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- ある日うちの子が逮捕された!?少年鑑別所をめぐる攻防

とかく世間からバッシングを受けることも多い少年法。しかし、その少年法が適用される少年事件において、どのようなことが行われているか知っている人は少ない。本記事では、個人情報に配慮して事案を抽象化させながら、特に子供が逮捕されたという、親から見ても危機度の高い場面の実態を、少年事件にかかわる弁護士目線で紹介する。
前回の記事では、最初の72時間、特に冤罪を前提にした、勾留が決まるまでの攻防を中心に描いた。今回は、勾留が決まってしまった前提での場面を紹介していきたいと思う。
<目次>
少年は嘘をつく?

前作でも言及したが、少年は意外と嘘をつく。自分の行ってしまったことの影響度や、リスクの大小を図れないからこそ、余計にささいな事実を隠してしまったり、誤魔化してしまったりする。
大人に対しても、敵味方などの区別なく、「大人」という抽象的な集合として認識しているから、味方であるはずの弁護士にも、時に事実を隠してしまう。理由も、「怒られるかも」という極めて子供っぽい、大したことのない理由であることも多い。
少年は、嘘をつくつもりがなくても、嘘をついてしまうこともある。年齢が低いほど、子供は大人に対して迎合的で、誘導を受け入れてしまう。警察や弁護士が先入観に基づいてこうだったのではないかと話しかけ、少年もそのように思い込み、「うん」「はい」といった回答をする。実際に記憶が変わってしまっていることもあれば、認めないと怒られるかもしれないなどと恐れている場合もある。
少年は、嘘まではつかずとも事実を隠すことがある。理由は、もうこれまで述べたのと同様だ。とにかく、本当の事実、気持ちを簡単に聞けるなどとは思わない方が良い。
捕まっている少年であれば、2~3回話すなかでようやく全体像と正確な事実が出てくると思っておいた方が良い。一度勾留が決まってしまうと、基本的には20日は警察署にいることが多い。その間に、少年と、本音の話をしていくのが弁護士の仕事になってくる。
実は僕はやっていたし、何だったら他にもやっていた

身も蓋もない見出しだが、このように少年が罪を犯していただけでなく、余罪まであることの告白を得られることもある。本当は、最初から話してもらいたいところだが、やはりこのような本音を引き出せたら、少年との信頼関係は深まっているため、良い兆しではあると思う。
同時に、弁護の方針も、罪を争う、そのために釈放するといった点ではなく、主に家庭裁判所での手続を意識したものになってくる。少年事件に関する手続の記事でも言及したように、犯罪があったらどれだけ反省していても、示談ができていても、家庭裁判所に事件を送るのが少年事件の原則である。罪を犯していたとなると、家庭裁判所は回避できない。
そして、勾留された少年は、基本的に少年鑑別所に送られることになる。少なくとも、裁判所は鑑別所にいれる観護措置が必要かを判断することになるのが通常である。弁護側は勾留から途中で釈放できない限り、この鑑別所に入るかどうかという場面が、次の少年が家に帰れるかの分かれ目となってくるため、次の目標に定めることになる。
昔の不良漫画などを読むと、少年院と少年鑑別所の区別がついていないのを見かける。少年鑑別所と少年院は全く異なる存在だ。少年院は、裁判の結果である。家庭裁判所において審判を経た結果、少年の更生のために必要だとして入れられる。期間も2年など一定の長い期間が想定される。
一方で、少年鑑別所は、裁判の結論を出すための前提資料を作る場所である。少年の日常生活を4週間にわたって観察し、その生活上の特徴や、心理テストなどを経てわかる思考の特徴などを踏まえ、必要な措置に関する意見を出す場所である。
裁判前の事前の調査のために、4週間という限られた期間で入れることから、少年鑑別所に入れるハードルはそこまで高くない。勾留時に求められた罪証隠滅のおそれや逃亡のおそれがあれば、当然行動を制限しておく理由になるが、そこまで刑事手続との関係で支障がなくとも、少年を細かく調べる必要があれば、観護措置は認められる。
そのため、弁護士は、勾留の判断までに意識した点、前記事で言及した点に加え、観護措置の必要性を下げる活動が必要になる。しかも、観護措置の判断は家庭裁判所に行ったタイミングで行われるのであるから、家庭裁判所に行ってから観護措置の必要性を下げるのでは遅く、勾留の段階から進める必要がある。
少年の更生のスタート地点

観護措置の必要性が高い、すなわち少年鑑別所に入りやすい少年とは、どのような少年を指すか。簡単に言えば、問題の原因がわかりにくい少年、問題の解消方法がわかりにくい少年が、該当してくる。
性的な問題が絡んでいる少年は、代表例だ。性的な問題という記載方法からもわかるように、性犯罪以外に、性的な動機が影響している窃盗や器物損壊といった行為も、このカテゴリに入ってくる。
過去に接触した少年の中には、性的な行為を、性的な認識を十分に持たずに行っていた少年もいた。通常、性犯罪をするならそれは当然性的な欲求の充足を目的にするだろうと考えるかもしれないが、そうとも限らない。
ある少年は、性というものを理解せずに、ただ性的な動画や漫画などで見られる行動を模倣していたことがあった。行動と認識にずれがあると気が付くきっかけになったのは、私が勾留期間中に少年に回答してもらったワークシートによってであった。
鑑別所で行うことを完全にそのまま行えるとまで自惚れるつもりはないが、性の問題行動について取り上げた書籍などから、ワークシートを用意して少年に記載してもらうことくらいなら、弁護士でもできる。そのようなワークシートから、少年が、同世代と比べて非常に性的な知識に劣っていることに気が付いた。
そうして質問してみると、少年は同世代の他者と性的な話題をしたことがなく、他人が性的な関心をどう処理してどう認識しているかを知る経験をこれまで得ていないことが分かった。
そのため、自身に性的感情が湧くこともある種の異常として、まるで自身がコントロールできないことのように錯覚しており、そして動画で見たような行動を模倣して性犯罪にあたる行動を繰り返していたのだとわかった。
このような気づきを鑑別所に行く前に気が付けたのは大きく、この事件において私は、まずは性的なことを初めて話す他者として少年と接しながら、法に触れない、他人を傷つけない形での性との共存の仕方を伝える役割を担った。
その少年の理解力の不足といったいくつかの欠点から鑑別所に入ることは避けられなかったが、鑑別所から少年院に入れての措置が必要という意見が出たのに対し、既に鑑別所が指摘するような問題を発見して改善の動きをしてきていたことにより、裁判においては保護観察で済むことになった。
要するに、問題を発見して認識を共有し、家族も対処し始めていたことから、自力で再犯防止に必要な措置をとれるという評価をもらえたのである。
裁判官との面談 中間報告の活かし方

観護措置の回避をめぐるやり取りに際しては、判断する裁判官との面談を申し出ることができる。成人の場合も、勾留の判断との関係で面談をすることはできるが、コロナ以降、基本的に電話でやり取りをするにとどまる運用になっている。一方、観護措置に絡んでは、裁判所まで赴くと対面で話をし、より踏み込んだ議論ができることも多い。
私はこの観護措置に際しての面談を、少年事件における中間報告のタイミングと位置付けている。家庭裁判所に行くまでに行ったことを資料として整理し、裁判官に読んでもらうよう整理して提出し、そして直接話してプレゼンする。
捜査機関が用意する資料は、あくまで犯罪があったかの事実を確認する目的で作成されていることが多い。少年の内面や家庭環境といった、家庭裁判所が重視する諸要因の調査は、 本来、裁判所の職員がこれから着手すべき段階にある。そこでしっかり少年の内面などを深く掘り下げた資料を作成すると、裁判官らにも高い関心を持って受け入れられることが多い。
時には、少年の思考や反応が文字からも伝わりやすいよう、対話篇のようなものを作成することもある。ギリシャの哲学者プラトンの書籍はだいたいこのような形式なのだが、少年と弁護士のセリフが相互に記載されて、お互いのやり取りがわかるようになっている形式の文章である。
ある事件では、勾留期間中に以下の要素を整理し、 少年事件として今後取り組むべき指針を明確化した。
- 少年の思考形式(対話形式による課題抽出)
- 弁護士の報告書による問題点の指摘
- 少年および家族が問題に向き合う方針(各自の直筆による書面)
これらを集約し、更生への道筋を具体的に示したことで、 結果として観護措置を回避できた事例もある。その時は、面談した裁判官から理想の付添人活動であると述べてもらえて、自身の試みが間違いなかったと自信をつけられるきっかけにもなった。
中間報告と述べるように、観護措置は回避できたら望ましいが、その結果に固執しているわけではない。事案の性質上、鑑別所なども十分に経て、裁判までにより多くの手当てが尽くされた方が望ましく、実際必要な事案も存在する。
そのような事案では、私は裁判官との面談において、観護措置を回避するための会話ではなく、観護措置の必要性があると考えた点をヒアリングする会話に切り替える。
この先の家庭裁判所において、さらに取り組むべき活動を理解すべく、宿題をもらおうとするのだ。素直に指摘を聞こうという姿勢に対しては、裁判官も考えを話してくれることも多い。
もちろん、その指摘を受けてどのように活動したかという新たな報告書の文面が、私の脳内にできあがりつつある。少年の更生にプラスとなることは、足し算方式でやっていって良いのだ。
そして家庭裁判所での調査がはじまる

こうして、ある少年は鑑別所に移動し、そしてある少年はようやく勾留の終わりで帰宅できて、いずれにしても手続が家庭裁判所に移行する。
ちなみに私は、観護措置を回避できた少年については、家庭訪問をしてちゃんと生活環境を約束通りに保てているかなどをモニターしたりもしており、釈放できたら終わりという意識ではない。この後の本番、結論を出すための日と、その前段階となる調査手続が待っているのだ。
家庭裁判所に移行してから行うことも、基本的にはこれまでの延長線にあるのだが、手続が家庭裁判所に移行しないとできないこともある。そちらの話は、また別の記事に記載させていただく。















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