米国では飲酒によるがんリスクが深刻な問題となっています。米保健福祉省のマーシー医務総監は3日、アルコール飲料のラベルにがんリスクの警告表示を義務付けるよう提言しました。
医務総監によると、飲酒はたばこや肥満に次ぐ「予防可能ながんの原因」であるにもかかわらず、消費者のリスク認識は低いとのことです。HHS報告書「アルコールとがんリスク」では、米国で年間約10万人がアルコール関連のがんを発症し、約2万人が死亡していることが明らかになりました。
調査の結果、乳がんや口腔がん、咽頭がんなど少なくとも7種類のがんで、飲酒との直接的な関連性が確認されています。さらに、1日1杯以下の少量飲酒でも、乳がんや口腔がんの発症リスクが高まることが判明しました。
しかし、2019年の消費者調査では、アルコールのがんリスクについて「認識している」と回答したのはわずか45%で、放射線(91%)やたばこ(89%)を大きく下回っています。医務総監は、消費者の健康を守るためにも警告表示の義務付けが急務だと訴えました。
ただし、警告表示の実現には米議会の承認が必要であり、アルコール業界の反対も予想されます。飲酒とがんの関連性について、さらなる研究と啓発活動が求められています。
アルコール関連のがんによる死者数、年間1万3,500人を上回る
米保健福祉省のマーシー医務総監は、アルコール関連のがんによる死者数が飲酒運転事故の年間死者数1万3,500人を上回ると警鐘を鳴らしました。医務総監は報告書の中で、たばこの健康リスク警告表示を例に挙げ、目立つ警告表示がアルコールのリスクに対する一般の認知向上や行動変容に効果的だと説明しています。
この発表を受け、3日の米株式市場ではアルコール関連銘柄が軒並み下落しました。健康懸念による消費者のアルコール離れや、規制強化への不安が広がったためです。
近年、少量の飲酒でも健康に悪影響を及ぼすとの研究結果が相次いでおり、各国は推奨摂取量の見直しを迫られています。2022年には世界保健機関(WHO)が「アルコールに安全な摂取量はない」とする指針を発表しました。
マーシー医務総監の提言が実現するかどうかは不透明ですが、次期大統領のドナルド・トランプ氏と保健福祉省長官に指名されたロバート・ケネディ・ジュニア氏はいずれも禁酒家として知られています。アルコールの健康リスクに対する議論は今後も続きそうです。