
デジタル時代の選挙における情報の信頼性確保に向けて、自民党が包括的な対策案を策定しました。2024年11月の兵庫県知事選挙で虚偽情報の拡散が有権者の判断に悪影響を与えたことを受け、SNSプラットフォームに対する規制強化が急務となっています。
党がまとめた論点整理では、プラットフォーム運営企業に対する自主的な取り組み強化を中核に据えています。
特に注目されるのは、虚偽情報を意図的に流布して広告収入を得ようとする悪質な利用者への経済的制裁措置です。閲覧数に基づく収益分配システムの停止により、偽情報による金銭的利益を遮断する仕組みを構築します。
また、人工知能で生成された画像や動画への警告表示も挙がっています。利用者の身元確認が完了したアカウントについては、その旨を明示する仕組みの導入も求めています。
一方で、表現の自由という憲法上の重要な権利への配慮も忘れていません。名誉毀損にあたる可能性のある投稿の迅速削除については、発信者による異議申し立てに基づく復旧手続きも同時に整備する方針です。
さらに、他の候補者を有利にする目的での立候補、いわゆる「2馬力」行為の根絶に向けた新たな規定も提案されています。今後は公職選挙法の再改正に向けた検討が進められる予定です。
ネット上では、「選挙活動期間において、軽率に偽情報を流す者に厳罰を与えるようにすれば良い」「偽情報は、即時、削除要請を出していけばいい」「嘘がまかり通ることがないようにすることが言論の自由の目指すところなんだと思います」などの意見が寄せられています。
国民投票制度の偽情報対策が急務 専門家が法改正の必要性を訴え
6月4日の参院憲法審査会では専門家による参考人質疑が実施され、現行制度の課題が浮き彫りになりました。
北九州市立大の山本健人准教授は、現在の国民投票法における法的整備の不備を指摘しました。公職選挙法では虚偽情報の流布に対する罰則規定が存在するにもかかわらず、国民投票においては同様の規制が設けられていない現状を問題視し、制度改革の緊急性を強調しています。
一方、大阪大の工藤郁子特任准教授は、AI技術で作成される精巧な偽画像・映像の問題を取り上げ、現在の検出技術や法的枠組みでは十分な対応が困難であると警告しました。
日本ファクトチェックセンターの古田大輔編集長は、偽情報拡散の動機について経済的・政治的利益の存在を指摘し、今後も政治関連の虚偽情報が増加する可能性が高いとの見解を示しました。
民主主義の根幹である国民投票の公正性確保に向けて、包括的な対策が求められています。