子どものための児童相談所 その仕事と職種について

「子どものための児童相談所 その仕事と職種について」ライター:秋谷進(東京西徳洲会病院小児医療センター)

2020年4月現在、全国に219か所ある児童相談所ですが、みなさんはどのようなイメージを持ちますか?

子育てをしていない人は児童相談所について知らない方も多いでしょうし、以下のように考えている方も多いかもしれません。

  • 虐待とかの相談を受け付けているところ
  • 親子の関係でトラブルが生じたときに駆けつける「避難所」のようなところ

もちろん、児童相談所は、虐待に対して相談される例もありますが、もっと非常に幅広い児童に関する相談を取り扱っています。

まさに「児童(子ども)」のことを「相談する」場所なんですね。

では、児童相談所にはどんな人が勤めているかご存じでしょうか。

これはなかなか答えられる人は少ないでしょう。

このように考えると、「少子化を改善する」「子育て環境を良くする」と言われている割には、一番大切な「児童相談所がどうなっているか」を知らない人が多いと思いませんか?

今回は、実はあまりよく知られていない「児童相談所」にスポットライトをあてて、

  • 児童相談所はどんなことを相談する場所なのか?
  • 児童相談所ではどんなことをしてくれるのか?
  • 児童相談所にはどんな人が勤務しているのか?

を中心に、わかりやすく解説していきます。

児童相談所はどんなことを相談する場所なのか?

「児童相談所=虐待」のイメージが強いですが、もともと児童相談所は「すべての子どもが心身ともに健やかに育ち、その持てる力を最大限に発揮できるように家族等を援助する」専門の機関です。

すべての児童の相談なので、ありとあらゆる相談を受け付けている場所。
しかも、子ども本人や家族だけでなく、学校の先生や地域の方々などに対しても、18歳未満の子どもに関することなら、どんな相談でも受け付けています。
例えば、児童相談所で取り扱っている相談内容は次の通りです。

①養護相談

みなさんが想像しやすい「虐待」に関する相談ですね。
他にも保護者が失踪してしまったり、死亡や離婚してしまったりなどして養育困難になってしまったケース、迷子に関する相談や里親に関する相談も受け付けています。

②保健相談

一般的健康管理に関する相談です。

健康や病気のことに関する相談といえば、クリニックや病院の「小児科」のイメージが強いですよね。
しかし実は、児童相談所では乳児、早産児、虚弱児、児童の疾患、事故・ケガなどのありとあらゆる相談を受け付けています。

③障害相談

病気やケガではないけれど、さまざまな理由から障害をもって生まれてきた子どももたくさんいます。
そういう子ども達の相談窓口としても児童相談所は活躍しています。

障害といわれてどのような疾患があるか、わかりますか?
実は非常に多岐にわたっています。

  • 視聴覚障害相談:視覚や聴覚に関する子どもに対する相談です。
  • 言語発達障害等相談:言葉が上手に話せない子どもや失語になった子どもに対する相談です。
  • 肢体不自由相談:運動機能に遅れを持っている子どもに対する相談です。
  • 重症心身障害相談:重度の知的障害と重度の肢体不自由が重複しているような子どもに関する相談です。
  • 知的障害相談:知的障害児に関する相談です。
  • ことばの遅れ相談(知的遅れ):知的遅れが原因で言葉がうまく話せない子どもを対象にした相談です。
  • 発達障害相談:自閉症、アスペルガー症候群、注意欠陥多動性障害(ADHD)など、発達障害の子どもに対する障害です。

意外と「障害」といっても様々にあるんですね。
こういった障害については、どこに相談すればよいかよくわからないものですよね。
そのため、児童相談所ではこうした障害に関する相談も一手に担っています。

④非行相談

子供が犯罪や犯罪に近い行為を行った場合の相談窓口としても、児童相談所は機能しています。

「虞犯(ぐはん)」といって、虚言癖、金銭持ち出し、浪費癖、家出、浮浪、暴力など「未だ犯罪行為には至らないが、不良行状が認められるような少年法特有なケース」も児童相談所の対象です。

実際に犯罪として法に触れてしまったケースで、警察署から児童福祉法第25条による通告のあった児童や、犯罪少年に関して家庭裁判所から送致のあった子どもたちについても児童相談所の対象となります。

非行相談もかなり幅広い対象者であることがうかがえますね。

⑤育成相談

最後に育成相談も児童相談所の対象です。

育成相談にもいろいろあります。

  • 学校、幼稚園、保育所に登校(園)できない子どもたちに対して対処する「不登校相談」
  • 友達と遊べない、落ち着きがない、家庭内暴力ふるうなどの問題に対して対処する「性格行動相談」
  • 家庭内における幼児のしつけ、遊び等に関する「しつけ相談」
  • 学業不振、進学、就職等の進路選択に関する「適正相談」
  • ことばの遅れにより、家庭環境等言語環境の不備に対して対処する「ことばの遅れ相談(家庭環境)」

などです。

このように、児童相談所も「養護相談」「保健相談」「障害相談」「非行相談」「育成相談」などを中心に幅広く相談を受け付けていることがうかがえます。

決して虐待や非行だけを対処するところというわけではないのです。

参照:東京都児童相談センター・児童相談所「相談の種類」

児童相談所ではどんなことをしてくれるのか?

非常に幅広い相談を受け入れてくれる「児童相談所」。
では、児童相談所ではどんなことをしてくれるのでしょうか?

厚生労働省のHP「JOB TAG」では、児童相談所相談員の主な仕事内容について具体的に記載されていますが、仕事内容を簡潔にまとめると保健所の役目は

  1. 児童の真の問題点はどこかを追求する
  2. 児童の問題を解決する方法を提案する
  3. 場合によってカウンセリングや人的・物的支援を児童相談所から行う
  4. 保育、医療や家事サービスなどの紹介を適宜行い、間を取り持つ「調節役」として機能する

の4つに集約されますね。

実施率として多いものは、「家族や関係者からの相談」「報告書の作成」「経済試験の必要性を調査・報告」「相談者に対して、人的支援の紹介や連絡調整する」といったものなので、「つなぎ役」としての側面の方が大きいともいえるでしょう。

いずれにせよ、仕事内容から考えても「児童相談所に相談すれば、きちんと仕事してくれる」という安心感があるものだといえます。

参照:厚生労働省 職業提供サイトJOBTAG「児童相談所相談員」

児童相談所ではどのような人が勤めているのか

ここまでをまとめると、

  • 児童相談所は18歳の未満の児童に関する、非常に幅広い相談内容について対応してくれる
  • 児童相談所が実際にしてくれることも幅広いが「相談をうけたのち、本質的な問題点がどこかを明らかにし、さまざまな支援や紹介を行い解決を図る」ことが主な仕事

といえます。

子育てをする上で、さまざまな問題を抱えやすいので、非常に頼れる存在ですね。
ここでは児童相談所に配置されている主な職種を表にまとめました。

職種      人数(人)
所長208
次長189
スーパーバイザー700
児童福祉司2,388
受付相談員398
電話相談員371
児童心理司1,189
心理療法担当職員125
保健師86
精神科医師311
小児科医師136
理学療法士9
臨床検査技師3
その他4,625
合計10,738
表. 児童相談所に配置されている主な職種(2015年4月1日)

そんな児童相談所では、実際どんな人が勤めているのでしょうか。
中心を担う役職として「児童福祉司」「児童心理司」「弁護士」「医師と保健師」の4つに分けて説明します。

①児童福祉司

児童福祉司とは、子どもたちが置かれている環境を調査し、子どもや保護者の話を聞き、医師や児童心理司などの専門家の協力を得て適切な対策を立てていく・・・まさに児童相談所の中心的な役割を果たすのが「児童福祉司」です。

児童相談所では、いわゆる「子どものよろず相談所」なので、子どもに関する非常に幅広い問題が持ち込まれます。
それを臨機応変に対応するためには、子どもに関して専門の枠にとらわれない幅広い知識が必要になってきます。

児童福祉司が問題点を明らかにしながら、「どう解決するのが、子どもたちにとってベストな解決策」になるのかを知識と経験をもとに考えていきます。

児童福祉司は現在、全国の児童相談所に5,863人配置されています。(2023年4月1日現在)

②児童心理司

また、児童相談所の職員として「児童心理司」も通常配置されています。

児童福祉司が全体の問題点から解決するのに対して、児童心理司とは心理学的側面から子どもの問題を評価し、ケアを行っていきます。
児童心理司は、まさに「子どもの心のケアのスペシャリスト」といえますね。

子どもの問題は、やはり心の問題が非常に大きいです。
虐待の問題、非行の問題、発達障害の問題、すべて子どもと保護者の心をきちんと把握しないと問題解決にいたりません。

そこで、児童心理司は子どもや保護者等から相談に応じ、面接・心理検査、観察などを通して、子どもや保護者に対し⼼理診断を行ったり、カウンセリングや児童福祉司にアドバイスを行ったりします。

ときに心理療法を行い、児童心理司自身で問題解決をはかることもあります。

似たような職業に臨床心理士などがありますが、児童心理司の方が児童相談所の児童福祉司とつながっているので、社会的な物的支援・人的支援にもつなげやすかったりする点が違ってきます。

児童心理司は現在、全国の児童相談所に2,623人配置されています。(令和5年4月1日現在)

③弁護士

これまでは「児童福祉司」「児童心理司」が主な児童相談所で働く職員でしたが、対応力の幅を広げるために、新たな職業を児童相談所に配置する流れになっています。
その1つが「弁護士」です。

弁護士は2016年に児童福祉法が改正され、都道府県は児童相談所の業務のうち「法律に関する専門的な知識経験を必要とするものを適切かつ円滑に行うことの重要性に鑑み、児童相談所における弁護士の配置又はこれに準ずる措置を行うものとする」との規定がなされ、全ての児童相談所に、弁護士配置が義務付けされるようになりました。

児童の問題は法律に関わる問題も少なくありません。
非行問題はその最たるものですし、無国籍者の問題や特別養子縁組の問題、虐待に伴う親権停止などの問題など、法律のことを十分知らなければ対処できない問題がたくさんあります。

そのため、児童相談所では児童福祉司が問題を整理したのち、法律に関わる部分をどのように対処すべきかという「法律のスペシャリスト」として弁護士配置が義務付けられるようになったのです。

常勤職員や非常勤職員として配置されていたり、弁護士事務所との契約などにより配置されている場合もありますが、平成31年には常勤職員として14人(11カ所)、非常勤職員として156人(94カ所)配置され、弁護士事務所と契約している児童相談所は110カ所となっています。

参照:
児童相談所関係資料
児童相談所における弁護士業務

④医師・保健師

また、近年新しく児童相談所に加わった職業として「医師・保健師」があります。
2019年から児童虐待防止対策の強化を図るため、児童相談所に医師や保健師を配置することが義務づけられるようになりました。

医師や保健師の主な業務は以下の通りとなります。

医師

  • 診察、医学的検査等による子どもの診断をする
  • 子供や保護者に対して医学的立場からアドバイスを行う
  • 医学的な治療も行う
  • 脳波測定やリハビリなどの指示や監督を行う
  • 児童心理司、心理療法担当職員等が行う心理療法に対して必要な指導を行う
  • 一時保護している子供の健康管理を行う
  • 医療機関や保健機関との情報交換や連携を行う

保健師

  • 子供の問題を予防するための方法を一般に普及させる
  • 育児相談や発達障害、虐待をうけた子供に対して在宅支援を行う
  • 子供の健康・発達面と評価を一次保護している子どもの健康管理を医師とともに行う
  • 市町村保健センターや医療機関の連絡調整を行う

児童福祉司は「福祉」の側面が強い一方、医師や保健師は「医療」の側面が強いですね。
まさに子供の問題を解決する「医療のスペシャリスト」といえるでしょう。

全国の児童相談所に 医師750名、保健師190名が配置されています。(令和3年4月1日現在)

このように、児童福祉司を中心に活動しながらも、心理的なケアは児童心理司が、法律的なケアは弁護司が、医学的なケアは医師や保健師がスペシャリストとして参加し、チームとして対応する。それが児童相談所のあり方なのです。

参照:令和元年度児童福祉法改正による児童相談所における保健師必置について

本当に「頼れる」児童相談所

このように、ありとあらゆる子どもの相談を児童福祉司がとりまとめ、法律的、心理的、医学的なスぺシャリストとチームとして取り組むのが「児童相談所」です。

こう考えると、児童相談所に気軽に相談できるというのは非常にありがたいことですし、日本の福祉が充実している証ともいえますね。

しかし、実際には児童相談所を活用できているかというとそういうわけではない側面があります。
子育てを1人で頭を抱えて悩み「児童相談所に相談すること」は敷居が高いように思える方も多いでしょう。

ぜひこの機会に児童相談所も活用してみてください。
1人より2人、2人よりみんなで問題を分け合ったら解決できることも多いはずです。
きっとあなたの大きな助けとなることでしょう。

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