マウス連続クローン、58世代目で限界 有害変異蓄積で生存できず

マウス連続クローン、58世代目で限界 有害変異蓄積で生存できず

山梨大学などの研究チームが、1匹の雌マウスの体細胞からクローンを作り、そのクローンからさらにクローンを作る「再クローニング」を約20年にわたり続けた結果、58世代目で生存の限界に達したとする研究成果を英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に発表しました。 研究を主導した山梨大学の若山照彦教授(発生工学)は、遺伝的に同一であるクローン同士の再クローニングは「無限に続けられる」と長らく考えられてきたものの、現在の技術のもとでは限界があることが示されたと説明しています。 チームは2005年に雌マウスの体細胞の核を別のマウスの卵子に移植してクローンマウス29匹を作製し、これを1世代目として再クローニングを開始しました。 成功率は当初7.4%だったものの、技術の改善などにより26世代目では15.5%まで上昇しましたが、その後は低下に転じ、最終的に58世代目では誕生したクローンはいずれも生後数日以内に死亡したといいます。 20年間で作製されたクローンマウスは全て雌で、計1206匹に上りました。

研究チームが全ゲノム解析を行ったところ、自然交配で生まれたマウスと比べ、クローンマウスでは突然変異の発生頻度が約3倍高いことが分かりました。 世代を重ねるにつれて有害な変異が蓄積し、最終的に生存が難しくなるレベルに達したことが、58世代目で限界が訪れた主な原因とみられます。 若山教授は、有害な変異は卵丘細胞の核を卵子へ移植する操作の際や、その後の胚発生の過程で生じた可能性が高いと指摘しています。 研究チームは、雄と雌の自然交配では、精子や卵子の形成過程で遺伝子の組み換えが起きるうえ、受精を経ることで有害な突然変異が世代を通じて蓄積しにくくなるメカニズムが働いているとみており、この仕組みこそが哺乳類がクローン生殖ではなく有性生殖を維持してきた理由の一端を示すとしています。

家畜生産や絶滅危惧種保全への応用と課題

今回の成果は、クローン技術が家畜の大量生産や絶滅危惧種の保全などに応用される可能性を持つ一方で、現在の方法のまま連続的に用いると有害な変異が蓄積し、生存限界を迎えるリスクがあることを浮き彫りにしました。 1996年に英国で誕生した羊「ドリー」を契機に、ヒトのクローン個体の作製は日本を含む先進国で法的に禁止されており、再クローニングの研究も主にマウスや家畜などを対象に進められてきました。 若山教授は、優良な家畜の増産や希少動物の遺伝資源の保存にクローン技術が貢献し得る一方で、「有害な変異を引き起こさない技術的改良が不可欠だ」と強調しています。

山梨大学と放射線影響研究所のチームは、今後、核移植の操作や培養条件を見直すことで、突然変異の発生を抑える方法の検討を進める方針です。 同時に、自然交配や体外受精といった既存の生殖技術が、なぜ長期的な子孫の健康維持に有利なのかを解明する研究にもつなげたいとしています。 研究チームは、人間を含む哺乳類における遺伝的多様性と健康の両立を考えるうえで、今回の知見がクローン技術の限界と役割を見極める重要な手掛かりになるとみています。 一方で、クローン技術の社会的受容や倫理面の議論は今後も続くとみられ、科学的なリスクの検証とともに、法制度や国際的ルールのあり方を含めた検討が求められています。

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