
米軍が2月末に実施したイランへの大規模攻撃で、米新興AI企業アンソロピックが開発した対話型生成AI「クロード」が作戦支援に使われていたと報じられています。アンソロピックは、完全自律型兵器や大規模な国内監視への利用を認めない立場から、米国防総省との契約条件の見直しを巡って対立を深めており、トランプ米大統領が全ての連邦政府機関に対し同社AIの使用停止を指示した直後でした。
こうした中でも、クロードは米軍の機密ネットワークで利用される唯一の生成AIとされ、中東地域を管轄する米中央軍など各地の司令部で情報分析や標的選定、戦闘シナリオのシミュレーションに活用されていたと伝えられています。 AI企業側が軍事利用への制約を打ち出す一方で、実際の軍事作戦では高度なAIが不可欠なインフラとして組み込まれている実態が浮き彫りになった形です。
アンソロピックは2月下旬、クロードについて、米国民への大規模な国内監視と完全自律型兵器での利用は認めないとし、AIの軍事利用の拡大を求める国防総省の要請を拒否していました。 これに対しトランプ大統領は、自身のX(旧ツイッター)投稿などを通じて同社を「急進左派企業」と批判し、今後連邦政府として取引しない方針を示したと報じられています。 しかし共同通信などによると、そのわずか数時間から1日程度後に始まったイラン攻撃においても、米中央軍はクロードを情報の分析や標的の特定、戦闘シミュレーションに用いていたということです。
この攻撃は、米軍とイスラエル軍による合同作戦として2月28日(米東部時間)に開始され、イランの軍事施設などを標的としたとされています。一部報道では、作戦にあたり米中央情報局(CIA)が収集した膨大な傍受データの解析にもクロードが用いられた可能性が指摘されており、米情報機関や軍で同AIが幅広く利用されてきた実態も示されています。
イラン核開発を巡っては、トランプ大統領が今年1月に、イランが核計画を再開すれば「再び攻撃する」と警告しており、今回の作戦はそうした強硬姿勢の延長線上にあるとの見方も出ています。
AI軍事利用と統制を巡る攻防 安全性重視の企業と「AIファースト」掲げる米軍
今回の一連の動きは、最先端の生成AIが軍事作戦の中枢に組み込まれつつある現実と、その統制を巡る攻防を象徴しているといえます。米国防総省は、中国との技術競争を背景に、戦闘や情報分析、兵站などでAIの活用を前提とする「AI加速戦略」「AIファースト」方針を打ち出し、グーグルの「Gemini」やxAIの「Grok」など民間AIを軍ネットワークに統合する構想も進めています。
一方、アンソロピックはAI安全性を重視し、完全自律型兵器への利用や、市民に対する広範な監視用途には明確な制限を設ける立場で、こうした企業側の倫理基準と、軍が求める柔軟な運用とのギャップが露呈しています。
アンソロピックに同調する動きが他のAI企業にも広がっているとの報道もあり、オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)も、自社サービスの軍事利用には慎重な姿勢を示していると報じられています。他方、実際の戦場では、今回のイラン攻撃に加え、2026年1月に行われたベネズエラのマドゥロ大統領拘束作戦でもクロードが作戦ルートのシミュレーションなどに使われたとされ、AIはすでに軍事オペレーションの「不可欠なツール」として定着しつつあります。
AIの軍事利用拡大を前提とする米軍と、安全性や倫理的制約を重視する民間企業との間で、今後どのようなルール作りと統制の枠組みが構築されるのかが、国際社会全体の安全保障を左右する新たな焦点となっています。












-300x169.jpg)