日本から3作品がカンヌ映画祭コンペ入り 是枝裕和・濱口竜介・深田晃司監督作がパルムドール競う

日本から3作品がカンヌ映画祭コンペ入り 是枝裕和・濱口竜介・深田晃司監督作がパルムドール競う

5月にフランスで開かれる第79回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に、日本から是枝裕和監督の「箱の中の羊」、濱口竜介監督の「急に具合が悪くなる」、深田晃司監督の「ナギダイアリー」の3作品が選出されました。世界三大映画祭のひとつであり、最高賞「パルムドール」を争うコンペティション部門に日本映画が3本同時に並ぶのは異例で、日本映画界への期待の高まりを印象づける結果となっています。

是枝監督の最新作「箱の中の羊」は、2023年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された「怪物」以来3年ぶり、8回目のコンペ入りで、カンヌ出品自体では10回目となります。 2004年「誰も知らない」では主演の柳楽優弥さんが最優秀男優賞を受賞しており、これまでの受賞歴も含めて“カンヌ常連”としての存在感をあらためて示す形です。新作は息子を亡くした家族のもとに、その息子の姿をした人型ロボットが届く近未来を舞台に、止まっていた家族の時間が再び動き出す過程を描く物語で、綾瀬はるかさんとお笑いコンビ「千鳥」の大悟さんがダブル主演を務めます。

濱口監督の「急に具合が悪くなる」は、「寝ても覚めても」(2018年)、「ドライブ・マイ・カー」(2021年)に続く3作目のカンヌ・コンペティション部門選出となり、「ドライブ・マイ・カー」で脚本賞を受賞して以来、5年ぶりのコンペ参加となります。フランス・パリ近郊の介護施設を舞台に、施設長と、がんを闘病中の日本人女性との交流を通じて、病と向き合いながら他者とかかわることの意味を描く人間ドラマで、宮野真生子さんと磯野真穂さんによる同名著作が原作です。現地での上映がワールドプレミアとなり、日本では6月19日に公開される予定です。

深田監督の「ナギダイアリー」は、2016年に「淵に立つ」でカンヌ「ある視点」部門審査員賞を受賞し、その後も「本気のしるし〈劇場版〉」「恋愛裁判」などが正式に選出されてきた深田監督にとって、4度目のカンヌ出品にして初めてのコンペティション部門入りとなります。岡山県奈義町をモデルとした自然豊かな町「ナギ」を舞台に、彫刻家の主人公・寄子の日常と、彼女のもとを訪れる人々との関わりを丁寧に描く作品で、主演の松たか子さんをはじめ、石橋静河さんや松山ケンイチさんらが出演します。日本では9月25日に公開される予定で、海外ではすでにフランスや台湾など十数カ国・地域での公開が決定しており、カンヌを足がかりに世界展開も視野に入れた布陣となっています。

今年のカンヌ国際映画祭は、現地時間5月12日から23日まで開催され、23日に授賞式が行われます。パルムドールの行方とともに、日本の3作品がどのような評価を受けるのか、国際的な映画賞シーズンを見据えたうえでも注目が集まっています。

監督たちの歩みと国際的評価、日本映画界への波及効果

今回コンペティション部門に名を連ねた3人の監督はいずれも、これまでのカンヌでの実績や国際的評価を背景に、新作への期待が高まっています。 是枝監督は「誰も知らない」での最優秀男優賞、「そして父になる」の審査員賞、「万引き家族」のパルムドール受賞など、家族をテーマにした作品を軸にカンヌと深い関係を築いてきました。

一方、「ドライブ・マイ・カー」でカンヌ脚本賞を経てアカデミー賞国際長編映画賞を受賞した濱口監督は、緻密な脚本と会話劇で国際的な評価を確立しつつあります。新作「急に具合が悪くなる」では、介護や病というテーマを通じて、フランスと日本という複数の文化圏にまたがる人間関係をどう描くのかが関心を集めており、監督自身もコメントで「多くの観客へと届けたい」と意欲を示しています。

深田監督は、「淵に立つ」で見せた家族ドラマの緊張感や、「本気のしるし〈劇場版〉」での人間の欲望と不安を描く手つきが海外でも高く評価されてきました。「ナギダイアリー」は、平田オリザさんの戯曲「東京ノート」に着想を得てオリジナル脚本を書き上げるなど、長年の構想を経て完成した作品であり、緻密な会話劇と静かな日常描写を通して、観客の価値観を揺さぶる人間ドラマに仕上がっていると紹介されています。

こうした日本映画の存在感の高まりは、監督やキャスト個人のキャリアだけでなく、日本映画全体の海外セールスや共同製作の機会拡大にもつながる可能性があります。とりわけ「ナギダイアリー」がすでに複数の国・地域での公開契約を結んでいるように、カンヌを起点に公開地域が広がるケースも出てきており、今後も国際映画祭と連動した戦略が日本映画界にとって重要な位置を占めていきそうです。

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