
AIスタートアップ大手のアンソロピック(Anthropic)が、最新のAIモデル「Claude Mythos(クロード・ミトス)」の取り扱いを巡り、米国政府と水面下で協議を続けていることが明らかになりました。この新型モデルは、主要なOSやブラウザの脆弱性を悪用できるほど極めて高い能力を持つことから、同社は一般公開を見送る異例の措置を取っています。同社の共同創業者であるジャック・クラーク氏は、米国時間4月13日に開催されたカンファレンスにおいて、「政府はこうした技術の現状を知っておく必要がある」と述べ、国家安全保障の観点から当局との対話を重視する姿勢を強調しました。
背景には、同社と米国防総省(ペンタゴン)との深刻な対立があります。国防総省は今年2月、アンソロピックを「サプライチェーンリスク」に指定するという極めて異例の措置に踏み切りました。これは、ピート・ヘグセス国防長官がAIモデルへの「完全かつ無制限のアクセス」を要求したのに対し、アンソロピック側が「国内での大規模監視や自律型兵器への使用」を禁じる安全ポリシーを盾に拒否したことが発端です。この指定により、現在、国防総省の職員や関連業者は同社の技術を利用できない状態が続いています。
アンソロピックは今月、10兆パラメータ規模とされる「Claude Mythos Preview」を発表したばかりですが、その破壊的なサイバー攻撃能力への懸念から、一般公開の代わりにグーグルやマイクロソフトなど大手IT企業40社への限定的な提供に留めています。クラーク氏は、政府との対立を「限定的な契約上の紛争」と表現し、技術の悪用を防ぐという同社の理念と国家の安全保障は矛盾しないと主張しました。しかし、トランプ政権下の連邦裁判所は政府側の指定を支持する判断を下しており、企業自治と国家権力の対立は泥沼化の様相を呈しています。
破壊的AI「Mythos」が金融・インフラに与える衝撃と警戒感
「Claude Mythos」が持つ潜在的な脅威は、軍事分野に留まらず民間経済にも波及しています。米財務省と連邦準備制度理事会(FRB)は先週、米国の主要銀行のCEOを緊急招集し、この新型AIが金融システムにもたらすサイバー脅威について警告を行いました。Mythosは既存のセキュリティ対策を無効化する能力を秘めているとされ、金融機関の基幹システムや仮想通貨セクターにおける深刻な脆弱性が露呈するリスクが指摘されています。
アンソロピックは、自社製品の軍事転用を頑なに拒む一方で、2026年10月にも見込まれる大規模な新規株式公開(IPO)に向けた準備を進めています。企業価値は600億ドルを超えると試算されていますが、政府による「サプライチェーンリスク指定」が解除されない限り、防衛・公共部門という巨大な市場を失ったまま上場を迎えることになります。安全保障上の懸念を理由とした政府の介入と、AI企業の倫理的拒否権が真っ向からぶつかり合う今回の事態は、今後の先端技術開発における官民関係の試金石となりそうです。












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