日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収計画が、米政府の禁止命令によって頓挫する事態となりました。日本製鉄は、この決定が法令に違反しているとして、米政府を提訴する方針を固めています。
バイデン大統領は、安全保障上のリスクを理由に買収を阻止したと説明していますが、日本製鉄側は「明らかに政治的な判断だ」と反発。共同声明では、禁止命令に確かな証拠が示されていないことを指摘し、適正な手続きが取られなかったと非難しました。
一方、米通商代表部(USTR)元次席代表代行のカトラー氏は、今回の決定を「残念で誤った判断だ」と批判。この買収が実現すれば、米国の競争力回復と対中国への対抗に役立つはずだったと指摘しています。
世界の鉄鋼生産の約60%を中国企業が占める中、日米の鉄鋼業界の再編計画は政治問題と化してしまいました。日本製鉄による提訴で、この問題がどのような展開を見せるのか、注目が集まっています。
ネット上では、「アメリカが窮地に立たされる可能性は高いと見てます」「反対した結果を肌身に感じ実感すればいいだけ」「日本人もアメリカ政府の本音を知るきっかけになったのは良かったと思います」「日本にとっての今回の買収は遠くに負けのある最後の戦いかも知れない」などの意見が寄せられています。
日本製鉄による買収計画、トランプ次期大統領も強く反対
日本製鉄によるUSスチールの買収計画は、発表当初から米国内で大きな反発を呼んでいました。全米鉄鋼労働組合をはじめ、トランプ次期大統領も強く反対の姿勢を示し、政治問題化する様相を呈していたのです。
2024年12月2日には、トランプ次期大統領は自身のSNSで「かつて偉大で強力だったUSスチールが外国の企業、今回の場合は日本製鉄に買収されることに全面的に反対する」とコメントしています。
日本製鉄は雇用確保や追加投資を約束するなど、懸念の払拭に努めてきましたが、ついにバイデン大統領から禁止命令が下されました。
丸紅経済研究所の今村卓氏は、USスチールの経営危機を指摘し、「USスチールを含めたアメリカの鉄鋼業を再生するには買収計画が最善の策で、日本製鉄の主張は正当なものだと思う」と禁止命令の矛盾について言及しています。
一方で、トランプ氏が大統領に就任すれば状況が変わる可能性にも触れています。日本企業のグローバルな事業展開において、新たな課題が浮き彫りになったといえるでしょう。