がちで、弟が亡くなった経験もあり、医師になることを決意します。
彼は医学を学び、特に貧しい人々を助けることに力を注ぎました。
当時、アドラーは多くの病気が社会的な問題から生じると信じていました。
例えば、彼は新しい労働法の必要性を主張し、仕立屋の健康を守るための法律を提案するなど「社会から健康を変えよう」という動きが見られます。
アドラーは「人間の行動は社会的な要因や環境に大きく影響される」と考えていたので、どのように社会を変えるかを意識づけることが(特に精神的な)健康を保つのにも重要だと考えていたのです。
そして、アドラーは、人々が劣等感を感じ、それを克服するために努力することが行動の主な動機であり、劣等感を克服することが成長につながると信じていました。
これが「アドラー心理学」です。
このようなアドラーの考えは、「個人心理学」として知られるようになりました。
彼は、夢を通じて無意識の目標を理解し、人々が自分の選択についての理解を助けることを重視しました。
そして、第一次世界大戦後、アドラーの教えは広く受け入れられ、特にオーストリアで社会改革が進みました。
彼は「成長」に主眼をおいていましたから、多くの児童指導クリニックを設立し、無料の教育療法を提供しました。
しかし、ナチスの台頭とともにアドラーの人気は低下しました。
それでも彼の研究は、予防医学や心理学の多くの分野に影響を与え続けています。
アドラー心理学はどのように応用されているか
このように「個人心理学」として広く知られ、いまだ根強い人気を持つアドラー心理学ですが、どのように子育てに利用されているのでしょうか。
アドラー心理学では以下の考え方を基盤として子育てに応用されています。
①劣等感の克服と自己肯定感の向上が成長につながる
アドラーは、劣等感が人間の行動に、強い影響を与えると考えました。
そのため、子どもが自分の能力や価値に対して劣等感を持たないよう、適切なフィードバックやサポートを行うことが子育てにとって大切だと考えています。
例えば、子どもが勉強を苦手にし、他の子どもの成績と比べて劣っていた場合、あなたならどのように声をかけますか?
「なんで勉強できないの」「勉強を他の子よりしていなかったからだ」と責めていないでしょうか。
それでは劣等感をますます助長させてしまいます。
アドラー心理学では、劣等感の克服こそが子育ての鍵だと考えているので、逆にポジティブな面を見つけます。
また出来なかったところに関しても、逆手に取って劣等感を抱かせないような声掛けをするのです。
例えば、「○○という問題ができて素晴らしいね」「ここが出来なかったから、出来るようになったら、もっともっと頭がよくなるね!」などです。
子どもは自分の個性を認めてもらったと感じ、自己肯定感が高まること。
これ自体がアドラー心理学では「成長」と呼ぶのです。
②社会的関心を育成させる
同時に、アドラーは社会的関心(他者への配慮や協力)が大切だと考えました。
子どもが他人との良好な関係を築けるよう、家族や学校でのグループ活動を通じて、コミュニティの一員としての役割を理解し、他者と協力する経験を持つことが重要だと考えていたのですね。
例えば、アドラー心理学では社会的関心を育成させるために、食事を一緒に作る機会を設けたりします。
そして、家族で一緒に食事を作る時、子どもにサラダを作る役割を与えたりするのです。
みんなで協力して、一つの目標を達成する経験を通じて、子どもは他者と協力することの大切さを学びます。
また、親は「みんなが助け合うと、食事の準備が早く終わって楽しいね」と伝えることで、「社会の一員として貢献できる楽しさ」を学んでもらうのです。
③ポジティブな親子関係を形成する
アドラー心理学が「個人心理学」と呼ばれている通り、子どもを一人の個人として尊重し、信頼することがアドラー心理学の基本です。
子どもに対して一貫した信頼と尊重の態度を持つことで、健全な親子関係が築かれると考えているのです。
アドラー心理学では、親も子ども対等です。
ただ、子どもは未成熟なだけです。
例えば、アドラー心理学では子どもが学校で友達とケンカをした時、親は「そのことでどんな気持ちだったの?」と子どもの感情に寄り添います。
「ケンカなんてするものではないでしょ!」と頭ごなしには叱りつけません。
その後、「どうすれば次はもっと上手くいくと思う?」と一緒に考えることで、子どもを尊重しながら対話を進めます。
なぜ今「アドラー心理学」が重要視されているのか?
では、なぜある意味「昔」とも呼べるアドラー心理学が、今声高に叫ばれているのでしょうか。
一言でいうと、「個人心理学」とも言えるアドラー心理学の思想が、現代のソーシャルネットワークにあっているからです。
現代では、SNSなどでより個人が強調され、有名人の情報や周りの憧れの人の情報を簡単に入手することができます。
そのため、容易に劣等感を抱きやすくなっています。
また、オンライン授業をはじめとしたネットを中心とする社会が強くなりすぎて、個々人のつながりが希薄化しやすくなっています。
アドラー心理学は、「社会的なつながり」「劣等感の克服」を軸として、現代社会における子育てに大きな疑問を投げかけます。
だからこそ、今アドラー心理学が重要視され始めているのです。
アドラー心理学には、今の社会だからこそ学ぶべき様々な知恵が隠されています。
ぜひ子育てをする方も、アドラー心理学の書籍を手にとってみてください。
きっと子育てに役立つ「ヒント」を見つけることができるでしょう。
参照
1.Revitalizing Alfred Adler: An Echo for Equality)
2.The Evolution of Adler’s Individual Psychology: Toward a transcultural framework for counselling practice)