リーゼント刑事の現場経験から学ぶ「安心して暮らすための防犯対策」

リーゼント刑事の現場経験から学ぶ「安心して暮らすための防犯対策」

おはようさん。リーゼント刑事こと秋山です。

寒さが身にしみる毎日ですね。朝、鏡の前でリーゼントを整える時間も、つい短縮してしまいそうになります。「油断は禁物!」リーゼントを固めながら唱えている決まり文句です。

冬は日が暮れるのも早いこともあり、犯罪も「隙」を狙ってやってきます。寒さでポケットに手を突っ込んで歩いていると、ついつい周りへの注意が薄くなりがちです。そんな時に、悪い奴らがスッと近づいてきます。

今回は長年現場で見てきた経験談を交えながら【安心して暮らす為の防犯対策】特に、子どもや女性が安心して暮らす為の防犯対策を中心にお伝えしていきたいと思います。

<目次>

日常に潜む性犯罪のリスク

不審者

記憶に新しいのが、2025年8月に神戸市中央区で発生した、エレベーター内での殺人事件。この事件は、マンションに住む(当時24歳)の会社員女性が刺されて死亡し、谷本将志容疑者(当時35歳)が逮捕されました。この事件は、マンションのオートロックをすり抜ける「共連れ」と呼ばれる手口です。殺害動機が「好みのタイプ」という、極めて遺憾な犯罪でした。

「不審者」と聞くと、マスクにサングラス、黒いコート姿…そんなイメージを浮かべがちですが、実際の不審者は、見た目が「普通」のことが多く「不審者」と判断しにくい。最近のこのような犯罪で多いのが「共連れ」。今回もそのケースです。

皆さんに気をつけて欲しいのが、自宅マンション等で普段見かけない人がいた場合は、極力一緒に乗り合わせないこと。そして乗る前には、まわりに誰か潜んでいないか十分に確認して欲しい。

特に普段から意識して欲しいのが、エレベーター内では、行き先ボタンの近く、つまり操作ボタンのそばに立って、壁を背にしておくと。犯人は背後から襲ってくる事が多い。少しでも違和感を覚えたら、すぐにボタンを押して、関係ない階でもすぐに降りてください。普段から意識して行動し、無意識レベルで行動が出来るよう心掛けて欲しいのです。

「性犯罪」はどんなに学歴があっても、権力があっても、お金持ちでも、性犯罪の加害者になりうるのが現実です。それが「性犯罪」というもの。私が現役の頃、捜査一課のエリート刑事が若い女性記者とお酒を飲んでいた際、無理やりキスをした…という事件がありました。

悪いことはすぐにバレます。その女性がすぐに会社の上司に被害を訴えたことで事件が発覚。結局、そのエリート刑事は追い詰められ、自ら命を絶ってしまいました。今思い出しても、胸が締めつけられるようなつらい事件でした。

「性犯罪」といったら、レイプを思い浮かべる人も多いでしょう。無理やりキスをしたり、嫌がる相手に触れたりするのも、すべて性犯罪。性犯罪の被害者は圧倒的に女性が多いですが、男性が被害に遭うことも少なくありません。

特に子どもが被害に遭う性犯罪では、女子だけでなく男子も狙われる。「小さい子どもならどっちでもいい」という犯人もいれば、「男子のほうが声をあげにくいから」とあえて男子を狙う犯人も。実は性犯罪は「2人きりの部屋」で「顔見知りの犯行」が多く、会社の上司と部下、学校の先生と生徒など被害者が「嫌!」と言えない関係で起こることも多い。

たとえ同じ歳でも相手と「対等な関係」でなくなると、相手をバカにし、モノのように扱うことで性犯罪がおこることだってある。だからこそ、子どもの性別にかかわらず親御さんには「うちの子に限ってそんなことには巻き込まれるはずがない」などと思わず注意して欲しいのです。

また、最近はインターネットやSNSを使って、実際に体に触れなくても成立する性犯罪も増えています。未成年に「裸の動画を送って」と言ってきたり、逆に見せてきたりする行為もアウトです。性的な目的で16歳未満の子どもに接近し、信頼関係を築いて面会を要求したり、性的な画像・動画の送信を要求したりする行為は「グルーミング罪」に問われます。

無理やりキスをされるのは一瞬の出来事でも、性犯罪の被害者は、その後長い間苦しみ続けることになるケースが多い。ふとした瞬間に記憶がよみがえり、心がズタズタになることも。性犯罪は“魂の犯罪”なのです。

声を上げにくい痴漢被害を防ぐために知っておくべきこと

痴漢

2009年には警察官を増員し、性犯罪などから守る体制を強化するため、全国の都道府県警察本部に「子供女性安全対策室」を設けました。都道府県によって「子どもと女性を守る捜査室」「JWAT」「子ども女性安全対策隊」など名称はさまざま。ぜひお住まいの警察本部のホームページ等をこまめにチェックし、必要ならば相談し、犯罪が起きる前に防いでもらいたい。

徳島県警を定年退職後、片道切符で上京してから5年が経ちます。いまだ東京の人の多さには驚かされます。満員電車もそのひとつ。駅には「痴漢は犯罪です!」というポスターが貼られ、電車通学する子どもを持つ親御さんにとっては、心配のネタ。

痴漢も「嫌!」と言えなさそうなターゲットを狙ってくる。体を触るだけではない。カバンを押しける、匂いをかぐ、最近ではAirDropでわいせつな画像を送りつけるなど「見えにくい痴漢」も増えています。

こうした行為は、各都道府県の迷惑防止条例違反、もしくは不同意わいせつ罪(刑法第176条)で処罰される。どちらも犯罪になるかは、手口の悪質性によって判断されるが、服の上から胸を触るケースなら不同意わいせつ罪、お尻を触るケースなら条例違反になることが多い。条例違反のほうが刑法より罰則は軽いが、被害者の心の傷に「軽い・重い」はありません。

満員電車で痴漢に遭ったとしても「やめてください!」と大声を出せない人が大半。恐怖や驚き、恥ずかしさなどから、体が動かなくなってしまうことがある。しかし、痴漢被害を未然に防げる対策もあるから是非覚えておいて欲しい。

  • 防犯ブザーや「痴漢は犯罪です」と書かれたバッチをカバンにつける
  • 痴漢対策アプリをスマホに入れて、すぐ開けるようにしておく
  • 混雑する車両を避け、人の目が届く場所に立つ
  • 不審な動きがあれば、犯人に視線を向ける

なかでも警視庁の犯罪アプリ「デジポリス」はとても良くできています。「痴漢撃退機能」には「痴漢です、助けてください」という画面で助けを求めることができ、タップすれば「やめてください!」と音声も鳴らせることも出来る。もちろん無料です。たとえ小さなアクションでも、周囲に異変を知らせるサインになります。

  • スマホを鳴らす
  • カバンを持ち替える
  • しゃがむ、物を落とす
  • 非常通報ボタンを押す

痴漢は被害者だけが自衛すれば、解決する問題じゃありません。痴漢は社会全体で撲滅すべき犯罪。大事なのは、まわりの大人たちの存在です。近くにいる人に異変があったら「大丈夫ですか?」とひと声かけるだけで、9割以上の痴漢がその場でやめたという調査もあります。(東京都「令和5年度 痴漢被害実態把握調査 報告書」より)

社会全体で犯罪を未然に防いでいく

犯罪を未然に防ぐために協力する人たちの手

私は42年間、数多くの事件現場に向き合ってきました。そこには実に多種多様な犯罪がありましたが、その中でも「子ども」や「女性」が被害となる事件は、加害者の行為に強い憤りを禁じ得ません。彼らの行為は断じて許されるものではなく、厳しい非難に値します。

そして何より深刻なのは、被害に遭われた方々が、以前の生活環境や心の平穏を簡単に取り戻せないという現実です。傷は長く残り、人生そのものを揺るがすこともあります。だからこそ社会全体が協力し、こうした被害を未然に防ぐ環境づくりを進めることが不可欠です。地域の目、家庭の意識、行政・教育機関の取り組み、すべてが連携して初めて、「子ども」や「女性」を守る強固な社会が形づくられます。

「罪を犯させない社会づくり」も、私たちに課された大切な使命と私は思っております。その根底には「人を憎まず、罪を憎む」という姿勢があります。人の尊厳を守りつつ、誤った行動だけを厳正に糾し、再び犯罪が起きない環境を整える。その積み重ねが大切です。これからの人生も私は、日本国民が安全で安心できる社会になるよう力を注いでいきたいと思います。

秋山博康犯罪コメンテーター

投稿者プロフィール

元徳島県警捜査一課警部。通称は「リーゼント刑事」
凶悪犯罪の最前線の所轄刑事課を中心に31年間刑事として捜査を担当。
「おい!小池」で有名な殺人指名手配小池事件に長らく携わり注目され、警察特番で「リーゼント刑事」との呼称で度々登場した。警察人生42年、2021年3月に定年退職し、現在は犯罪コメンテーターとしてメディア出演やYouTube配信、講演会活動など、精力的に活動中。

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