みずほ証券社員にインサイダー疑惑 監視委が本社を強制調査、市場の信頼揺らぐ

みずほ証券社員にインサイダー疑惑 監視委が本社を強制調査、市場の信頼揺らぐ

みずほ証券の社員が株式のインサイダー取引に関与した疑いが強まり、証券取引等監視委員会が金融商品取引法違反(インサイダー取引)容疑で同社本社など関係先への強制調査に踏み切ったことが明らかになりました。 調査対象となっているのは投資銀行部門に所属する社員で、顧客企業の資金調達やM&A(合併・買収)に関する未公表情報を利用して株式売買を行った疑いが持たれているとされています。 監視委は1月下旬に東京都千代田区の本社や社員の関係先に立ち入り、押収資料などをもとに取引の全容解明を進めており、東京地検特捜部への告発も視野に入れて調査を継続しているもようです。

みずほ証券は16日、「証券取引等監視委員会から当社に対して調査が行われていることは事実であり、引き続き調査に全面的に協力してまいります」とコメントを公表しました。 投資銀行部門は企業の公募増資や社債発行、TOB(株式公開買い付け)などを助言・執行する「情報の要」ともいえる部門であり、その担当者による不正が事実であれば、市場の公正性だけでなく大手証券会社に対する信認を大きく損ねかねません。

金融業界では近年、インサイダー取引を巡る不祥事が相次いでいます。2025年には、三井住友信託銀行の元部長が顧客企業のTOBに関する未公表情報を基に3銘柄計2万5900株を購入し、約2930万円の利益を得たとして、東京地裁から懲役2年・執行猶予4年などの有罪判決を受けました。 同じく2025年には、東京証券取引所の元社員が上場企業のTOB情報を父親に伝え、父親が約1700万円分の株式を購入して400万円超の利益を得たとして、いずれも懲役1年6月・執行猶予付きの有罪判決が言い渡されています。

2026年1月には、中堅証券会社の三田証券で、元取締役投資銀行本部長がニデックによる牧野フライス製作所へのTOB情報を利用し、約23億円規模の株式を買い付けたインサイダー取引の疑いで東京地検特捜部に逮捕される事件も発生しました。 企業と投資家の間に立ち、市場の「ゲートキーパー」を標榜してきた金融機関の不祥事が重なることで、公正な価格形成を前提とする日本の資本市場全体への信頼低下が懸念されています。

インサイダー規制強化へ 金融審が報告、法改正も視野

相次ぐ不正を受け、当局はインサイダー取引規制の強化に動いています。金融庁は2025年6月、金融審議会(首相の諮問機関)総会で、TOBを巡るインサイダー取引の課徴金引き上げなどを柱とする金融商品取引法改正を諮問し、課徴金算定方法を見直して抑止力を高める方針を示しました。 これまで課徴金は不正に得た利益額を基準に算出されてきましたが、額が限定されるケースでは十分な抑止につながっていないとの指摘があり、今後は利得相当額を上回る水準も含めた見直しが検討されています。

さらに2025年11月の金融審議会作業部会では、暗号資産を金融商品取引法の対象に位置付け、インサイダー取引規制や課徴金制度を整備する報告書案が大筋了承されました。 暗号資産市場での不公正取引にも監視委の犯則調査を及ぼすことで、株式市場と同様のルールを適用し、利用者保護と市場の透明性向上を図る狙いです。

民間金融機関側も、ガバナンス強化を急いでいます。三井住友信託銀行は、元部長のインサイダー事件発覚後、社員の株取引のモニタリング強化やインサイダー情報へのアクセス管理、研修内容の見直しなどの再発防止策を公表し、元社員の行為について監視委から告発を受けたことも明らかにしました。 東京証券取引所を傘下に持つ日本取引所グループも、TOB関連情報の漏えい疑惑を受けて独立の調査検証委員会を設置し、社員教育や情報管理体制の検証を進めるなど、重要情報を共有する範囲の絞り込みや研修強化に取り組んでいます。

それでもなお、みずほ証券を含む大手や市場インフラを担う組織で不正が繰り返されている現状は、「自浄作用」や内部管理体制の実効性が問われていることを浮き彫りにしています。 今回の強制調査を機に、捜査の行方とともに、課徴金引き上げや暗号資産まで含めた規制強化、各社のガバナンス改革がどこまで実効性を伴うものとなるかが、投資家と市場関係者の大きな関心事となっています。

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