茨城県が、救急車の適正利用を促進するために新たな取り組みを開始します。茨城県の方針として、12月からは県内の200床以上の大病院に救急搬送されても緊急性が認められない場合、患者から7,700円以上の「選定療養費」を徴収することになりました。
通常、救急車で搬送された場合は「選定療養費」の対象外ですが、この運用が改められます。県と医療機関は協議を重ね、緊急性の判断基準を統一する予定です。
都道府県単位でこうした取り組みを実施するのは全国で初めてです。茨城県内では救急搬送者の6割以上が大病院に集中し、そのうち約半数が軽症患者だといいます。
4月からの医師の時間外労働規制により、救急医療現場のひっ迫がさらに懸念される中、県は重症患者の搬送を確実に行うための方策としてこの運用を開始します。大井川知事は、「必要な人にしっかりと救急医療が提供できるように県民のご理解をお願いしたい」と理解を求めています。
救急車の適正利用は、限られた医療資源を有効に活用するために不可欠です。茨城県の新たな取り組みが、救急医療の質の維持と向上に繋がることが期待されます。
ネット上では、「それで良いと思います」「素人が軽微なのか緊急なのかを判断するのは難しい」「救急車を呼んで良いかどうかの基準なんて自分で分かるわけ無いじゃないですか」など、さまざまな意見が寄せられています。
県内の救急搬送者数が年々増加 2023年は過去最多
筑波大学附属病院の井上貴昭副院長は、「重症で緊急性が高い患者をいつでも受け入れられるキャパシティーを作ることが最大のメリット」と評価する一方、「選定療養費をとることで本当に辛い思いをしている方が躊躇しないよう、十分な対応が必要」と注意を促しました。
県内の救急搬送者数は年々増加し、2023年は14万3,046人で過去最多です。このうち軽症者は6万8,549人と、全体の47.9%を占めました。救急車の現場到着までの時間も延び、2021年には到着までの時間が10分を超えています。
先行して同様の運用を始めた三重県松阪市では、救急車の出動件数が前年同月比2割以上減少しました。ただし、市民からは「熱中症でも徴収されるのか」「軽症かどうか自分でわからない」といった不安の声も寄せられています。
救急医療の適正利用は喫緊の課題ですが、県民の理解と協力なくしては成り立ちません。行政は丁寧な説明と周知に努め、現場の声に耳を傾けながら、柔軟に運用していくことが求められそうです。